#985 ハロウィンの塔、八階
夕飯を食べてからログインすると塔攻略は進んでおり、五階攻略の最中だった。攻略は順調に進んでいき、俺たちの八階攻略が決まった。
「ウィッカーマンを先に倒すと復活されちゃうアクシデントはあったけど、なんとか攻略に成功しましたよ」
「時間ギリギリだったけどね…復活しても制限時間が元に戻らないのは納得いかない…」
「お疲れ様」
七階が攻略されたことで今夜の儀式が停止したことがインフォで知らされた。時間的に失敗していたら、儀式の停止は出来なかっただろう。本当によく頑張ってくれたよ。
「それじゃあ、八階に行くとするか」
「「おう」」
編成は五階の時と同じで召喚獣を九体ずつで分ける。俺が選んだのはセチア、ノワ、リビナ、リアン、和狐、セフォネ、ファリーダ、ユウェル、アリナだ。リベンジに燃えていたイオンと恋火だが、その気持ちは明日の攻略に発揮して貰いたい。
攻略をスタートし、転移した先はハロウィンの装飾がされたお城の中だった。そしてすぐさまアリナが反応する。
「囲まれているの! 上の廊下!」
アリナの声を受けて敵が姿を見せる。
サウィンウィッチ?
? ? ?
ハロウィンのとんがり帽子を身に着けた魔女たちが一斉に杖を構えて来る
「セチア! 和狐!」
「精霊結界!」
「結界!」
魔法の一斉攻撃をガードする。
「奥で詠唱している人たちがいるの!」
「大魔法か? タクマ、裂空さん」
「あぁ。潰して来るぜ」
「お色気姉ちゃんを倒すのは気が引けるがしょーがねーか」
裂空さんがそう言ったことでセチアたちが俺に質問してくる。当然俺は敵なら容赦するつもりはない。それを証明するとしよう。
俺たちがサウィンウィッチたちに襲い掛かろうとすると空間歪曲が発生し、そこから重りが付いた鎖が飛んできた。
「躱せ!」
みんなは躱すがユウェルが捕まる。しかしユウェルにはユウェルのやり方がある。
「引っ張り合いなら負けないぞ!」
空間歪曲からサウィンリッパーを引きずり出し、そのまま下の廊下に叩きつける。追撃にセフォネが動くがナイフが闇から放たれるとセフォネは捌き切れず、突き刺さると倒れてしまう。現れたのはジャック・ザ・リッパーだ。
しかし倒れたセフォネは血になるとジャック・ザ・リッパーの背後に回り、爪がジャック・ザ・リッパーを貫いた。
「妾を殺したことは褒めてやるのじゃ。じゃが妾は不死身のヴァンパイア。お主たちのように誰かに不死身にされている輩とはレベルが違うのじゃ!」
セフォネは爪を抜くとハルペーで斬り裂いた。するとタクマたちが慌てた様子で帰って来た。
「悪い! ゾンビとミイラ男を召喚されちまった!」
「追われている!」
「「「「えぇ!?」」」」
セチアたちが嫌そうな顔をする一方で俺は神剣グラムを構える。タクマたちの後を追うようにアクティベーション・ゾンビたちが俺たちに向かってジャンプしてきた。
「「「「アァアア~!」」」」
「爆風波!」
「「「「アァアア~!?」」」」
全部纏めて吹っ飛ばした。するとここで大魔法が発動する。それを見た俺は魔術殺しの魔導書を取り出し、魔法の発動を無効化すると同時にセチアたちの結界も解除してしまう。
この結果に絶句するサウィンウィッチたちだが、出現したサウィンリッパーたちが襲い掛かって来る。これに召喚獣たちが応戦する。
「何があった?」
「サウィンウィッチに召喚されたんだ。他にも巨人のゾンビが」
「アァアアアー!」
俺たちの前に巨大な何かが落下してきた。
ジャイアント・ゾンビ?
? ? ?
一階のボスだな。更にジャイアント・ゾンビに隣り合うように何かが落下してきた。
ジェネラル・デュラハン?
? ? ?
