#986 ハロウィンの魔女
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俺たちが中に入ると玉座がそこにはあった。そして座っている魔女がいた。
サウィンリッチ?
? ? ?
やはりボスに出て来るか。これで九階と十階のボスがサウィンリッチでないことが確定した。
「お主たちか? 妾の祭りを滅茶苦茶にしている人間というのは」
「俺たちとしては町の人間を生贄にしているのを止めているだけなんだけどな」
「ふん。それを無茶苦茶にしていると言うのだ」
「なら俺たちの目的は達成されている訳だな。ギルマス」
「そういう事ですね」
俺たちの様子を見て、サウィンリッチがジャックオランタンがデザインされている杖を持ち立ち上げると俺たちは戦闘態勢になる。それを見たサウィンリッチが言う。
「お前たちもあいつらと一緒か…ならば容赦せぬ! 妾の軍隊を持って、お前たちに裁きを下してやろう!」
紫色の魔方陣が無数に描かれ、そいつらは現れた。
サウィンリベンジャー?
? ? ?
サウィンスケアクロウ?
? ? ?
サウィンリベンジャーは覆面を被ったローブ姿の人間のようだ。覆面には俺たちが受けた魔女の呪いと同じ魔方陣があった。
サウィンスケアクロウは一言で言うならカボチャの案山子。ただしカボチャはハロウィン仕様でカボチャにはとんがり帽子がある敵だった。
俺たちが警戒しているとサウィンリベンジャーは一斉にローブの中から剣を取り出して、空を飛びながら襲い掛かって来た。
「「「向かい打て!」」」
俺たちの指示に召喚獣たちが一斉に動くと異変はすぐに起きた。まずサウィンリベンジャーに攻撃を受けたり、また攻撃を防ぐと生命力と魔力が減ることが確認された。神瞳で確認するとどうやらあいつが持っている剣が怪しい。
それでもみんななら問題は無くサウィンリベンジャーを返り討ちする。するとここでサウィンリベンジャーを倒したみんなに大ダメージが発生し、サウィンリベンジャーたちは生命力を全回復され、起き上がった。
「な!? どういうことだよ!? タクト!」
「サウィンスケアクロウの力みたいだな。どうやら身代わりで味方が受けたダメージを自分が受けて、そのダメージをこっちに与えるスキルがあるらしいな」
「ちょっと待ってよ。それは可笑しいぞ。だって、あいつの生命力は全然減ってねーぞ」
「あら? 生きている人間なのに目が悪いのね? ちゃんと減っているわよ? 最もサウィンスケアクロウの生命力が高すぎて分かりにくいでしょうけどね」
なるほど。そう来たか……受けるダメージが大きいなら生命力を多くすれば問題ない訳だ。しかも回復速度が速い。これはやばいな。サウィンリベンジャーたちが襲い掛かって来る。攻撃を受けてばかりいると生命力と魔力がどんどん減ってしまう。面倒臭い作戦を考えてくれたものだ。
俺はマモングリモワールを取り出すと危険を察知したサウィンリッチが動いた。
「させないわ! ルーンウェポン!」
しかしルーンウェポンは不発する。裂空さんが得意げに魔術殺しの魔導書を見せた。
「残念だったな。タクトばかり見ているからへまするんだよ」
「全員、下がれ! 魔軍!」
現れたは無数のマールス・ゲニウムだった。そいつらに俺は命じる。
「サウィンリベンジャーたちを倒せ!」
こうしてサウィンリベンジャーとマールス・ゲニウムの戦いが勃発する。マールス・ゲニウムは幽霊モンスターだから通常の剣の攻撃は受けない。その結果、サウィンリベンジャーの剣の効果はマールス・ゲニウムには不発に終わった。やはり攻撃して触れることが効果発動の条件か。
しかしマールス・ゲニウムは攻撃を加えるとサウィンスケアクロウの効果でダメージは受ける。だがマールス・ゲニウムたちには悪いが彼らのダメージは俺たちには影響はない。この隙に回復して、話し合う。
「これって、サウィンスケアクロウを突破しないと勝てねーよな?」
「あぁ。ただあの生命力はパッと見て、俺達全員の生命力を越えてるんじゃないか?」
「サウィンスケアクロウをまだ直接攻撃していないがどうなると思う?」
「たぶん罠だな。ああいうモンスターは防御力が低い。あれに攻撃すると」
「サウィンスケアクロウにとんでもないダメージを与えることになってこっちが即死することになるってことだな」
裂空さんとタクマはゲームに詳しいね。さて、そうなるとこちらの手は限られる。まずはサウィンスケアクロウの能力を封じる作戦。意外にもルーンスキルが通用したんだが、これも罠でサウィンスケアクロウは自分が受けた状態異常も相手に返す能力もあるらしい。
