#970 リリーたちの仮装
夕飯を食べながらと理恋と未希から愚痴を聞くことになった。原因は佳代姉の帰りが遅くて、ゲームが出来なかったことだ。そして今、分かっていることを伝える。
「それじゃあ、ゴールドパンプキンは取り敢えずスルーするんだね」
「少なくとも俺たちじゃ、捕まえられなかった。チャンスがある装備ならラーンの網だと思う。これはまだ調べてない。まぁ、佳代姉たちなら自力で」
「「「無理!」」」
時間が無いから仕方が無いのかも知れない。それでも佳代姉たちならチャレンジはするだろう。何せレッカがいるからな。
俺はログインするとホテルの食事を皆で食べることにした。最高級のホテルだからその料理も超一流だ。出された料理はこちら。
パンプキンポタージュスープ
パンプキンサラダ
パンプキンキッシュ
パンプキングラタン
パンプキンプリン
ここまでカボチャを揃えて来ると清々しい。そして出された料理を見て、感動するセチアたちと停止するリリーたちである。
「お、お肉は?」
「お魚もありませんよ?」
「必要ないじゃないですか。こんなにも素晴らしい料理があるのですから」
セチアの言い分は正しくはある。ぶっちゃけキッシュとか作ったことがないから実に楽しみだ。しかも食べてみるとこれが美味しい。まぁ、全てカボチャ味だから飽きは来るだろうけどね。リリーたちがグラタンの中を探すが出て来るのはカボチャのみ。まだチーズがあるだけグラタンはマシだ。
そしてプリンを食べたリリーたちの感想が一致する。
「「「「カボチャ~!」」」」
プリンだから多少プリンの味があることを願っていたのだが、どこまでもカボチャだった。リリーたちのカボチャ生活が暫く続くことが確定して、悲しみに暮れる中気分向上の為に仮装の衣装選びを行く。
お店に行き、そこでリリーたちが仮装衣装を物色する。さっきまでの悲しみは何処へやら楽しそうに選んでいる。というのもここのお店は最初に出会った女の子のお店で彼女にリリーたちの衣装選びを手伝って貰っており、俺は完全に蚊帳の外な状況だ。
因みに仮装の対象にグレイたちとルーナたちは入らなかった。まだ復帰していないコノハやルーナたちは結構似合うと思っていただけにちょっと残念。ここで店の奥から声が聞こえて来る。
「ノワちゃんが足を出している!?」
「…にぃに見せるまで言うの禁止」
「策士ね」
「うーん…どうしましょうか。やはりここはセクシーな魔女の姿が」
「イオンにはこれでしょ。はい、猫耳」
イオンとリビナが喧嘩しそうになったので、止める。ここはよそのお店の中、暴れるのはマナー違反だ。一方恋火たちは苦戦しているようだ。
「うぅ…仮装って難しいです」
「うちらは既にしているようなもんやからね。それでもタクトはんにいつもと違う服を見せる機会なんやから頑張ろな? 恋火」
「はい! お姉ちゃん!」
他にも苦労しているのがブラン、ユウェル、アリナ、燎刃だ。ブランはそもそも悪魔の格好をすることに抵抗があり、ユウェルたちはそもそも新しい服に免疫がないっぽい。
「何を着ればいいのか全然わからないぞ」
「そもそもアリナたちはお兄様の好みがわからないから選びようがないの」
「はい。いっそのことタクト殿に選んで貰った方がいい気が」
「それだと面白くないでしょ? イクス、手伝ってあげなさい。あなたならタクトの好みを知っているはずよね?」
「もちろんです。マスターの事は全て把握しています」
今、聞いたらいけない言葉を聞いた気がする!そもそもハロウィンの仮装については俺も詳しくはない。飲食店のバイトで仮装されられたことはあるけど、その時はドラキュラだったな。懐かしい。
