#1020 第三の扉の試練
俺たちが転移した先は草原だった。そこにある石に腰かけている老人がいた。
『久しぶりだな。トリスメギストス』
「その声はカリオストロか。久しぶりじゃのう。お主たちがこの変人を見つけたのか?」
「あ、見つけたのは俺です」
「うむ。よりにもよって、アテナとの契約者に見つかるとは儂への嫌がらせかのう? カリオストロ」
『それが私の計画なら今頃、飛んで喜んでいるぞ。生前ではあなたのそんな顔は見ることが出来なかったからね。頑張って、この技術を作った甲斐があったよ』
カリオストロの言葉にトリスメギストスは苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「ふん。まぁいいわい。第三の試練は儂との勝負に勝てたなら儂が持っておる財宝の中から好きな物を選ぶがいい。儂に勝てたならの話じゃがな」
それを聞いた俺たちは武器を構える。するとトリスメギストスは危険な気配を感じ取る。
「ちょっと待つんじゃ。そこのエルフの娘よ。矢筒に何を入れておる」
「さぁ? 何でしょう?」
「その顔、僕を懲らしめようとするときのアプロディーテーの顔にそっくり…では無くて、おほん。その矢は使うのを禁止に」
アプロディーテーの名前が出て来たと言う事はやはり正体はヘルメスなんだな。しかも前半部分が年寄りな声じゃ無くなっていた。それにしてもアプロディーテーとセチアが同じ顔していたのか。
『そんな試練のルールは他の試練には無かったはずだぞ。後から自分が都合がいいルールに逃げようとする癖は変わっておらんな。試練の鍵を託された私が許可しよう。使っていいぞ。寧ろ撃ち抜いてやれ』
「うおい!? 他人事だと思って何言っておるんじゃ!」
カリオストロとトリスメギストスの関係が少しわかった気がする。お互いに悪戯をし合っている友達のような気配を感じるんだよね。ここでトリスメギストスが溜息を吐くと雰囲気が変化する。
「まぁいいわい。確かにルールじゃからな。それでは準備はいいかね?」
「「はい」」
「では、始める! 錬金」
「サウザンドレイン!」
「何のためらいもなく、年寄りに本当に撃ちおったー!? ラピスマーキュリー!」
セチアの異星海蛇のミストルティンが放たれるとトリスメギストスの周囲に水銀が発生し、トリスメギストスを球状に囲むとそこにセチアの異星海蛇のミストルティンが降り注ぐと水銀の中にセチアの異星海蛇のミストルティンが次々消えていなくなる。
「何だ? あれは?」
『どうやら原子分解の能力がある水銀のようだな』
「ネタバレをするんじゃない! カリオストロ! 金属支配!」
固体の水銀が弾丸のように飛んできた。原子分解なら体は勿論、武器もダメだな。いや、原子で作れたものなら大丈夫なのかも知れないけど、伝説の鉱石が原子なのか知らないからここは確実な方法を選ぼう。
『『『『グラビティ』』』』
重力に潰されて、水銀の弾丸は地面に落ちる。
「そう来るか…しかしまだ甘いぞい! 液状化! 水流操作!」
地面に落ちた水銀の弾丸が錬金術によって、液体になると水流の効果で水銀がこちらに向けて流れている。
「津波!」
「壁錬金!」
それをイオンが津波で流した。それに対してトリスメギストスは鉄の壁で四方を防いで攻撃を守って来た。
「ロードカリバー!」
カイがロードカリバーを使うと壁錬金を消し飛ばすがその前に後ろの壁が解除されており、逃げられていた。
『武装錬金が来るぞ!』
「武装ーーぬ」
「や!」
恋火の太刀の攻撃を金属の杖でガードされる。その後、杖で恋火に反撃に出ようとするがここでイクスのエネルギーマシンガンが撃ち込まれる。更にセチアのサウザンドレインも降り注ぐ。
「年寄りはもっといとわるものじゃ! 壁錬金! 金属支配!」
「きゃ!?」
恋火の地面から壁がせり上がるとドーム状に変化し、イクスのエネルギーマシンガンとセチアの矢が防がれる。
「むー。やはり透過も付与しておけば良かったですね…」
「時空貫通に粒子分解がある矢を防がれるとは普通は思わないからな…」
「あいつが操っている金属が相当特殊って事か。カリオストロ、知っているか?」
『私が知る限りではそんなものを防げる金属は神が作った金属か賢者の石くらいだな』
賢者の石ってそこまでの万能素材だったのかと思うと少し意味合いは違うようだ。
『賢者の石は聖杯の石版と言えばわかるかね? どんな金属にもなれる石なのだよ。それこそ自分が理想の金属だって、作れる。分解無効、時空支配の金属とかね』
それはつまり錬金術師はこれから自分が理想としているスキルを持つ武器を自在に作れるようになることを意味してないか?伝説の武器を持っている俺が言うのもなんだけどチートだ!