残す方法は三つ。ダメージを受けたらすぐに回復手段を使って強引に突破する方法だ。要はサウィンスケアクロウが受けるダメージよりこちらの回復が上回れば倒せることになる。ただかなりの難易度が予想される。攻撃役と回復役の連携は必須だからな。少しでも攻撃より回復が遅くなれば攻撃役が死んでしまうし、回復が早すぎると回復が不発して攻撃役が死んでしまう。一応このメンバーでその作戦は可能だが、全員自信がなく断念した。
二つ目は数人が犠牲覚悟で大ダメージを与えて強引に突破する方法。恐らくノワたちは最初のダメージを受けて一度は死ぬけど、起死回生で蘇るはずだ。ただこれよりももっといい作戦がある。マールス・ゲニウムが消えると同時に俺たちは仕掛けた。裂空さんとタクマたちがサウィンリベンジャーを引き受ける。
「「エンゲージバースト!」」
俺がエンゲージバーストしたのはセフォネだ。闇転移で一気にサウィンスケアクロウの背後に回るとハルペーがサウィンスケアクロウのカボチャ頭に刺さる。更にサウィンスケアクロウの体に手を置く。
『消し飛ぶがいい! 魔王波動!』
「ふふ。お馬鹿さんね」
この連続攻撃で俺たちは生命力を失うが復活し、更にハルパーで攻撃する。要は不死身なら死ぬことは無いんだからダメージを受けても問題は無い。
「な!? こいつ、妾と同じ不死か! しかし甘いな」
サウィンリッチの杖のジャックオランタンが光るとカボチャの霊体が飛んで来て俺たちに憑依してくる。しかしこれは弾かれる。
「これは太陽の光!? えぇい! サウィンリベンジャー!」
アリエスの魔法ローブに感謝だ。というかノワたちにさせないで良かった。恐らくあの杖は蘇生した者を憑依で操る効果があるんだと思う。ノワたちが操られていたらと思うとゾッとする。
俺たちは援護に来たサウィンリベンジャーを斬り裂き、ダメージを受けると復活する。こいつらの根本的な作戦はこちらが出すダメージをこちらに与えるというカウンターだ。この作戦は生命力が無くなると死ぬことで成り立つ。
その大前提が成立しない相手では無残な物だ。何せ自分たちが一方的なダメージを受けるだけのようなものだからな。
「邪魔だ!」
俺たちはサウィンリベンジャーを突破して、サウィンスケアクロウに追撃を加えようとした瞬間、サウィンスケアクロウの口が開く。
「ケケケケケ!」
「う!?」
無数の杭が口から放たれ、俺たちの体に突き刺さる。
『タクト! 無事か! 血流操作なのじゃ!』
杭が刺さった箇所から血が吹き出し、強引に杭を抜き、瞬間再生で元に戻る。
『助かったぞ…セフォネ。それにしても痛いな~』
『妾は昔からこれを味わっていたんだぞ。む! タクト!』
サウィンスケアクロウの口から今度は放射熱線が放たれた。しかし俺には火のスキルは通用しない。
「ケケケケケ! ケ?」
『血竜! タクト!』
『任せろ!』
俺は血竜に乗り、サウィンスケアクロウに向かうと血竜がサウィンスケアクロウを食べる直前に飛び上がり、ハルパーを振りかぶる。
「やらせぬ! っ!?」
「それは私たちの台詞です」
サウィンリッチに矢が飛来し、それをサウィンリッチはガードする。セチアだ。更にタクマが花火ちゃんとエンゲージバーストを使い、襲い掛かる。
「今いいところなんだから何もさせないわ」
「く! 魔法を封じたから勝てると思うな! 冥波動!」
「受けて立ってあげるわよ! 溶波動!」
二つの波動がぶつかり合っている間に俺はサウィンスケアクロウに止めの一撃を放つ。
『魔素刃!』
「虚空切断!」
『「チャージスライサー!」』
真っ直ぐ振り下ろしたハルペーはサウィンスケアクロウを真っ二つにした。これでこいつらの作戦は崩壊した。
「今だ! 一気にこいつらを全滅させろ!」
裂空さんの指示でみんなが次々サウィンリベンジャーを倒す。
「くぅうう! 忌々しい魔導書め! 樹海操作!」
「炎竜解放! はぁあああ!」
花火ちゃんの大剣から火のドラゴンが発生すると花火ちゃんはそれを横薙ぎする。すると火のドラゴンも横に動き、樹海諸共サウィンリッチを焼き尽くした。
「大したこと…おっと! 危ない危ない」
死滅光線を躱した花火ちゃんは次々飛んで来る消滅弾を躱すがこれが変幻自在に動いて、中々前に攻め込めない。更にサウィンリッチは魔導書を取り出すと全ての敵が復活する。魔法ではなく魔導書による全体蘇生スキルか!
