#1018 うみへび座の試練五階
俺たちが中に入るとハイドラの声が聞こえて来た。
『まさかここまで辿り着けるとは思ってなかったわ』
「最後の試練はあなたですか?」
『そうとも言えるけど、そうじゃないとも言えるわね』
敵が魔方陣と共に現れる。
レッサーハイドラ?
? ? ?
首が九つあるヒュドラだ。ハイドラが説明する。
『その子は私の本体から分離させた子よ。元は私だから強さも当然受け継いでいるわ。覚悟はいいかしら?』
首が少なくなっただけのハイドラってことだね。俺たちは武器を構えて、リアンはサフィに騎乗する。俺が選んだ武器は当然神剣グラムだ。勝利の加護がある神剣グラムには不死身を無効化する効果もある。不死身の敵にも勝たないといけないからね。
俺たちも武器を見たのだろうハイドラは嬉しそうに言う。
『本気で私の試練を挑みに来たのね。いいわ! なら全力で殺し合いましょう!』
「お前には昔やられた借りがある」
「はい! あの時とは全然違う私たちを見せて上げます!」
「全力で勝たせて貰います! 行きますよ! サフィさん!」
俺たちの戦いが始まる。
「「「エンゲージ」」」
「「「「シャー!」」」」
俺たちがエンゲージバーストを使用するよりも早くに無数の光線が飛んできた。すかさずリアンとサフィ、ルーナが守りに入る。
「水鏡!」
「ぼえー!」
「精霊結界!」
水鏡に入った攻撃はレッサーハイドラに返され、変光で曲がった光線はサフィの白霧とルーナの精霊結界で阻もうとするが命中するとすぐに白霧は突破され、ルーナの精霊結界にひびが入る。
「「「バースト!」」」
俺たちはその間にエンゲージバーストが成功する。そして精霊結界がここで弾かれるが俺たちが全部防ぐ。降臨した青い天使の翼を持つ竜騎士だ。手には神盾イージスと神剣グラム。背にはブリューナク、腰には近衛、周囲には俺たちの武器が展開されている。パラス・アテナの槍は今回、リアンに貸し出している。何故なら不死殺しの効果があるからだ。
「行くぞ!」
俺は一瞬で間合いを詰めると神剣グラムを振るう。
「爆風波!」
「シャ!? シャー!」
爆風波を受けた首は神障壁でガードされるが反動でバランスを崩すとゴッドブレスを使って来る。それを神盾イージスで防ぐと左右から首が向かってくる。俺は迷わず前に出るとブレスを撃って来た首にゴッドブレスを跳ね返し、更に大きく一回転し、足を構える。
「踵落とし!」
神障壁をぶち抜き、ヴィーザルサンダルの踵落としが炸裂した首は地面に落下する。俺は地面に勢いよく着地する。
『大地支配!』
地面から隆起した岩がレッサーハイドラの首全体を貫く。そして俺は神剣グラムを構える。
「バスターカリバー!」
ボロボロの首は真っ二つに斬り裂かれた。神の武器のフル装備の強さは伊達じゃない。ここで危険を感じて上を見ると他の首が口から重力球を作り上げていた。
「うそ…」
ディアンは一つしか出現させることが出来なかった。それに対してレッサーハイドラは重力球を首ごとに作り上げられて、更に作り出す速度が段違いに早い。そして撃ち込まれる。
俺は急いで回避する。離れて回避しないと重力球は近くにいるだけで重力球の重力に引きずり込まれることになる。しかしフィールドが狭すぎて、重力球の重力に捕まる。重力には重力だろう。
『『『『グラビティ』』』』
俺は自分に重力をかけて、重力球の重力に引きずり込まれるのを阻止する。それを見たレッサーハイドラは口を上げるとグラビティの魔方陣にひびが入る。魔法破壊か!
