#988 九階の敵とラスボス
いよいよイベント最終日だ。今日中に攻略出来るところまで攻略しないと報酬が貰えなくなる。しかし俺たちはラスボスを除いて攻略済みだ。余裕だろう。
そう思って暢気にコーヒーを飲んでからゲームにログインすると呪いを受けている。いつの間にか慣れて来たな。ここでやっと回復したコノハを呼ぶ。そしてカボチャ料理を食べさせていると突然コノハは何かに気付いて俺の頭の上で翼を羽ばたかせた。一向にやめる気配がない。
「ホー!」
「コノハがご乱心だ!」
「皆のレベルとスキルが上がっていることに気が付いたんじゃないでしょうか?」
確かにコノハだけこのイベントのスキル上げに参加出来ていない。いくら理由があっても怒るのは当然だな。
「わかったわかった。今日は魔力の譲渡も含めて、コノハのスキル上げに付き合うから許してくれ」
「ホー…」
それだけー?っと言っている気がする。
「帰ってからのスキル上げも付き合うよ」
「ホー!」
そこでようやく解放された。召喚獣のお世話をするのは大変だ。
カボチャ集めをする前にサバ缶さんから昨日の報告を受ける。まず俺が担当する九階の情報だ。
「フィールドは灯りを付けることが出来ない暗闇フィールド。敵はアレークトー、ティーシポネ、メガイラが出てくるそうです。雑魚はいません」
「ラスボスがヘカテーなら出てきますよねー」
ヘカテーの眷属として知られている女神たちだ。この三柱はエリーニュスという復讐の女神たちに含めている。それぞれアレークトーは止まない者、ティーシポネは殺戮の復讐者、メガイラは嫉妬する者と呼ばれている。
この女神たちは全員共通の能力として狂戦士化、逆鱗状態でデメリットが発生しない力があるらしい。つまり怒り狂った状態で回避もするし、ガードをしてくるということだ。更に攻撃を受ける度に全ステータスが上がるらしい。しかもこの効果は一柱の女神を攻撃しただけで他のニ柱にも発生することが確認された。
この全ステータス上昇は攻撃を受けるとリセットされるらしいのだが代わりに生命力が全回復してしまうらしい。
「ひたすら復讐心を貯め込んで復讐を遂げたら、すっきりすると言いたいんですかね?」
「まぁ、そう解釈してしまいますよね。ただその後も彼女たちは戦い続けるようですから復讐を遂げても復讐心が消えることは無いことを示唆しているように思えます」
なるほど。復讐の女神たちは大変だな。ずっと復讐に囚われ続けるという事だから、なんとも悲しい女神たちだ。更に追加情報で攻撃による強化のリセットは攻撃した女神にのみ有効らしい。
「つまり攻略法は一柱の女神を集中攻撃で倒して、誰かが次に倒す女神の攻撃を受けてステータスをリセットしてから倒していく感じですか」
「そういうことなります。因みに絶対防御は読まれて不発させられたそうです。バフの攻撃ですが満月さんがありったけの防御スキルを使って、盾と鎧が大破で即死の威力です」
満月さんには同情してしまう。
「攻撃を受けたら、リセットされるんですよね?」
「そう聞いています。何かいい作戦を思い付きましたか?」
「はい。試してみないとわかりませんがたぶん八階の戦闘が攻略のヒントになってる気がします」
俺の攻略法が有効なら八階のほうが苦戦する気がするな。まぁ、ここがボーナスがない理由なんだろう。そして問題となるのがラスボスだ。
「やはりヘカテーでした。ただ強さについてはよく分かっていません」
「というと?」
「暗黒魔法の禁呪、ダークマターを開幕速攻で使われて全滅したそうです。どうやらダークマターは蘇生系スキルを無効化し、全ての敵を全滅させる禁呪のようです」
「ひっでー」
ただヘカテーの攻略法は昨日判明したらしい。
「ユグさんがペルセポネに遭遇したんですか!?」
ペルセポネはハデスの妻で以前にも説明したが冥府での実力ではハデスに次ぐ強さを誇っている女神だ。豊穣神デーメーテールの娘でアテナと同じ処女神として知られている。
「えぇ。話を聞きに行った農家のお爺ちゃんの娘がペルセポネになったらしいです」
「じゃあ、お爺ちゃんはハデスですか?」
「みんなそう思いましたけど、違うみたいですね。ユグさんの話では、ヘカテーのせいで永遠に年寄りのまま農業をすることになったお爺ちゃんが可哀想で農業を手伝っていたという設定らしいです」
確かに年寄りのまま不老不死にされると地獄だろうな。そしてお爺ちゃんを解放するためにペルセポネはユグさんにハデスの槍バイデントのレプリカと即死と邪眼を防ぐトネリコのお守りを人数分、くれたそうだ。
「お手柄ですね。ユグさん」
