#1019 ミストルティンとユウェルの失敗
お昼を食べて約束の時間より少し早めにゲームにログインして、島に捧げられる物は捧げてから約束の錬金術師のクエストの続きに向かう。
そして案の定、第二の試練で大苦戦中だ。その間に皆から武器や防具の完成の知らせが届く。しかしクエストの途中で見ることが出来ない。そこで俺はユウェルにおつかいを頼むことにした。格納で運んで貰えば可能だ。
『準備出来たぞ。タク』
『よし。それじゃあ、みんなこっちに召喚するな』
ユウェルたちを召喚する。たちというのはどうしても自分が作った物を俺に直接手渡したいというお願いを聞き入れた結果だ。勿論ヘーパイストスたちは勿論無理で代わりにイオンがやってきている。
最初に間に合わなかったけど、ヘーパイストスたちが作ったハルペーの剣を見るとしよう。名前はそのまんまにした。
メテオハルペー:レア度10 片手剣 品質S
重さ:150 耐久値:2000 攻撃力:1300
効果:不死殺し、星獣殺し、神殺し、大物殺し、万物切断、星気、英気、英雄障壁、星雨、隕石、星波動、重力操作、荷重操作、星の加護
金剛石、アダマンタイト、メテオライトの三つの鉱石の合金で作られた剣。巨大な敵程、威力が上がる剣で隕石の力も宿っている。不死殺しもあるかなり強力な武器だが、重いのが難点。
これが二本で重さが300。イオンの筋力を越えている。しかもここに鎧の重さとかまで加わって来る。しかしイオンは貰う気満々だ。
「荷重操作を使えるので、問題ありません。タクトさんもそれを狙ってメテオライトを選んだんじゃないかな? とヘーパイストスが言ってましたよ」
まぁ、否定はしない。他の狙いとしてはイオンはどうしても一撃の重さに問題を抱えている。それを荷重操作と重力操作で補えればいいなと考え結果がこれだ。というわけでイオンは受け取ってご満悦だが、手足がプルプルしている。やはり重たいんだな。
「えげつない武器を作っているなー」
『何故私の剣はこんなに弱いのか思わずにはいられないな』
「素材を提供したのはカイだし、あの時よりもいい素材が手に入っているからだよ」
『なるほど。それなら我が主には新しいインテリジェンスソードをお願いするとするか』
あ、そう言うことが出来るんだな。カイの様子からすると知らなかったみたいだ。次にセチアの矢だ。するとユウェルは弓まで取り出す。一緒に作ったんだな。
ミストルボウ:レア度10 弓 品質S+
重さ:50 耐久値:1500 防御力:100
効果:神殺し、弓矢操作、飛距離アップ(究)、暗黒属性ダメージ付与(究)、光吸収、蘇生無効、王撃、王の加護
刻印効果:無限のルーン、魔力回復、光合成
ロイヤルオークの寄生木とミスリルの糸で作られた弓。光を吸収する暗黒の力が宿っており、更には神殺しの力まであることから光の神にとっては天敵の武器となっている。
ミストルティン:レア度10 矢 品質S+
重さ:40 耐久値:1500 攻撃力:800
効果:神殺し、魔力貫通、暗黒属性ダメージ付与(究)、寄生木、支配無効、加護破壊、魔法破壊、粒子分解
刻印効果:光速激突、超加速、時空貫通
ロイヤルオークの寄生木で作られた矢。いかなる支配を受けず真っ直ぐ飛ぶ矢で光の神バルドルを倒したことで知られている。
俺は思わずセチアを見る。
「褒めて貰ってもいいですよ?」
ただでさえ強い武器なのにセチアの刻印による魔改造でえげつないことになっている自覚があるんだな。
「ユウェル、例の物を出してください」
「分かったぞ!」
「今度は何を作ったんだ? う!?」
ミストルティンが禍々しい赤褐色の痣がある矢が姿を見せた。しかも紫色の煙まで出しているんだけど!?一体何を作ったんだか…鑑定してみる。
異星海蛇のミストルティン:レア度10 矢 品質S+
重さ:40 耐久値:1500 攻撃力:2200
効果:神殺し、魔神殺し、星獣殺し、人間殺し、魔力貫通、暗黒属性ダメージ付与(究)、神魔毒、腐蝕、弱化毒、永遠毒、寄生木、支配無効、回復無効、蘇生無効、復活無効、魔法破壊、粒子分解、加護破壊、
刻印効果:光速激突、超加速、時空貫通
ミストルティンにアストラルヒュドラの猛毒の血液を染み込ませた矢。どんな神でも解除することが出来ない神魔毒で苦しめ続け、神の力さえも失われる毒が宿っている。
なんとくなく予想していたけど、ここに来る前に渡した物を早速使ったんだな。
「セチア…」
「切り札は多いに越したことはないですよね? タクト様」
「それはそうだけど…まぁ、いいか」