これで一度振り出しに戻るが既に攻略法が確立しているこの状況に変わりはない。しかしサウィンリッチも攻略法を崩すために裂空さんを狙う。しかしここで裂空さんもヴィヴィアンとエンゲージバーストを使い、ぶつかり合った。
「俺なら簡単に勝てると思ったか? 舐めるな!」
流石に剣と杖では接近戦で有利だと思ったが剣での攻撃を普通に杖でガードして来るので、白熱した戦闘になる。この間にもタクマたちには消滅弾が襲い掛かっている。流石魔女と言うべきだが、ここで俺たちはサウィンスケアクロウを倒す。
「…ドラゴンテイル」
「く…!?」
それを確認したノワがサウィンリッチの影からドラゴンテイルを使い、吹っ飛ばすとこの瞬間、タクマたちを追いかけていた消滅弾はコントロールを失い、花火ちゃんは自由になる。
「ドラゴンダイブ!」
「使役! サウィンスケアクロウ!」
サウィンリッチの杖が光るとサウィンスケアクロウが現れる。使役でも呼び出せるのか!?タクマたちはなすすべなく、サウィンスケアクロウにドラゴンダイブを使ってしまい、サウィンスケアクロウごとサウィンリッチを押し、壁にぶつかる。ここで起死回生をタクマたちは発動させるがそれを見切っているサウィンリッチがタクマの頭を掴ろうとするとタクマたちが幻となって消える。
「残念でした~」
「今度は貴様か!」
リビナの夢幻泡影だ。この間にタクマたちは距離を取り、力を溜めている。
「烈日!」
「斥力操作!」
「何!?」
烈日を浴びせようとしたタクマたちだったが斥力操作で強制的反対側の壁にぶつかり、烈日を発動させる。対するサウィンリッチは姿を消す。俺はその瞬間にサウィンリッチの狙いを見切る。
「闇転移!」
「黒槍!」
俺たちは裂空さんを強引にどかすと俺たちは裂空さんの影から飛んできた黒い槍に貫かれた。
「く…邪魔を…っ!?」
「はぁああ!」
俺たちは裂空さんの影に攻撃するが逃げられる。するとまた裂空さんが狙われる。しかし今回は攻撃する前にノワが影の中で襲い掛かった。
「…よくもにぃを! 絶対に許さない! ドラゴンダイブ!」
「くぅ!?」
「ぐは!?」
裂空さんの影から強引にサウィンリッチを追い出す為に放ったドラゴンダイブは確かにサウィンリッチを追い出すことには成功したが裂空さんにも体当たりすることになり二人仲良く壁に激突した。
「…あ。ごめんなさい」
「く! 次から次へと! ん?」
「ナイスおっぱい」
「ひ!? 刑罰!」
裂空さんはサウィンリッチの刑罰を受けて、死に戻る。俺たちから見ると完全にノワのせいで裂空さんが死んでしまったように見えた。
「何やってんだ! あの人!」
「魔法を使う隙を与えるな! 全員で一気に落とすぞ!」
幸いすでに数の有利が決定的となっており、残った全員で魔法を使わせること無く、押し切る作戦に俺たちは出た。
「デモンクラッシャー!」
「く! あ…く!?」
ファリーダのデモンクラッシャーでぶっ飛ばされたサウィンリッチに俺たちが投げたハルパーが突き刺さり、これで蘇生は無い。
『これで終わりよ!』
「決めるぜ! 花火!」
「『竜技! ドラゴンノヴァ!』」
「アァアア~!?」
タクマたちの至近距離でのドラゴンノヴァが決まり、サウィンリッチは倒れると消えていく。
「ふふ…妾の負けか…だが、妾の呪いは解けることは無い。妾に力を貸して下さっている女神様がお前たちに裁きを与える。覚えておくがいい」
エンゲージバーストを解除し、セフォネが問いかける。
「死ぬ前に答えよ。何故不死の呪いを掛けて人間を苦しめているのじゃ?」
「知れたこと。妾は過去に受けた物をあ奴らに返しているだけじゃ。正義は妾にあって、悪はお主たちだ」
そう言うとサウィンリッチは消えて、インフォが来る。
『ハロウィンの塔八階をクリアしました』
そして俺たちは転移するとみんなに歓迎される。するとノワがやって来た。
「…にぃ、ナイスおっぱい」
「「「「…」」」」
その場が一瞬で凍り付いた。
「タクト君、説明してくれるかな?」
「ちょっと待て! メル! ノワ! そんな言葉誰から聞いたんだ」
「…裂空さんが言っていた」
そこで俺たちは裂空さんが死んだシーンが脳裏に過った。
「ノワはいい子だからこのことは忘れような」
「…あー。…あー」
俺はノワの頭を左右に振って、強引に忘れさせようとするのだった。