「えぇ。ただ問題がありまして」
「問題?」
「バイデントのレプリカを使えるのは貰ったユグさんのみで使えるのは一回のみらしいんです」
これでユグさんのラスボス戦参加が確定した。しかも使ったことがない槍で!ユグさんと鉄心さんたちには頑張って貰いたい。
「カボチャ集めに行ってきまーす。あ、ミライとシャローさんが来たら、教えて下さい」
「わかりました。塔の順番が来たら、連絡しますね。あ、魔術殺しの魔導書は私が預かっておきます」
俺がみんなとカボチャ集めというスキル上げをしているとミライとシャローさんがやってきたので、ここで一度戦闘を終えるとインフォが来る。
『コノハの同時詠唱のレベルが40に到達しました。同時詠唱の最大数が1増加しました』
『コノハの神聖魔法のレベルが30に到達しました。神聖魔法【リヴァイブ】、【ジャッジメント】を取得しました』
結構スキルが上がったコノハだけど、まだ荒ぶっている。レベルが上がっていないからね。疲れている皆を回復しながら全員に作戦を説明する。
「結構重要な役割をお願いして来ますね」
「仕方ないじゃないですか。ラーンの網を持っているのはシャローさんたちなんですから」
「はぁ…まさか女性に使うことになるとは思ってませんでしたよ」
「あれ? これでマーメイドを捕まえられるとか漁師たちが言ってませんでした? だからお願いしたんですけど」
咳払いで誤魔化された。リアンとミライがいるからこれ以上は止めておこう。
「取り敢えず二人には俺の召喚獣の騎乗戦に慣れて貰わないとな」
「…じゃあ、グレイちゃんを希望する」
「では、私はサフィさんで。あ、リアンさんは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。今回はスピカさんと戦わせてもらいます」
「ホエ~」
悲しそうな声を出すサフィだ。それを聞いたリアンは慌ててフォローしていた。というわけで今度はレベル上げ狙いでゴールドパンプキンキングを倒しているとお昼になってしまった。
「連絡来てないよな?」
「はい」
「…来てないはず」
どうやら八階で苦戦中みたいだな。ログアウトするために戦闘を止めるとインフォが来た。
『リリーの竜魔法のレベルが20に到達しました。竜魔法【レインボードラゴンバースト】を取得しました』
『リリーのレベルが10に到達しました。白熱刃、魔力回復、星震を取得しました』
『イオンのレベルが10に到達しました。虚空切断、魔力回復、間欠泉を取得しました』
『セチアのレベルが10に到達しました。詠唱破棄、魔力回復、遅延魔法を取得しました』
『リビナの魔王技のレベルが10に到達しました。魔王技【デモンクラッシャー】を取得しました』
『セフォネの時空魔法のレベルが35に到達しました。時空魔法【テレポート】、【アクセラレーション】を取得しました』
『虎徹の多刀流のレベルが50に到達しました。多刀流【桜花爛漫】を取得しました。虎徹の多刀流が上限に到達しました』
『白夜の地魔法のレベルが10に到達しました。地魔法【 ウォーリングロック】、【ランパード】を取得しました』
『狐子の闇魔法のレベルが30にに到達しました。闇魔法【シャドールーム】、【ダークレイ】を取得しました』
『狐子の闇魔法が暗黒魔法に進化しました。暗黒魔法【ナイトメア】、【カース】を取得しました』
『スピカの木魔法のレベルが35に到達しました。木魔法【シードドレイン】、【シック】を取得しました』
『月輝夜のレベルが40に到達しました。進化が可能です』
『ジークの竜魔法のレベルが10に到達しました。竜魔法【ドラゴニックブレッシング】を取得しました』』
『ハーベラスのレベルが40に到達しました。進化が可能です』
『リオーネの光魔法のレベルが30に到達しました。光魔法【リフレッシュ】、【フラッシュバン】を取得しました』
『リオーネの光魔法が神聖魔法に進化しました。神聖魔法【セイント】、【ブレス】を取得しました』
スキルの獲得がちゃんと来たか。この分だと成長も来そうだな。
「「「「上がった〜!」」」」
「なんか私だけレベルが跳び抜けてしまった感じがするんですけど…」
「…リーダーなら大丈夫」
ミライもレベルが上がっているはずだけど、全く気にしていない。一応聞くと俺と組む時点でみんなこうなることは分かっているから問題ないそうだ。
「確認したら、どうやらもうすぐ出番みたいだから休憩しておくように」
「「「「はーい!」」」」
元気に返事をするリリーたちに対して俺たちは休憩というログアウトすることにした。