「ご理解して頂き、ありがとうございます」
理解しているというか引いているんだよ。次にユウェルが自信作を見せて来た。
「これだぞ!」
それは鎖鎌の先が星球になっている鎖鎌だった。
モーニングスターデスサイズ:レア度10 鎌 品質S+
重さ:300 耐久値:2000 攻撃力:1500
効果:不死殺し、星獣殺し、神殺し、大物殺し、万物切断、星気、英気、英雄障壁、重力操作、荷重操作、伸縮、星の加護
金剛石とアダマンタイトの合金で作れた鎌に神珍鉄の鎖、メテオライトとタングステンの星球で作られた鎖鎌。性能は素晴らしいのだが、かなりいかつく使いこなすにはかなりの難易度が要求される。
説明の通りで大鎌に普通のモーニングスターを取り付けているからとんでもないことになっている。取り敢えずこれはユウェルの先生に報告だな。
『ヘーパイストス。ユウェルの鎖鎌の件で話があるんだが?』
『え、えーっと…』
その様子じゃ、やっぱり問題点に気が付いているな。事情を聞いた。
『ユウェルさんがハルペーの作り方を聞きに来たんです』
それは素晴らしい事だな。自分で考えてハルペーに目を付けて、ヘーパイストスに聞きに行く行為は褒めてあげたい。問題はここからだ。
『僕はどちらか小さくした方がいいとは言ったんですけど、大鎌とモーニングスターの組み合わせは最強だと聞いてくれなくてですね…ああなりました』
師匠としてはもっと強く止めて欲しかったところだけど、きっと相当楽しそうに鍛冶をしていたんだろうな。こうなると問題点に気付かせてあげるのは俺の仕事だ。
「どうだ! タク! 凄いだろう!」
「そうだな。折角新しい武器を作ったんだし、試して見るか」
「本当か! やったぞ!」
「では、私も」
「セチアはダメ。それは試しに使うような武器じゃない」
セチアは頬を膨らすがヒュドラの毒を受けるのは俺だ。いくら毒無効を称号で獲得したと言っても、そんな目には誰でも会いたくはない。そしてユウェルは使いにくさを身を持って味わう。
「やぁ! この! たぁ! いた!? これ、使いにくいぞ! タク!」
「そうだろうな」
モーニングスターを投げた後に大鎌を振るうならまだ使えるが片手にモーニングスターの鎖を持ちながら大鎌で戦闘するのはかなりの無茶がある。その証拠に大鎌で勢いよく襲い掛かって来たユウェルの後ろからモーニングスターがユウェルに当たるというアクシデントが発生した。
「うぅ…何がダメだったんだ? タク」
「武器のバランスかな? サウィンデスサイズの場合はこんなにも巨大じゃなかったでしょ?」
「うん…あれはあの大きさが使いやすいからあの大きさにしていたんだな…」
「そういう事。う」
ユウェルから泣きそうになっている気配を感じる。更にはみんなからも責められている感じがする。
「これ、どうすればいいんだ? タク」
「改良すればいいと思うよ。星球の大きさを小さくするだけだからね。後、星球に神珍鉄も合わせるとユウェルがやりたいことができるかも知れないよ」
「どういうことだ? タク?」
「大きなモーニングスターを相手にぶつけたいんでしょ? 小さな星球に神珍鉄を混ぜればもしかしたら巨大化スキルを得ることが出来るかも知れない。神珍鉄は長さだけじゃなくて太さも変化させているからな」
「そ、それだぞ! タク! それなら鎖鎌の邪魔にならないし、重さも軽く出来て、モーニングスターとして使える! やっぱりタクは天才だぞ!」
それを見ていたニックさんたちが言う。
「確かに神珍鉄にはそういう力がありましたね」
「孫悟空は耳の中に入れていたって話だもんな」
「というかこれって、モーニングスターや鎖鎌の概念をちょっと変えないか?」
「小さい星球が飛んできたと思ったら、巨大化するんだもんな。俺なら虫のように潰される自信があるぞ」
掲示板に書き込んでいいか聞かれるが流石にまだ実現可能か分からないからそれが可能と証明されてから書き込むならいいということにした。そしてユウェルは急いで戻っていった。
その後、クエストは一回失敗して、二回目でやっと成功する。
「俺たちが失敗したら、どうなる?」
「「「「…」」」」
「出来れば一度で成功して頂けるとありがたいです。たぶんまた曜日を改めてのクエストとなりますから」
アイテムを使いまくっての勝利だったみたいだから、当然そうなる。
「責任重大だな」
しかしやるからには勝たせて貰う。俺はイオン、セチア、恋火、イクスを選ぶ。今回はここにカイが加わる形だ。そして鍵を差し込むと扉が開いて、中に入った俺たちは転移する。




