#957 スカアハVSオイフェ
俺たちは夕飯を食べ終え、約束の時間にウィザードオーブ城前に集結する。全員が料理を食べながら、作戦と陣形の最終確認した。そして俺は装備の準備を整い、俺が先頭となって、城に入ると早速敵が城の外に現れる。
ベリアルの紋章を付けた仮面の悪魔だ。更にエルフの森を襲った悪魔たちにソドムとゴモラがそれぞれ四体ずつ現れる。当然その中にはブラスさんの姿もある。この奇襲には後ろを警戒していたケーゴが守った。
「おいおい…数多すぎだぞ」
「ソドムとゴモラが四体もいるなんて大歓迎だね」
「町を守る気がないわね。思いっきり建物を壊しているわ」
しかしこれぐらいは予想の範囲内だ。ここで俺たちは城攻略組の背後からの奇襲を防ぐために部隊を分ける。
「あ奴らはわしらの敵じゃ。みな、良いな?」
「「「「はい!」」」」
まずはエルフたち。森を燃やした敵が現れたんだ。しょうがないだろう。更にガルーさんがぼやく。
「姫さんと一緒にいると思ったら、何やってやがるんだ…ま、ブラスがここに来たならあいつらの相手は俺たちだよな」
「お願いしますね。ガルー」
「はい。シルフィ姫様も姫さんのこと、よろしくお願いします」
「えぇ。任せてください」
ガルーさんたち、フリーティアの騎士団にアウラさんも加わる。ネフィさんは目的があるので、ここには不参加だ。
「我々もここを守ろう。安心して戦ってくるといい」
「えぇ。あなたたちの勝利を信じていますよ」
シグルドさんとワルキューレたちも加わる。
プレイヤーたちからはベリアルを相手にしないメルたちとウィザードオーブのプレイヤーたち、マッカレルオンの活躍の場を求めていたサバ缶さんたち、ノアズ・スクナに乗っている与一さんたちとシャローさんたち、ルインさんを除く生産職が参戦する。
俺からはグレイたちにこの戦いの参加をお願いした。そしてセチアが俺たちから離れる。
「私はこちらに参加します。こちらのほうが向いていると思いますから。ルーナたちはタクト様について行ってあげてください」
「「「「はい!」」」」
セチアは本当に自分の役割を理解している。ベリアルと戦いたい気持ちを我慢させてしまっているのは俺の不徳の致すところだな。これが終わったら、宝石の弓矢のことや色々話し合うことに決めた。
「…わかった。気を付けろよ。セチア」
「ん。思いっきり暴れるので、大丈夫です。皆さん、タクト様をよろしくお願いしますよ」
「「「「任せて!」」」」
俺たちが城の中へ進んでいくとブラスさんたちが襲い掛かって来た。
「封鎖!」
クリュスが作った透明の壁に激突し、ガルーさんにブラスさんの足を使うと力任せに地面に叩き落とした。
「残念だけどここを通りたかったら、あたしを倒してからにしてもらうわよ」
「ったく。世話焼かせやって…面倒を起こすのは姫さんたちだけにしろよ」
「ガルー…私を殺し」
「そうだな。ま、取り敢えず動けなくなるまで殴り続けてやるよ!」
そして外の部隊の戦いが始まった。一斉に妖精の輪と大精霊召喚を使う中、グレイたちはメルたちを乗せて、ソドムとゴモラに分かれて向かい、ヒクスたちは魔炎の戦車を狙う。
一か所では猛吹雪が発生し、また別の場所では雷が降り注ぐ。神威解放を使わずとも本気のグレイたちは天候を変える。今まで我慢してきた分を晴らす方にグレイたちは暴れ回るのだった。
一方でガルーさんとブラスさんの戦闘はガルーさんがすぐに戦い方を変えることになった。殴ると本人は痛がるが生命力は回復するというヘンテコな状況が発生したせいだ。
「ベリアルの力か! 気持ち悪いんだよ!」
攻撃を受けてもまるで操り人形のように向かってくる悪魔たちにクロウさんたちが切り札を出す。それは悪魔を閉じ込めるために作られたミスリルと銀の合金の巨大な檻だった。
そして動けなくなった元フリーティアの騎士たちを生産職たちが次々縄や鎖で拘束すると檻の中に放り込んでいく。
「おら! 取り敢えず、この中に入ってろ!」
ガルーさんもなんとかブラスさんを檻の中に放り込むことに成功する。しかし当然大人しくしているはずがない。そこでハルさんがお手製の眠り玉を使用し、檻の中にいる者を眠らせる。後はこの檻をテレポーテーションでフリーティアに送り、遮断結界に閉じ込めるだけだ。