「というか賢者の石の試練でも無いのに賢者の石を使っていいのかよ」
『まぁ、大人げないな』
「異星のヒュドラの毒の矢をバンバン撃って来る奴らに言われたくないわ!」
こちらはちゃんとルール内でやっているはずだ。するとイオンたちと戦いながらトリスメギストスは杖で地面を叩くと巨大な壁が作られ、更に武装錬金で次々大砲が作られると次々撃ち込まれる。
「一瞬で要塞を作れるのか。錬金術って凄いな」
『トリスメギストスと他の錬金術師を一緒にしない方がいい。あれでも錬金術の全てを知る男だからな』
「というかどうするんだ? これ。ガープの要塞みたいになっているぞ」
『言っておくが要塞のようにのこのこ中に入ると地獄を見るぞ。金属がある場所こそが錬金術師の独壇場だからな』
あれは罠でもある訳だな。しかしそうなるとこちらの取るべき手段は決まって来たな。潜入が無理ならぶっ壊すしかない。攻撃を仕掛けるわけだが、攻撃は反射され、イオンの津波で壁を乗り越えて水攻めしようとすると壁が伸びて超えさせない。
ここで俺は皆に作戦を説明するとカイからも案を受けて、作戦を決めると仕掛ける。
「行くぞ! セチア!」
「はい!」
「「マリッジバースト!」」
弓矢を装備し、軽装の緑の鎧を装備した長髪エルフが降臨する。
名前 タクト 究極の召喚師Lv14
生命力 279→582
魔力 574→1166
筋力 395→699
防御力 200→393
俊敏性 377→631
器用値 414→899
スキル
格闘Lv42 蹴技Lv42 杖Lv49→Lv50 片手剣Lv50 槍Lv40
刀Lv50 二刀流Lv32 魔法弓Lv50 星矢Lv15 軍略Lv22→Lv24
恩恵Lv5 念動力Lv34→Lv41 神気Lv17 千里眼Lv40 精霊眼Lv1
神瞳Lv19 狙撃Lv40 多連射Lv19 神障壁Lv4 天耳通Lv20
他心通Lv18 詠唱破棄Lv43 魔力支配Lv27→Lv30 魔力回復Lv4 魔力切断Lv41
魔法阻害Lv2→魔法破壊Lv23 空間歪曲Lv13→Lv15 空間索敵Lv13 空虚Lv7 第六感Lv34
天言Lv15 神感覚Lv39 召喚魔術Lv50 封印魔術Lv43→Lv45 ルーン魔術Lv42→Lv45
阻害無効Lv26 騎手Lv52 細工Lv10 木工Lv35 錬金Lv33
採取Lv45 採掘Lv40 伐採Lv42 調薬Lv26 刻印Lv22
宝石魔術Lv14 宝石細工Lv17 宝石解放Lv4 解体Lv65 鑑定Lv55
識別Lv61 疾魔法Lv21→Lv23 炎魔法Lv18→Lv20 地魔法Lv20→Lv22 海魔法Lv20→Lv23
暗黒魔法Lv22→Lv23 神聖魔法Lv30→Lv32 雷魔法Lv55→Lv58 爆魔法Lv58→Lv60 木魔法Lv40→Lv43
氷魔法Lv48→Lv51 時空魔法Lv66→Lv68 樹魔法Lv47 融合魔法Lv5 獣魔魔法Lv17
星座魔法Lv3 罠設置Lv7 遅延魔法Lv28 連続詠唱Lv50 同時詠唱Lv31
阻害無効Lv18 遊泳行動Lv35 森林操作Lv20→樹海操作Lv20 転瞬Lv28 心眼Lv29→Lv31
無我Lv26 叡智Lv30 料理Lv53→Lv58 釣りLv23 自然波動Lv11
天波動Lv6 精霊波動Lv1 大精霊召喚Lv19 精霊結界Lv16 精霊魔法Lv5
木分身Lv10 聖療Lv5 天撃Lv5→神罰Lv5 夢幻Lv3 光化Lv1
多重障壁Lv2 遮断結界Lv5 列石結界Lv10→神石結界Lv10 精霊門Lv2 シンクロLv37
エンゲージLv28 マリッジLv3 妖精の輪Lv3 使役Lv16 超連携Lv39→Lv41
絶対防御Lv2 エンシェントエルフの知識Lv37 巨人の加護Lv18 世界樹の加護Lv12 アテナの加護Lv19
そして地面に手を置く。
「『樹海操作!』」
全反射スキルは物理攻撃を反射することは出来ない弱点がある。樹海操作の効果でトリスメギストスの要塞はあっという間に森に覆われる。しかし木々が締め付けても要塞はびくともしない。
「ふははは! その程度で賢者の石の要塞は落とせぬ!」