そしてリリーたちの準備が整ったところでお披露目された。まずはリリーからだ。
「じゃーん! どう? タクト?」
リリーは仮装は魔女っ子。フリルがある橙色のミニスカートが特徴的なワンピースで腕にはハロウィンの仮装独特のカボチャを意識したシュシュがあった。更にが外が黒、内が橙色のマントと黒のとんがり帽子姿だ。
「リリーに凄く似合っているな」
子供っぽい衣装だけど、元気なリリーに実に合っていると思う。
「えへへへ~。えーっとね…タクト。ムラムラした?」
「リビナ! ちょっと先に出てこい!」
「えぇ~…ボクが先に出ると他の子たちが可哀想だよ」
どんな衣装を選んだんだ!結局順番通りイオンが登場する。
「結局猫耳を付けたんだな」
「…タクトさんが悪いんです」
どうやらリビナに何かを吹き込まれたみたいだ。俺が猫好きとかそんなところだろう。衣装はミニの青色のストラップレスドレスでおへそを見せている。しかし猫耳と尻尾のせいでセクシーというより可愛さを感じてしまう。
取り敢えず頭を撫でてみるとどうやら俺がこれをするのをリビナに読まれたからイオンはこの服装にしたみたいだ。やってくれる。
次のセチアはイオンが言っていたセクシーなロングドレスを着た魔女衣装だ。とんがり帽子もかぶっていて、マントは外にジャックオランタンが描かれているデザインとなっている。
「エルフはこういう衣装も似合うんだな」
「元々私たちは魔法使いですからね。イオンお姉様より似合ってしまうんです」
「何か言いましたか? セチア」
「はいはい。喧嘩しない」
次は恋火だ。しかし中々出て来ない。恋火がこういう時はかなりやばい衣装が来ると経験で知っている。そしてその予想は的中する。
「が、頑張って見ました!」
ミニスカートに胸を辛うじて隠している服装で登場した。色は明るい紫色を基準にしており、とんがり帽子と短めのマントでまとめている。色は恋火としては珍しい色だが、非常に似合っている。
「セクシーではあるんだが、恋火の元気の良さが勝っている感じがするな」
「あぁ~。それ、分かります。ちょっとはしゃいでいる感じがしますよね」
「はしゃいでなんていないです!」
そうは言ってもやっぱりセクシーさは感じ辛い。恋火のセクシーな大人の女性の道はかなり遠そうだ。次はイクスが登場する。
「にゃー」
スクール水着に猫耳と尻尾を付けた黒猫衣装だった。
「…イクス?」
「マスターの心拍数の増加を確認。わたしの勝利です」
「あのな…そもそもそれは仮装なのか?」
「仮装衣装の中にちゃんとありました」
運営は一体どういう意図があって用意したのか物凄く聞きたいな。
「因みに豹の衣装もありましたが、イオンに断られてしまいました。すみません。マスター」
「なんでわざわざ言うんですか!」
「何故謝るんだ! イクス!」
次はノワの登場だ。
「…ん」
「おぉ~! 似合っているな」
ノワは宣言通りカボチャパンツの魔女姿で登場した。橙色と黒色の柄のハイソックスが非常に似合っていた。いつもロングスカートだから新鮮だな。するとノワがもじもじし出すと先制攻撃を喰らった。
「…あんまりみないで…にぃ…恥ずかしい」
「「「「それは反則!」」」」
まだ出てきていないリビナたちまで声を上げる程の破壊力があった。俺もこの発言に固まってしまう程だ。気を取り直して次はリビナだ。
「あの後に出るのは凄く嫌なんだけど…仕方ないか。じゃーん!」
リビナの仮装はミイラ男というかこの場合はミイラ女か。衣装としては包帯を巻いただけでわざとしっかり巻いていないところはリビナのこだわりなのだろうか?