『魔力支配! 魔法の防衛は任せて下さい!』
『この! 閃電!』
展開された剣たちが閃電の効果で殺到するが神障壁で弾かれる。すると今度は弾かれた武器を狙ってくる。それを感じ取ったイオンは武器を引かせる。そしてリアンは超連携で突っ込んで来るが神障壁に弾かれ、反動でお互いに弾かれると追撃に来た他の首にルーナが迎え撃つ。
ここでも弾かれ、三人に尻尾が襲い掛かる。それを必死に回避する。ここで重力球から俺たちは解放された。やはり神盾イージスを恐れて、大技は使って来ない。
そう思っていると黒雷を使っていた。黒雷は防御出来ないから神盾イージス対策としては有効だ。しかし俺も黒雷なら斬れる。俺が斬っていると今度は左右に氷山が作られ、押しつぶそうとしてくる。
俺は後ろに下がり、回避すると氷山を蹴って、破壊する。すると目の前に彗星が落ちて来ていた。スキルの発動速度が速すぎるぞ。俺が神剣グラムを構えようとすると金縛で動きが封じられる。
「うざったい! やば」
星間雲に包まれて、雷を受けると彗星が俺たちにぶつかる。
『イオン!』
『はい! 竜技! ドラゴンノヴァ!』
彗星を吹き飛ばす。そこで見るとリアンたちも必死に攻撃しているが三人の攻撃は三つの首に抑え込まれている。俺たちに向いているのは五つの首だ。とにかく首を減らさないと活路が無い。
俺は飛んで来る氷柱を捌きながら間合いを詰める。すると今度はあっさり間合いを詰められる。俺は危険を感じて後ろに下がるとやはり斥力場を使われた。俺は神剣グラムを構える。
「時空切断! 多乱刃!」
時空を斬り裂くほどの無数の斬撃がレッサーハイドラを斬り刻む。流石の斥力場も時空を斬り裂く斬撃は効果の範囲外だったようだ。
『ドラゴンダイブ!』
『エンジェルダイブ!』
「超連携!」
俺たちの突撃ライダーキックが決まったと思った瞬間、姿が消えると俺たちに巻き付こうとして現れる。
『光化!』
しかし俺たちも姿が消えるとレッサーハイドラの首に蹴りが入る。そしてレッサーハイドラが地面に落下するよりも早く空間跳躍で移動する。
「白熱刃!」
『閃電!』
『時空切断!』
勢いよく落下してくるレッサーハイドラの首を横にスライスした。そして急いでターンし、再び間合いを詰める。すると重力と水圧、重圧、斥力を一度に受ける。するとここで元のサイズになったサフィが胴体に突撃する。
そしてそのまま壁に抑え込む。
「聖剣解放!」
「巨大化! やぁあああああ!」
ルーナの横からの聖剣解放と一撃でレッサーハイドラの首が弾かれ、別の首とぶつかったところにリアンの巨大化したパラス・アテナの槍がぶち抜いた。いい作戦を考えたな。ここでレッサーハイドラが逆鱗を発動させる。
最初に狙われたのはサフィで噛みつかれると引き離れされ、逆に壁にぶつけられるとレッサーハイドラが光輝く、あれはドラゴンノヴァか!?
「サフィ!」
『ダメです! タクトさん! 近付けば巻き込まれます!』
『次の事を考えて下さい。主』
俺は二人に言われて、神剣解放を使う。するとここでサフィが予想外の行動に出た。
「ぼえー!」
サフィの鼻孔から大噴火が使われ、至近距離にいるレッサーハイドラに直撃する。最後の最後まで攻撃するその姿勢を称賛せずにはいられない。そしてドラゴンノヴァがサフィに直撃する。
「ルーナ!」
「はい! パパ!」
俺たちは剣を合わせて、超連携が発動する。その攻撃はレッサーハイドラのゴッドブレスとドラゴンブレスにぶつかり合う。その隙にリアンはレッサーハイドラの頭上から仕掛ける。
「はぁあああああ! うぐ!?」
攻撃が入ろうとした瞬間に斥力場に捕まる。
「水の中で人魚が引く訳にはいかないんですよ! はぁあああ!」
気合いを入れるリアンだが、首の一つがリアンに向く。
「ぼ…ぼえー!」
ボロボロ状態のサフィを見逃していたレッサーハイドラの胴体にサフィのドラゴンブレスが入る。この瞬間に斥力場の影響を受けていたサフィは召喚石に戻るがその残した功績が大きなものとなる。
斥力場が解除され、リアンを狙っていた首をリアンはパラス・アテナの槍で貫く。更に俺たちがぶつかり合っていた首を狙おうとするがここでリアンの尾にレッサーハイドラの尻尾が巻き付く。
「しま!? きゃあああ!? かは!?」
リアンは壁に叩きつけられると更に他の尻尾が殺到する。
「神障壁! くぅうう!?」
「リアン!? く…」
『私が助けます! 閃電!』
イオンが周囲の武器を操って攻撃するが全て弾かれる。するとここでリアンの神障壁が砕けるとリアンを貫こうと尻尾が迫る。
「はぁあああああ! かは!?」
リアンがパラス・アテナの槍を投げるが尻尾からは外れて、レッサーハイドラの尾がリアンの腹に突き刺さる。するとパラス・アテナの槍が俺たちにドラゴンブレスを使っている首を貫いた。
その結果、一気に俺たちの超連携の攻撃が優勢となり、首を消し飛ばす。これで首の数は残り二つだ。するとここでリアンは食べられてしまう。
「シャー!」
レッサーハイドラが叫ぶとフィールドにとんでもない海流が発生する。