「竜魔法! ドラゴンコールドフロント!」
イオンの冷気のドラゴンが襲い掛かる。
「天井から冷気を送り込む作戦か。じゃがそんなものでこの要塞は落とせんよ。壁錬金」
要塞の上が蓋される。すると要塞内に冷気が入り込む。
「な!? どこから冷気が!? く」
何処からと言われても大砲を設置したせいで思いっきり隙間が出来ていた。人間ならまず密封した要塞は作れない。普通に死ぬし、壁と一体化している大砲なんて作ったら、撃つたびに大砲の衝撃が壁にまで伝わることになるだろう。音もきっと地獄だろうな。残念ながらこれは俺の想像でしかないけどね。
結果的には人間の要塞構造に拘ってしまったのがトリスメギストスの失敗だ。因みに気付かれてもいいように樹海操作で大砲を抑えてある。要塞内に入り込ませることも可能だったけど、それでどうにか出来る敵じゃないから油断を誘う意味でもわざとしなかった。
ドラゴンコールドフロントで凍ったトリスメギストスはすぐに解除すると上空に魔力を感じて上を見る。
「エクスマキナの砲撃か! しかし全反射でーーっ!?」
「居合斬り!」
よそ見しているトリスメギストスに恋火が突然現れ、斬り裂くとトリスメギストスに追撃が発動する。
「ぐわぁああ!?」
「エネルギーバスターキャノン、エネルギー充填完了。目標補足。破壊します!」
「無駄だ…っ!?」
トリスメギストスの目に空間歪曲が映った。
「しま!? 空間支」
「爆炎之太刀!」
「がは!?」
恋輪で斬り裂くと斬り口が大爆発して、トリスメギストスは要塞の壁にぶつかる。
「仙郷移動!」
恋火が出現した時に使っていたのもこれである。そして恋火がいなくなったことで要塞内はトリスメギストスだけだ。空間歪曲を通って、エネルギーバスターキャノンが要塞内で炸裂で消し飛ばす。
「あ、危なかったわい…」
トリスメギストスは最初に使っていた水銀を球状にして、ガードしていた。それを解除するとカイが襲い掛かって来た。
「はぁああ!」
「ぬ! 金属棘!」
水銀が茨の棘がとなって、襲い掛かるとカイは後ろに下がって、回避するとインテリジェンスソードを後ろに隠す独特な構えをする。
「惜しかったの」
「光のルーン!」
俺がインテリジェンスソードに仕込んだ光のルーンが炸裂する。
「そんな構えで目くらましになると…が!?」
カイの影から飛び出した俺がトリスメギストスに体当たりする。
「シャドールーム…か!? ぎょわぁあああああ!?」
「矢は射るものだと決めつけちゃダメだろ? おっと」
俺が手に持っていた異星海蛇のミストルティンがトリスメギストスに突き刺さっていた。そして痛みで暴れるトリスメギストスに払い飛ばされる。トリスメギストスは暫くのたうち回ると動けなくなり、インフォが来る。
『第三の扉の試練をクリアしました』
異星海蛇のミストルティンの恐ろしい力を証明する戦いだったな。
「お疲れさん」
「カイもね」
二人で拳を合わせる。影に潜むのは俺の案だったけど、光のルーンで影を伸ばして異星海蛇のミストルティンを持ったまま突撃するのはカイの案だった。俺の体当たりなら受けてくれるじゃないかというカイの判断は正しかったな。
「あーあー。折角作った僕のホムンクルスを見事に壊してくれたねー」
俺たちが倒れているトリスメギストスの方を見ると傍らに左右の羽飾りがある緑の帽子にラフな緑の服を着た青年が立っていた。
「おっと。君達とは初めましてだね。僕の名前はヘルメス。オリュンポスの神だ。試練の突破者である君達にご褒美を上げるためにやって来た」
何か軽い神様だな。というかトリスメギストスがホムンクルスというびっくり発言をさらっとしたな。するとヘルメスは心を読んで来る。
「別に可笑しくはないだろう? 君達もパンドラを作ったんだからさ」
それを言われるとこちらは何も言えないな。というかやっぱりパンドラの存在って神様にバレているのね。
「おっと。さっさと用件を言えとか口が軽いんだからさっさと話して帰ってこいとかお叱りを受けたから本題に入らせて貰うよ。さぁ、この中から欲しい物を選ぶといい。召喚獣は対象外ね」
わざわざお叱り内容を話しているぐらいだから口は軽いだろうな。さて、一覧をチェックしよう。