「それも仮装衣装にあったのか?」
「そうだよ? ってタクトにあまり効果がないね。結構攻めていると思うんだけど?」
「男でミイラする人が結構いるからな。因みに片目を隠して俺の封印された右目が疼く! とかよく言うな」
「格好いいのじゃ!」
セフォネが反応してしまった。余計な知識を与えてしまったようだ。次はリアンの仮装を見る。
「ど、どうでしょうか? 先輩」
リアンの仮装は妖精。ただし服装がハロウィンの衣装となっており、新鮮さがあった。
「おぉ! こんなのもあるのか! それにリアンに似合っているな~。可愛い可愛い」
「そうですか…良かったです。かなり賭けでした」
ルーナで見ているからな。次は和狐の仮装は予想外だった。
「どうどすか? タクトはん?」
「それはマッチ売りの少女の仮装か?」
多少ハロウィン要素が加わっているがたぶん間違いないと思う。当然和狐はそんなこと知らずに選んでいる。
「この仮装がうちに合っている気がしたんどす。変どすか?」
「いや、似合っているよ」
次のブランはノワよりインパクトがある意味あった。
「うぅ…なぜ私がこんな服を…」
「なぜナースの服装があるんだ?」
「知りません。アリナと着たい服が被ってしまい、じゃんけんで負けてしまいました」
それでナース服になったんだ。因みに赤の十時が帽子や服に書かれているデザインで白のストッキングをしていた。運営のこだわりを感じるな。普通のナースはこんな服装していないと思う。
まさかこの目で白衣の天使を見る日が来るとはな。これもゲームならではの経験だ。次のセフォネは予想外で悪魔の仮装だった。ただし服装は真っ赤なドレスにハロウィンのマントを着ている。どうしてもマントは着たかったんだろうな。
「どうして悪魔の衣装を選んだんだ?」
「タクトは尻尾が好きだからじゃ! 妾の悪魔の尻尾はどうじゃ?」
「あぁ~…確かに新鮮だな。それじゃあ、早速撫でてみるか」
「来るのじゃ! ぬあぁぁ~…なんじゃこれはぁぁぁ~…」
セフォネが床に倒れ込む。どうやら仮装なのに感触があるんだな。これも運営の変なこだわりだな。
「みなはいつもこれを味わっていたのか?」
「「「「うん」」」」
「ずるい…ぞ…」
セフォネが完全に沈黙したところで次に登場したのはファリーダは婦人警官の仮装だった。これも詳しくないけど、ミニスカートでガーターソックスの婦人警官はいないと思う。婦人警官の服装も日本の物ではないな。たぶんアメリカだろう。
「どう? タクト? 中々セクシーだと思うのだけど」
「セクシーにしているんだろう?」
「否定はしないわ。胸を出さないと苦しいのよ。この服装」
「だったら、小さくなればいいんです。あんなもの戦闘には邪魔なだけ」
イオンのぼやきについてはスルーしよう。次はユウェルも予想外だった。
「がおー! どうだ? タク?」
「狼男…いや、ユウェルの場合は狼女か。そのグローブや靴はどうしたんだ?」
「セットで付いていたんだぞ!」
狼の手足を意識した動物グローブと動物シューズ。服まで狼の毛皮で作られているかなり本格的な仮装だ。最初の頃のウルフマンとは天と地の差がある可愛さがあった。次のアリナは物語シリーズの仮装だ。
「じゃーんなの!」
「おぉ! 滅茶苦茶似合っているな! 不思議の国のアリスか!」
アリナは水色のエプロンドレス姿で登場した。それがアリナに滅茶苦茶似合っていた。
「ふっふっふー。アリナもそう思って選んだの! ただ心配なことはこれで戦闘をすることなの」
それを言うならみんながそうなってしまうんだけどな。まぁ、不思議の国のアリスの衣装で魔法を使うならまだしも短剣を雷速で放つのはシュールかも知れない。最後に燎刃だ。
「全然自信がないのですが…どうですか? タクト殿?」
燎刃の衣装はノワと似ていた。違いはカボチャパンツがミニスカートになっているところだ。
「滅茶苦茶可愛いじゃないか! もしかしてノワが手伝って上げたのか?」
「…ん。みんなにドレスを押し付けられて困っていたから」
確かに燎刃はドレスを着ていない。必要かも知れないけど、無理矢理着せるのは間違っていると思う。ここは注意しておいた。それにしても本当にノワは面倒臭がりなのに仲間を大切に思っているんだよな。
これでリリーたちの仮装は終わり、俺の仮装に移る。
「アァアア~!」
「「「「きゃあああ!?」」」」
ゾンビの仮装をしたら、滅茶苦茶怒られた。お店の女の子にも止められたんだが、仮装するなら一度やって見たかったんだよね。ここでは現実のお金は使わないんだしね。その後フランケンシュタイン、ピエロ、骸骨、幽霊、死神の果てに結局シルクハット姿の紳士ヴァンパイアの仮装となった。
「なんか普通だな」
「「「「普通が一番!」」」」
リリーたちの反応が面白くて悪ノリしてしまった。流石にゾンビや頭にねじが刺さっているフランケンシュタイン、普通のピエロはリリーたちには衝撃が大きかったな。
仮装が終わった俺たちは皆に会うと男性プレイヤーたちの第一声は同じだった。
「「「「グッジョブ!」」」」
リリーたちの仮装に対しての物だけど、これに対してリリーたちの仮装を見せたくないと思ってしまう。自分の気持ちの変化に驚きつつ、時間までに仮装での戦闘になれるためにカボチャ集めをすることにした。
そこで色々なコスプレ衣装で戦う戦場はカオスだと思い知った。そしてイベントが動くであろう二十一時前に全員が広場に集合した。




