#102 クラン『リープリング』誕生
翌朝、朝食を食べてからゲームにログインする。最初に俺は獣魔ギルドに向かうことにした。
理由は昨日の夜にやり忘れたダーレーの装備を揃え、装備させるためだ。リキュールの時にお世話になった店員に装備を着けるのを手伝ってもらう。
うん。かっこいいな。俺が満足してギルドを後にしようとしているとネフィさんに声をかけられる。
「お店完成おめでとうございます」
「情報早過ぎでしょう…とりあえずありがとうございます」
いつもの如く、リリーたちを捕まえていたアウラさんの目が光る。リリーたちの目が死んでいるようになっているのは気のせいか?
「タクト君、お店作ったの!? すぐに行きましょう!」
「まだ内装が出来ただけです。すぐにお店なんて出せませんよ」
「うぅ…残念」
「そうなりますね。それにお店として出店するならお店の名前やクランを立ち上げなければいけませんからね」
おや?何それ?初耳なんですけど。
「お店の名前はわかりますがクランというのは?」
俺が知らない言葉が出てきたので聞いてみるとアウラさんが教えてくれる。
「タクト君は知らないか…そういえば説明したことなかったわね。クランは1つの集まりのことよ。組織名と言えばわかりやすいかしら? 色々なクランが集まったのがギルドなのよ」
詳しく聞くとこのクランはパーティーの名前のようなものらしい。現実で言うところのチーム名だな。
俺のようなソロでも名前を付けることができて、1クラン最大30人。これはレギオンの上限だな。
10クランが連携するとギルドになるらしい。因みにこれはプレイヤーの数で召喚獣は対象外。
「つまり自分たちの集まりに名前をつけないといけないってことですか?」
「そういうこと。お店を出すならクランを結成しないといけないわ。というか結成しないと運営なんてできないわ。全部一人でお店の切り盛りするなんて出来ないからね」
確かにそうだろうな。というか人を雇うこととか出来るんだな。あ、俺もヘーパイストスを雇っているか。
アウラさんの話では人材派遣会社のようなギルドもあるのだと言う。お金があるなら奴隷も手だとか…いきなり雲行きが怪しくなってきたので元の話に戻そう。
「他にメリットとかデメリットってありますか?」
「メリットはギルドでクランクエストを受けることが出来るわ。デメリットはルールをしっかり作らないともめ事が発生することがあることくらいかしら?アイテムの分配やお金のことでよく諍いが起きてるわ」
あぁ、それは嫌だな。でも俺、ソロだからその点は関係ないな。
「この場でクランの名前を決めるなら私たちが承認してあげますよ。各ギルドの登録もしておきますが、どうしますか?」
ネフィさん、なんという無茶ぶり。リリーたちに助けを求めるが俺にお任せの回答。予想通りすぎた。
俺たちの組織名か…俺は目を閉じ、考える。自分の召喚獣たちのことを思い出す。
リリー、イオン、セチア、恋火、グレイ、虎徹、コノハ、チェス、ゲイル、白夜、ひより、優牙、黒鉄、リキュール、サビク、ロコモコ、アラネア、エアリー、ダーレー
どの召喚獣も俺にとってとても大切な存在だ。そう思ったとき、俺の中で閃いた。
「リープリング…なんてどうかな?」
リープリングはドイツ語で大切な人という意味。これは一つの決意でもある。これからもみんなを大切にして、これから増える仲間も大切にするいう決意だ。
「おぉ~」
「リープリング…素敵な響きですね」
「えぇ。タクト様の優しさが感じられる素晴らしい名前だと思います」
「あたしも素敵だと思います」
リリーたちが賛同する。
「どうやら決まりみたいですね」
「はい!」
今、ここにクラン『リープリング』が誕生したのだった。
だがまだこれで終わりではないようだ。
「姉さん、申請にはエンブレムも必要ですよ」
「あ、そうだったわね。エンブレムはその組織の旗印と言えばいいかしら? 面倒だろうけど、作ってくれないかしら?」
「えぇー…わかりました」
ここに来て、旗作成か…サッカーチームを結成する気分になってきたな。
部屋を借りて考える。さて、どうしようかな。エンブレムにも色々種類がある。普通に四角形の旗のものから剣や盾の武器を使うものなどがある。
どれがいいかリリーたちに聞くと全会一致で盾がいいという結論に。理由はそれぞれ思うところがあるだろうが理由を聞くのは野暮だ。
俺もクラン名に決意を込めた。だからリリーたちはエンブレムに決意を込めたいのだろう。いつもなら俺に任せるところを意見を言うぐらいだからな。
さて、盾のエンブレムをデザインに考えていく。とはいえ結構簡単に決まっていく。まずはリリーとイオンを示す二頭の龍を盾のエンブレムの中に左右に描く。それぞれ色は黄色と青。リリーとイオンのメインカラーだ。
そして次は盾の後ろにセチアと恋火を表す杖と刀が交差して収まるように描く。
それを全員でみるといい感じという手応えがある。後はレギオンの上限に俺を引いた29にヘーパイストスを加えた30個の星を盾の周りに均等に描く。これで完成だ。
まぁ、このクラン名やエンブレムはいつでもギルドで変更できるらしいので、今日のところはこれで十分だろう。
全員でいい出来だと判断して、ネフィさんとアウラさんに見せてみる。
「見事にタクトさんたちを表してますね。とてもいいエンブレムだと思います」
「この盾はタクト君かな?」
アウラさんが俺が聞かなかったことを平気でリリーたちに聞く。
「「「「秘密です」」」」
4人は声を揃えて秘密にする。だがアウラさんは諦めない。
「えぇ~。いいじゃない。教えてくれないとまた捕まえちゃうぞ~」
アウラさん、完全に悪役になってますよ。それを聞いたリリーたちはすかさず俺に抱きついてくる。こらこら。
「あらあら。そんな盾に守られていたら、手出し出来ないわね~」
「ふふ。そうですね。姉さん」
くそ!なんだこの羞恥プレイは!?アウラさん、これを見たいがためだけにあんなこと言っただろ!
クランについて補足します。ヘーパイストスのようなNPCは1人とカウントします。よって現状タクトのクランはタクトとヘーパイストスの2名のクランということになります。
クランのこともそうですが状態異常など色々新しい要素が出てくるので、折を見て説明する回を作りたいと思います。