#990 ヘカテー戦
鉄心さんたちが転移するとそこは塔の屋上で空には満天の星空が広がっていた。そしてその夜空に魔方陣が描かれ、このイベントのラスボスである女神ヘカテーが現れた。
姿は子供で紫色のショートヘアーだ。手には杖を持っており、服装は紫色のローブに星空のマントにとんがり帽子を装備している。
「昨日来た人たちと別の人が来たんだ…ふわ~…眠たいからさっさと死んで。暗黒魔法ダークマター」
昨日はこれで即死した訳だが、今回はトネリコのお守りの効果で即死は免れる。そして与一さんが反撃で銃撃を放ち、鉄心さんが飛び込む。ヘカテーは銃撃を回避しながらいう。
「…びっくり」
「居合斬り!」
鉄心さんの居合斬りをヘカテーは杖で止めた。
「…これはそうでもない」
「何!? くぅぅ! な!? がぁ!?」
鉄心さんがあっさり力負けして、ぶっ飛ばされると杖の先端に付いている星空のような宝珠を鉄心さんに飛ばすとこれにガードした鉄心さんは爆発に巻き込まれた。
「おいおい! 爆発したぞ!」
「爆心の効果があるようだな」
「…正解。流星群」
ヘカテーは流星群を降らして来る。これに対して満月さんたちが守りに入るとヘカテーはまた星空のような宝珠を飛ばして来た。これに満月さんは危機感を持つ。明らかに自分たちの守りを崩しに来た攻撃だったからだ。
「与一!」
「任せろ!! 半分はヘカテーを狙ってくれ!」
しかしヘカテーと星空のような宝珠は与一さんたちの射撃を流星群を盾にするように防ぐ。
「くそ! 当たらない!」
「不規則に動きすぎだろ! この!」
「隠れるならぶっ壊してやる! バスターカリバー!」
アーレイの攻撃がヘカテーに決まる。
「どうだ! 見たか!」
「…今のは痛かった。神技ディメンションリプレイス!」
全員の位置が一瞬で変化する。
「へ?」
「空中!?」
「何が起き…が!?」
一気に空にバラバラにされたみんなの背後から流星群が直撃する。ディメンションリプレイスは空間と空間を入れ替える技だった。これによってヘカテーは全員をバラバラにしつつ、流星群の前に転移させたのだ。満月さんたちも盾を構えていない突然の背後からの攻撃には対応出来なかった。
「ったー。何が起き」
「…刑罰」
「あがががが!?」
アーレイが狙われた。更にヘカテーの攻撃は続く。
「…神に逆らう罪深い者達に咎の痛みを。神魔法! トレイタ・ペイン!」
「「「「がぁあああ!?」」」」
「「「「きゃあああ!?」」」」
トレイタ・ペインはこの場にいる全員が受けたダメージと与えたダメージを等分し、返す魔法。しかしダメージを受けながら鉄心さんがヘカテーに襲い掛かる。
「はぁああ!」
「…腕はいい。でも足りない」
「が!?」
鉄心さんの連続攻撃をヘカテーはフットワークだけで躱し、杖を腹に貰った鉄心さんが吹っ飛ばされる。するとワイフさんがここで全員を全回復させる。全員が起き上げると絶句する。空から巨大な隕石が落ちて来ていた。
「…彗星」
「嘘だろ…」
「くそ! 破壊するぞ!」
「…そう。頑張って。引力操作」
全員が彗星に引き寄せられ、ぶつかるとそのまま身動きが取れず、彗星に潰される。
「…つ、強すぎだろ…」
「一体どうやって勝てば…」
「…終わり。神魔法! トレイタ・ペイン!」
これまでの全てのダメージが全プレイヤーに襲い掛かって、全員が塔の入り口に現れた。ヘカテーは冥府の女神であるためか起死回生や蘇生で復活することが出来ないらしい。
「どうでした?」
「「「「無理ゲー」」」」
「強すぎだよ。あの女神様…槍を投げる隙なんて無かった」
「というか子供の姿なのに容赦なさすぎだろ…」
寧ろ子供故に容赦がないとも言える。俺はヘカテーとの戦闘の話を聞く。
「うーん…初撃がポイントになりそうかな?」
「どういうことだ?」
「話を聞いた感じだとアーレイからダメージを受けてからヘカテーにスイッチが入った気がする。バイデントのレプリカを当てるならそこだと思う」
「確かに容赦が無くなったのはそのタイミングだった気がするな」
後は厄介な転移とダメージを返して来る魔法だ。転移は初見だったからみんな対応出来なかっただけで分かればみんななら対応出来るだろう。問題はダメージを返して来る魔法だ。
「魔法破壊とかでは防げなかったんだよね?」
「…はい。びくともしませんでした」
「だとすると使わせないようにするかダメージを何とかするしかないな。誰か身代わり人形カイン君を持って来てないか?」
あれならダメージを受けてくれるはずだから行けるはずだ。するとルインさんが大量に持っていた。
「ダメージを代わりに受けてくれるアイテムって現在の所これだけだったから買い込んであったのよ」
「流石ルイン姉! 商売の女!」
その後、一回しか使えないバイデントのレプリカをどうやって当てるか協議し、勝負は夕飯後の夜に設定した。ここでバイデントのレプリカと切り札を全投入する構えだ。もしこれで勝てなかった場合は階層攻略の編成を考え直して、ヘカテー戦は俺が挑むことになる。皆には頑張って貰いたい。
夕飯を食べ終えて、塔を上がっていく。全員が何度も攻略しているメンバーで挑んでいるから順調に進んでいき、俺たちもクリアした。そして三度目のヘカテー戦。
「ここで決めるぞ!」
「「「「おぉ!」」」」
全員が本気モードのリベンジ戦に挑むのだった。