『舐めないで下さい! 海流操作!』
「シャー!」
今度は渦潮に捕まる。それに対してイオンは逆回転の渦潮で渦城を相殺する。それを合図にお互いにスキルの撃ち合いが発生する。俺たちが間合いを詰めようとすると尻尾が行く手を阻んで来た。まるで首だよ。あの尻尾。
「神波動!」
「シャー!」
神波動を放つと全反射で返して来た。ならこちらも返そう。
『倍反射!』
「シャー!」
倍で返した神波動をレッサーハイドラに食われる。厄介なスキルを持っているな。しかしここで俺は神盾イージスを手放し、腰の近衛を抜く。
「チェンジリング!」
俺たちとルーナの位置が入れ替わると俺たちはレッサーハイドラの胴体に現れる。ルーナは精霊界を通って、レッサーハイドラに接近していた。ここはもう俺たちの間合いだ。
危険を感じたレッサーハイドラは慌てて尻尾が襲い掛かって来る。
『多乱刃!』
「時空切断!」
尻尾がバラバラになる。
「「シャー!」」
二つの首から神魔毒ブレスが放たれると俺たちはそれを回避する。
『ドラゴンダイブ!』
『エンジェルダイブ!』
しかし距離を取った俺たちは勢いよく胴体にライダーキックをお見舞いし、地面に叩きつけると残りの首を切断する。
「精霊魔法! ライトフォース!」
『水分身! 流水乱舞!』
イオンの水分身で増えた俺たちの一方は攻撃に向かい、もう一方は魔法の準備をする。
『天使魔法! セイント・スタウロス!』
『ウラノス』
上に描かれた惑星魔法の魔方陣から大空のような球体が現れるとレッサーハイドラへ落下し、レッサーハイドラを覆う大空色の光の柱が発生する。その中で絶叫しているがまだ死んでいない。
「大した生命力だが、これで終わりだ!」
『『「グランドサザンクロス!」』』
最後は胴体を斬り刻んでからのグランドサザンクロスで胴体を四つに斬り裂いたところで決着が付いたことを知らせるインフォが来た。
『おめでとうございます。うみへび座の試練をクリアしました』
『称号『瀑布の突破者』が称号『うみへび座の攻略者』になりました』
称号『うみへび座の攻略者』
効果:オリュンポス山の試練に挑戦できる、毒無効
うみへび座の試練をクリアした者に贈られる称号。
ここで俺たちのエンゲージバーストが解除されて、全員が倒れ込む。
「疲れたー」
「「「疲れましたー」」」
神装備のフルでこの苦戦…本当にやめて欲しい。息を整えてから解体する。
グラビティサイト:レア度10 素材 品質S+
超重力を内包した宇宙鉱石。超重力環境の星にある鉱石で宇宙に馴れている物でも手に入れる為には命を捨てる覚悟が必要とされている。重力を持っている鉱石としては最強の鉱石。
これとコスモクリスタルと星核が九つ手に入った。恐らく星核がわざわざ九つあるって事はこれが確定枠っぽい。ここでハイドラが姿を見せた。
「私の試練はこれで終わりよ。まさか本当に制覇されるとは思ってなかったわ」
「期待を越えられて良かったですよ」
「ふふ。言うわね。でも、試練がこれで終わりとも思ってないわよね?」
インフォが来る。
『特殊イベント『異星神の試練』が発生しました』
特殊イベント『異星神の試練』:難易度SSSSS
報酬:ダゴンもしくはハイドラとの契約
ダゴンとハイドラに勝利せよ。
やっぱり神様に挑むクエストが来るよねー。しかも二人同時に相手にするのかな?きっつ。
「今すぐ挑んでくれてもいいわよ?」
「武器も仲間もボロボロなので検討だけさせて貰います」
「あら? 残念」
こちらの状況が分かっているから全然残念そうに聞こえないんだよね。こうして俺たちは初めて星座の試練をクリアして、家に帰った。
そして早速やられた皆を召喚する。
「タクト~! 食べられちゃったよ~」
「よしよし。イクスは大丈夫だったか?」
「大丈夫ではありませんがマスターの勝利の為にはあれが最善でした」
「うん。ありがとうな。リアンもお疲れ様」
「はい。えへへ」
みんなを労っているとここでリビナが爆弾を投下する。
「リリーが子供になっているからタクトとの結婚はどうなるんだろうね?」
俺が子供のリリーと結婚していることになるだろう。これってかなり倫理的に問題があるんじゃないかな?運営さん。するとリリーが言う。
「どんな姿になってもリリーはタクトの妻だよ! そうだよね? タクト?」
「あ、あぁ…そうだな」
リリーの突然の言葉に面食らってしまった。そしてみんなも呆けてしまっている。
「リリーお姉様は何というか…時々凄いですよね」
「あたしには難易度が高すぎる言葉です…」
「自分が思っている事を考えもせずに言っちゃいますからね。リリーの場合は…しかも説明しても理解出来ないことは分かってます」
「どうしたの? みんな?」
「「「「何でもない。ご馳走でした~」」」」
俺までイチャイチャしたかのように扱われてしまった。
「みんな、いなくなっちゃったし、一緒に寝よ。タクト」
「「「「それはダメです!」」」」
激闘の試練をクリアしても俺たちの生活は変わることが無く、俺は疲れてログアウトした。




