#975 サンタクロース作戦
ちょっと更新の予定を告知致します。
今週東京オリンピック開催ということで開会式の日である金曜日もいつもと同じ時間に更新を行います。
その代わりというわけではありませんが二回目のコロナワクチンを打つため、8月1日と8月3日の更新を休ませていただきます。一回目の時点で少し副作用が出てしまいまして、安静にしていようと思います。
俺は時間になるのを待ちながらリリーたちを宥めている。結局数の関係で回復出来たのはイクス、リアン、セフォネ、ファリーダ、ユウェル、アリナ、燎刃だったからだ。
「「「「むっすー」」」」
「いつまで頬を膨らませているのよ。もう食べちゃったんだから返って来ないわよ」
「「「「それぐらい分かってる!」」」」
一応砦攻略すれば呪いを受けるから次はリリーたちの呪いを解除すると言ってもこれなんだよな。
「そろそろ時間です。マスター」
「そっか…それじゃあ、行くか。ルミ」
「…はい。パーパ」
「リリーたちも行くか?」
「「「「行く!」」」」
これで機嫌が直った。俺たちが向かったのは最初に出会った女の子がいるお店だ。お店の前で二十一時を迎える。
「わたしの計算に抜かりありません」
イクスがどや顔している。頭を撫でて褒める。
「来たな。行こうか」
サウィンドルイドたちがお店に接近する。そして母親はお菓子を渡し、女の子はやはり連れていかれる。
「おっと。その子を連れて行くのは待ってもらおうか」
「なんだ? お前たちは? その呪い…我らが女神の反逆者か」
「なんだと? 魔女じゃないのか?」
「ふん。お前たちに我らの女神の事など、わかりはせん。それよりも邪魔をすると言うならお前や連れている召喚獣たちも生贄に捧げるぞ」
「慌てるなよ。俺たちが用があるのはその女の子だよ」
女の子が首を傾げる。俺とルミは女の子の前に行く。
「…プレゼント」
「え?」
「俺の召喚獣から君にプレゼントらしい。受け取ってやってくれるか?」
「は、はぁ…ありがとう」
女の子がプレゼントの箱を開けると中からパンプキンクッキーが入っていた。俺がルミに渡しておいたものだ。
「こ、これ」
「それをあの人たちに渡してくれ。そうすれば生贄にされることはない」
これにはサウィンドルイドたちが慌てる。
「ふ、ふざけるな! そんなことが許されるわけがないだろう!」
「いいや。ルミがしたことはお前たちの女神のルールに違反していない。パンプキンクッキーを他人にあげることを禁止していないだろ?」
サウィンドルイドたちは俺の言葉に反論出来ない。というかジャックオランタンたちはパンプキンクッキーを貰えてご満悦だ。
すると空にプレゼントスキルを持った召喚獣を乗せた太陽神のチャリオットが飛んで来て、プレゼントをばら撒いて去って行った。これで町の人たちへの生贄を止める作戦だ。本当なら事前に配れたら、良かったんだけどな。流石に時間がなくばら撒く作戦にシフトした。
「な、なんのつもりだ! 貴様!」
「俺? 俺は何も知らないぞ。なぁ?」
「「「「うんうん」」」」
嘘です。企画立案者は俺だ。知らないはずがない。
「ほら。パンプキンクッキーを貰ったんだ。とっとと他の所に行けよ」
「く…貴様には我らが女神の天罰が下るぞ」
「はいはい…それぐらいでビビっているなら俺はこんなことしてないっつーの」
「「「「だよねー」」」」
リリーたちに笑顔で全面同意された。他にも連れて行かれそうになっている周りにいる人たちを助けてから急いでテントに向かう。もう戦闘が始まっているはずだ。
俺たちがテントに転移し、外に出るとそこは砦の中だった。
「ふぅ…一体誰だ? 砦のど真ん中にテントを設置したのは」
「本当に誰なんでしょうね」
「誰かさんのせいでテントに出た瞬間に砦の中にいた敵に遭遇する事態になったんだが」
「あー…それは悪かったが、そもそも砦の位置すら不明だったんだぞ? 俺にどうしろって言うんだよ」
ここは一つ砦を破壊する手間が省けたと思って欲しいところだ。
「それで状況は?」
「砦内は懐かしいウルフマンパラダイスでした」
「他にもワーウルフがいた。まぁ、イベントの時に出たワーウルフのほうが強い敵だったな」
それは見たくない光景だな。でもハロウィンらしくはあるか。
「ボスは?」
「まだ分かりません。みんなで手分けして五つある塔を調べて」
ルークが報告した瞬間、塔が破壊されるとそこから巨大な狼男と一人の巨大な狼女が出現した。
モルモーLv65
