#980 二回目の塔攻略
帰って来た俺は燎刃の機嫌取りをすることになった。それをしている間に情報を貰うと攻略は三階まで攻略が進んでいた。クリアしてくれたみんなはテントの中で休憩中らしい。見に行くとぐったりしていた。
「これを失敗する度に繰り返すのよね…」
「「「「きっつ…」」」」
戦闘もそうだが精神的にもきつそうだ。そして四階に挑んでいるのはメルたちらしい。彼らの為にも頑張って貰いたいな。
転移したメルたちが見た景色は左右が崖になっている一本道。
「飛行禁止にはなっていないみたいだね」
「このフィールドでか?」
「飛行して攻略出来る物ならやって見ろってことかしら?」
「面白いじゃんか! 姉ちゃん」
「…うん。これは探りでもあるから敢えて挑んでみよっか。レッカ君」
レッカが全員にフライトを掛けて、メルたちが攻略を開始する。すると空から現れたのは青いグリフォンだった。
ウム・ダブルチュLv60
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ウム・ダブルチュもティアマトが生み出した十一の怪物の一匹だ。こいつはグリフォンに似ているせいかとにかく風系統のスキルを連発してきた。
「よ! 確かに機動力で負けている感じはするが問題ない範囲だな」
「は! そうね。六人で挑んでいるから数も少ないし、ボスまでは問題なく行けそうね」
「うん。でも逆に言うとそれが不気味だよね。気を緩めないで」
メルの心配をよそにあっさり六人はボスがいる扉に到達する。出来る限りのバフを掛けて、扉を開くとボスのフィールドに絶句する。そこは人一人がギリギリ立てそうな石柱が無数にあるフィールドだった。
「ちょっと待てよ。あれに乗って戦えって事か?」
「でも、飛行禁止にはなっていないわ」
「…凄く嫌な予感する。飛行するのは危ないと思う」
「ミライちゃんの意見に賛成だね。一応フライトは掛けておくけど過信しないようにね」
「ありがと。レッカ君。それじゃあ、行こうか」
メルたちがフィールドに降り立つとボスが空から現れる。
クサリク?
? ? ?
そいつは翼がある巨大な牛だった。クサリクもまたティアマトの十一の怪物の一体だ。体の色は青く立派な角がある牛だった。
「…ここの運営は相当意地悪」
「うん。まさかこんなフィールドでグガランナと同一視されている怪物と戦うことになるなんてね」
グガランナはメソポタミア神話に登場する天の牡牛だ。7年間の不作を招くという能力を持っており、牡牛座の原点とも言われている。そいつとクサリクは同一視されているのだ。因みにグガランナはアステリオスの次の進化先で第五進化の召喚獣となる。
「モォオオオオ!」
「来るよ! ケーゴ!」
「任せろ! 強行!」
クサリクはケーゴの強行を受けてケーゴに突撃する。
「絶対防御! やれ!」
「任せて! とう!」
「ちょっとリサちゃん!?」
「空はダメよ!」
飛び掛かったリサだったがクサリクは翼を羽ばたき、距離を取るとクサリクの気流操作がリサを襲うと墜落し、死亡扱いとなった。
「無闇に飛ばないように言ったのにいきなり無視するってどういう事なのかな?」
「私も不思議だよ。レッカ君」
「あの子に文句を言うのは後にしなさい! ケーゴ」
「キャッスルガード! ぐぅうう!? な!?」
ケーゴがキャッスルガードでクサリクの光速激突を受けると押されてしまい、足が岩場の外に出てしまうと踏ん張りが効かなくなり、クサリクに突進された状態で空に出てしまう。するとクサリクは岩場に次々突進していく最後は大気壁で強引に下に落とされ、死亡する。
「詰んじゃったかな…これ」
「まだよ! メルにも盾があるじゃない!」
「小さい盾だけどね!」
「…姉様、来る。蘇生までの時間を稼いで」
「あ~! もう! 分かったよ! 私が攻撃を受けるから攻撃よろしくね」
メルが絶対防御で弾き、クサリクに残った全員の必殺技を放った。しかしクサリクの生命力は思った以上に減っていなかった。神鎧の効果もあるだろうがその結果を見てメルが気付いた。
「まさか神聖属性無効!?」
これのせいでアスカロンや神罰の威力が無効化されたのだ。しかもメルはスキルが神聖属性に偏っている。つまりメルはここに来て相性が最悪の敵と戦っていることを知った。
「モォオオオオオ!」
「う…ホーリーシールド!」
ケーゴに無理だった突撃をメルが防ぐことが出来るはずがなく、メルもケーゴと同じ目に会った。ここでミライの全体蘇生魔法が発動するがその魔法がクサリクの羽ばたきで発生した風で無効化された。
「…詰んだ。魔法とも相性が最悪の敵みたい」
「それが分かっただけでも成果だよ。さて、どうする?」
「最後まで戦いましょう。メルたちに申し訳ないからね」
こうしてメルたちが敗北し、皆に謝る。俺たちは寧ろ相性が最悪の敵と出会ってしまった不運に同情した。皆がルインさんたちが集めてくれたソウルケーキで呪いを解除し、また一階から上がっていく中、クサリクのことを話し合う。
「空中戦で挑むなら気流操作が絶対条件だな」
「そうですね。でもクサリク相手に空中戦はやめた方が良さそうです」
これはアルさんの言う通りだろう。
「岩場で戦うなら受けずに躱すスタイルがいいな。受けると押し込まれて落とされるし、早めに回避行動を取らないとこれも風で落とされちまう。守りを固めた重戦士は向いてないことだけは確実だ」
「神鎧も使っていたから硬さもあるよ」
話を聞けば聞く程、格闘家と相性がいい敵だと分かる。後は忍者や狩人、軽装備の侍が適正となるだろう。最も忍者と狩人になると神鎧を突破する火力が要求される。
こうして選ばれたメンバーはシフォンとトリスタンさん、リサにトリスタンさんと同じ狩人、鉄心さんに憧れている太刀装備で軽装の侍二名だ。
ギルドクエストや今まで一緒に戦って来てはいるけど、パーティーを組むのは初めてのため、念入りにクサリク攻略を話し合う。
その間にルインさんたちは別の協議をしていた。それはこれからの塔攻略についてだ。このままずっと塔に掛かりっきりになると塔攻略している人たちに経験値は入らないし、負担が多すぎるということで交代案が考えられたのだ。
しかしそうなると他の人でも攻略出来る方法を考える必要が出て来る。そこで考えられたのがバームブラックから手に入る幽鬼のコインを使う案だ。これを使えば恐らくゾンビやミイラ男に狙われなくなるはずだから誰でもボスまでなら行けるという話が出た。これなら一階と二階は少なくとも交代が可能となった。三階はうちのギルドでは召喚師がたくさんいるから交代要員に問題は無い。四階はちょっと厳しい。職種で交代するのはありかも知れないけど、主要メンバーの交代は出来ないだろう。
「一階から三階までは交代の攻略が出来ると分かっただけでもだいぶ違うはずよ。何せ一番挑む回数が多いでしょうからね」
「そうですね」
ここでチロルたちが無事に攻略し、シフォンたちの出番がやって来た。
「シフォンちゃん、暴走しがちな妹をよろしくね?」
「リサ、シフォンの言うことをよく聞くんだぞ」
「二人とも私を何だと思っているの!」
怒りながらリサは転移した。俺とメルは猪という意見で心の中で一致しているのだった。