バーディングを装備したゾンビの馬と共に漆黒の豪華な鎧を装備したデュラハンが三人追加された。武器はそれぞれランス、エクセキューショナーズソード、強弓だ。数が多すぎるだろう。
「これは聞いていないが?」
「「俺たちも知らない」」
これだけ今までの階層に登場した敵がいるとなるとこの階層のボスはもしかしてサウィンリッチなのか?今は考えている余裕はないか。
俺に強弓が放たれるとユウェルがガードし、セチアが反撃する。その際にユウェルが矢の威力に押された。とんでもない威力の強弓だな。しかしこれ以上何かを召喚されるとこちらが不利になる一方だ。
「こいつらは俺たちが引き受けた。とにかく召喚を止めないとキリがない。そっちを頼む」
「おう! 行くぜ! 花火!」
「次は絶対に止めて見せるから頼んだぜ? ギルマス」
二人と召喚獣が先に進もうとすると当然行かせまいと動く。
「…影封陣」
ノワが時間を稼ぎ、タクマと裂空さんは先に進んだ。先に進ませてしまったジャイアント・ゾンビとジェネラル・デュラハンはノワの影封陣を解こうする。その間に俺たちも動く。
「大祓!」
和狐が大祓を使用し、範囲内にいるアンデッドモンスターたちに大ダメージを与える。ただ昔のように倒せはしない。敵のレベルが上がって来た証拠だな。
そしてランスのジェネラル・デュラハンにリアン、エクセキューショナーズソードのジェネラル・デュラハンにリビナ、強弓のジェネラル・デュラハンにセチアが挑む。
「あなたの相手は私がします!」
「でかい敵は苦手だからさ。あなたの相手はボクがしてあげるよ。たくさん縛ってあげるからかかっておいで」
「どちらが弓使いとして上か決めませんか?」
三人の戦いが勃発すると和狐にナイフが飛んできた。これをアリナが撃ち落とす。そしてアリナは隠れているジャック・ザ・リッパーに清月の苦無を投げつけた。
「隠れん坊ならアリナが相手をしてあげるの!」
今度はそのアリナに鎖鎌の重りが飛んで来る。それをユウェルは止めてセフォネがサウィンリッパーに襲い掛かった。しかしこれをサウィンリッパーは鎌でガードする。
「お前の相手は妾じゃ!」
「わたしもするぞ!」
「魔王技! デモンクラッシャー!」
ユウェルが他のサウィンリッパーと対戦し、ファリーダはジャイアント・ゾンビをぶっ飛ばしたことで俺は悟る。
「俺の相手は元気なゾンビとミイラ男か?」
「まぁまぁ。タクトはん。いつも暴れていてはるんですから今日はうちだけ守っておくれやす」
和狐の言葉で全員がよそ見し、敵の反撃を受けた。みんなの弱点はこれだなと思った。
「ま、いいか」
俺は神剣グラムを振るいながら、適当にアクティベーション・ゾンビとミイラ男を吹っ飛ばしていく。すると魔法を封じられたサウィンウィッチたちがナイフを構えて突撃してきた。完全に殺人シーンだ。
「そういうのはやめとけって」
「「「「きゃあああ!?」」」」
神剣グラムの多乱刃を受けて、全滅した。
「ほんまに容赦ないどすな」
「俺も刺されたくはないからな」
現実なら刺されても仕方ない状況なのは無視しよう。これはゲームの中での話だからね。みんながそれぞれ激闘をしているとタクマと裂空さんたちが帰って来た。
「こっちは片付けたぜ!」
「デュラハンたちとの勝負に口出しするのは無粋みたいだな。まずはジャイアント・ゾンビから倒すぞ!」
二人が戦いに参加して形勢が逆転する。みんな負けてはいなかったけど、幽鬼の加護が厄介で決め手に欠ける状態だったんだよね。
「ぜぇ…ぜぇ…勝ったのじゃ!」
「わ、わたしもなんとか勝ったぞ!」
「なかなかの…敵…でしたね。手が痛いです」
「アリナは楽勝勝利なの!」
セフォネとユウェルは見事にサウィンリッパーを一人で仕留めた。ユウェルは物理特化だからサウィンリッパーと相性がいい上に選んだ武器がルナティックトンファーにルナティックフレイルモーニングスターだったからお互いに探りながらの戦闘となった。寧ろ俺はトンファー相手に善戦したサウィンリッパーを褒めたいところだ。
セフォネは闇転移で鎖の攻撃に対処しつつ、血竜とブラッディクリエーションが有効であることに気付くと押せ押せとなった。それまではお互いに必殺の鎌での斬り合いをしていたからかなり神経を使った戦闘だっただろう。
セチアは完全に連射勝ち。ただ強弓のジェネラル・ゾンビもセチアの連射を受けながら体勢を崩すことなく、強弓を放って来ていた。あれが強弓使いの理想の姿なんだろうな。どれだけ攻撃を受けても一撃必殺の攻撃を放つ覚悟には感服した。
ただセチアも撃たれそうになると森林操作で木の壁を作り、見えないところで木分身を使って、上手に強弓に対処した。本人の疲れ具合から見ると結構冷や汗物だったんだろうな。
アリナはまぁ、圧勝だろう。暗殺者が隠れられないのは悪夢でしかない。本来なら狩る側のジャック・ザ・リッパーがアリナの攻撃に逃げ回る始末だった。
ジャイアント・ゾンビとリビナのジェネラル・デュラハンとゾンビたちは裂空さんとタクマに手伝って貰った。相性が悪いからこれはしょうがない。そして階段を上がり、廊下を進んでいくと大きな扉があった。
「あれで戦闘は終わりだったのか?」
「まぁ、この廊下でサウィンドルイドとウィッカーマンまで出て来たからな。階層ボスが複数登場したんだから早いのは当然だと思うぜ?」
ウィッカーマンが登場していたってことは結構危ない状況だったんだな。二人を先に行かせて良かった。俺たちは休憩を取って、ボスの話をすると全員の意見が一致した。そして編成とかを話し合い、ボス戦に挑む。