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ライストリューゴーンLv55
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
最高難易度に設定しているからボスは強いのが来たな。すると塔を調べていたみんなが空中で体勢を整えていた。砦はもうボロボロ。流石にボス戦だけ乱入は気が引けるからみんなに提案する。
「ここまで攻略したんだから俺抜きで攻略してみるか?」
「この状況で言う言葉じゃないと思いますよ」
「そうだな。ルーク。まずは狼女の登場について言わないとな」
「そうですよ! あ、いや、違う! 登場に驚いたという意味で!」
ルークのエルフたちが冷たい目で見ている。慌てて言い訳しなければ良かったのにな。そうこうしているうちに皆が切り札を一斉に使って襲い掛かる。俺が言うまでもなかったか。
しかしモルモーとライストリューゴーンは強かった。ライストリューゴーンは体が異常なほど柔軟でまるで体操選手やサーカス団の人と戦闘してるようだ。騎乗の連携技をバク転して躱すとそのまま踏みつけようとしたり、斬りかかっても体を不自然にくねらせて躱している。
これに対してモルモーは人間サイズになると砦中を走り回り出した。そこで俺は生命力と魔力が徐々に減っていることに気が付いた。どうやらモルモーは回避特化の長時間戦闘を得意としている敵らしい。
因みに見た目はケモミミローブにオオカミのグローブと靴を装備している女の子のように見える。一番の特徴的な点は吸血鬼のような口をしている所だ。
「この! 待て!」
「貰った!」
「影移動!」
「く…速い」
俺はモルモーの戦い方を見て、モルモーの真の狙いに気が付いた。
『みんな、タクトだ。モルモーたちの狙いはたぶんウィッカーマンが出現するまでの時間稼ぎだ』
ウィッカーマンが現れる前に砦を落とさないと事実上の敗北を意味している。だからモルモーは時間稼ぎをしているのだ。これを聞いたみんなはまず結界装置の破壊に動いたけど、これは町が復活した時のように破壊してもすぐに復活してしまった。恐らくボスであるモルモーを倒さないと破壊出来ないのだろう。
この結果、皆は急いで敵を倒すために動く。まずライストリューゴーンは回避が間に合わない速度での連続連携技で仕留めに掛かった。これを心眼と体捌きで十回も回避したのは見事としか言いようがないが最後は回避しきれず、攻撃が一つ命中するとそこからはボコボコだ。
次にモルモーだが、ルークが機転を見せた。
「「「「フラッシュバン!」」」」
至近距離での目くらましにモルモーは怯む。そして光が発生したせいで影が無くなり、モルモーの影潜伏と影移動を封じた。ルークは満を持してパンチを放つと目が見えない状態でモルモーはクロスカウンターを決めて見せた。
更にルークの足を掴むと超連携で突っ込んできているアロマに投げつけて、超連携を解除された。武闘派な上に賢い。しかし勝ち筋を見つけたみんなはフラッシュバンを使ってから超連携で襲い掛かる。
しかしモルモーは手で目を庇うと最初の巨大な狼女の姿になると超連携で突っ込んできていたチロルとアロマを爪で叩きつけ、タクマはサッカーボールのように蹴られた。しかし次に来た雷電さんのドラゴン部隊の超連携が決まる。
連続するドラゴンダイブでモルモーは空に打ち上げられていくとこれを見た裂空さんが聖剣を構える。
「消し飛びやがれぇええ! 聖剣解放!」
「空間歪曲!」
「いぃ!? やべ!? どわ!?」
裂空さんの聖剣の一撃が空間歪曲で返される。
「貰った!」
雷電さんのルナティックミスリルランスがモルモーを貫く。その瞬間、変わり身が発動する。しかしモルモーが出来たのはそこまでだった。空から逃げられなかったモルモーは空にいる召喚獣たちから一斉にブレスを受けて、墜落した。
そこでウィッカーマンが出現しようとしていた。
「大変! 急いで砦の結界装置を破壊しないと」
「その前にモルモーに止めを刺していけ。まだ生きてるぞ」
俺がそう言うとルークのエルフがルナティックミスリルアローを放ち、モルモーを倒した。それを確認した俺は地下のベイカーの町に転移する。魔女の裁きが来るためだ。
その後、地下のベイカーの町でインフォが来る。
『西の結界装置の破壊に成功しました』
『東の結界装置の破壊に成功しました』
なんとか今日のノルマは達成できた。それじゃあ、皆が復活してから成果発表をするとしよう。