エメラルド・タブレット
神剣ハルパー
ケーリュケイオン
錬金杖メルクリウス
タラリア
ペタソス
アポローンの竪琴
ハデスの隠れ兜
賢者の石
エリクサー
星のコンパス
星天の鍵
ヘルメスの神石
一つずつ調べて行こう。
エメラルド・タブレットはヘルメス・トリスメギストスによって記された碑文だ。どうやらここに賢者の石やエリクサーに関わる重要なことが全て記されているらしい。つまりニックさん達が欲しがっているのはこれだな。
神剣ハルパーはショーテルという剣の形をした武器だった。これでヘルメスはアルゴスを倒している。不死殺しの剣だ。
ケーリュケイオンはヘルメスの杖で伝令使の杖と呼ばれている物で紫の2匹の蛇と羽が特徴的な杖だ。どうやらこのゲームの杖で最強の杖がこれらしい。
「伝令使の杖が最強でいいのか?」
「神様が使っている杖で一番有名なのがケーリュケイオンだからな。魔法使いの最強の武器がケーリュケイオンというのは一種のお決まりみたいなもんなんだよ」
そんなもんか。因みにミライが欲しがっていたのがこの杖だ。ミライはもしかしたらアスクレピオスの杖が来るかも知れないとは言っていたけど、残念ながらケーリュケイオンだった。
錬金杖メルクリウスはトリスメギストスが使っていた杖だ。水銀で作られた杖らしく、錬金術師専用の武器らしい。
タラリアは空を飛ぶことができる翼の生えた黄金のサンダル。飛行やスピード強化だけでなく、回避能力も優れているようだ。脱出スキルは魅力的だけど、一つしか選べないならスルーだな。
ペタソスはヘルメスの帽子。飛行能力が無いタラリアだな。いらない。
さて、これで確認は終了。選ぶ前にこれだけは聞かないといけない。
「エメラルド・タブレットってここでしか手に入らない物ですか?」
「いいや。エメラルド・タブレットを手に入れる方法はいくつかあるよ。その一つは君がよくしっているんじゃないかな?」
ヘルメスの試練だな。更にもう一つのルートも俺には心当たりがある。ヘルメスの崇拝の中心地はアルカディアと言われている。そこにもエメラルド・タブレットが手に入るクエストがあると俺は予想する。
取り敢えずエメラルド・タブレットが他で手に入るならここで手に入れる必要は無い。ニックさん達にはそっちも頑張って貰おう。カイと頷き合う。
「ケーリュケイオンを下さい」
「神剣ハルパーを下さい」
『主よ! そこはエメラルド・タブレットと言うべきところだぞ!? 人類の叡智が知りたくないのか!?』
「そんなもん知りたくないし、タクトが叡智スキル持っているからそこまで重要じゃねーだろ?」
何も言い返せないカリオストロであった。こうして俺たちはそれぞれ武器を手に入れた。
ケーリュケイオン:レア度10 杖 品質S+
重さ:40 耐久値:3000 攻撃力:3000
効果:全属性アップ(究)、無詠唱、音伝達、未来予知、魔力超回復、魔力吸収、魔力支配、金属支配、時空支配、石化光線、流星群、彗星、蘇生、復活、阻害無効、支配無効、神気、神波動、神障壁、神託、神撃、惑星魔法、神威解放
神々との伝令を司る杖。杖の中でも最強の杖と言われており、ヘルメスの神託を授かることが出来る。神威解放を使用すると無限の魔力を得ることが出来るとされている。
恐らく二匹の蛇から無限の魔力にいったんだろうな。伝説の武器としてはかなり軽いイメージだ。その分攻撃力は抑えられているけど、本領を発揮するのは神威解放後となる。
取り敢えずこれでクエストが終わり、ニックさん達は疑問な様子だ。そしてカリオストロが暴露する。しかし俺はニュートンさんとの約束がある。すると当然ターゲットはカイだ。
つまらない諍いが起こる前にエメラルド・タブレットを手に入れる方法を伝える。
「ヘルメスの試練が確定でアルカディアにワンチャンですか…」
「私達からするとアルカディアに賭けたい気持ちです」
「頑張るしかないか…」
ここでカイが聞いて来る。
「タクトはいつアルカディアに行くつもりなんだ?」
「予定もないし、今日の夜?」
「「「「一緒に行かせてください!」」」」
「…みんなには攻略があるでしょうが」
頭が抱えたくなる俺であった。