その頃、俺たちは城の中へと進んでいくと一階にあるホールで奇襲を受ける。全員が対処すると二階へと続く階段の前にオイフェと影の国の勇士たちが現れた。
「へ。ようやく来たかよ」
クーフーリンが前に出るとクルージーンとゲイボルグを構える。更にレイジさんたちが参戦する。それを見たオイフェが言う。
「あなたたちをここから先へは行かせないわ」
「いいや。通らせて貰うぞ。オイフェ」
「姉さん…もうわかっているんでしょう? 私たちは絶対的な力を求めて異星の悪魔に魂を売った。もう助からないって」
「それはどうだろうな? 思い込むが激しいのがお前の悪い癖だ。助からないと思ったなら、助かる方法を考えるのが人間だろうに」
俺はスカアハ師匠の様子に確信する。どうやら研究材料を渡した成果があったみたいだ。するとここには残らない全員が一瞬で二階に転移した。これが影転移か。それを見たオイフェが俺にゲイボルグを向けて来るがスカアハ師匠が止めてくれた。
「お前の狙いは私だろう?」
二人が距離を取る。
「悪いがここから先へは誰も通さん。いけ!」
「いくぞ!」
俺たちは先へと進み、二人は槍を構えてぶつかり合うとそれを合図にクーフーリンたちの戦闘が始まった。
二階を走っている俺たちにディアドラ姫が異変を伝える。
「どういうことじゃ? 道が変じゃぞ!」
「空間が歪んでいるんでしょう。恐らくはベリアルの仕業でしょうね」
「これだと何処が三階に続く道か分からんな。手あたり次第、探すしかないか」
ネフィさんとノイシュさんの言葉に全員が頷き、三階への道を探る。当然ただで探させてくれるはずがなく、俺たちが廊下を走っていると奇襲ばかりを受ける。
グリード・ポートレートLv45
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
グリード・ポットLv45
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
飾られている肖像画や壺から仮面の悪魔が出て来て、襲撃をしてきたのだ。どうやら捕まり、肖像画の中や壺の中に吸い込まれるとこの悪魔を倒さない限り、出れなくなるらしい。
「「「「うざったい!」」」」
「「「「邪魔!」」」」
「「「「いい加減にしろ!」」」」
高そうな肖像画や壺を壊しまくる俺たちだ。すると宝箱が沢山ある財宝部屋を発見する。
グリード・ボックスLv50
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
罠だと分かっていても、手を出してしまうのがゲーマーの性らしい。こいつはどうやら封鎖を持っており、宝箱欲しさに部屋に入ったプレイヤーたちが出れなくなってしまった。入ろうとしていたユウェルが汗を拭う。
「危なかったぞ…」
「リリーじゃないんですから、ユウェルはもっと警戒してください」
「わかった!」
「なんでわかるの!? ユウェルちゃん! それにイオンちゃんもいつもリリーばかり名前を上げないで!」
まぁ、リリーの主張はよくわかる。しかしイオンにはその理由があった。
「え? だって、リリーは考えなく突撃する筆頭じゃないですか」
「そんなことないよ! リリーは動かなかったもん!」
「…それは興味が無かっただけ。中身がお肉と聞いたら、絶対に入っている」
「う…そ、それは…」
ノワの指摘に反論出来ないリリーである。そんな会話をしながら、部屋を開けては進んでいくと突然城の外になっている罠まであった。これに引っかかったのはアーレイだった。
「いぃ!? っとと! セーフ!」
「…なぜかしら? 今、無性にアーレイの背中を押したくなったんだけど」
「おい!」
「そんなことを言っちゃ、ダメだよ。ミランダちゃん」
ここでアーレイが外に何かを見つける。
「なぁ? この城に浮いている岩場なんてあったか?」
俺たちが確認すると確かに外に岩が浮いていた。それを見たシルフィ姫様が言う。
「空間を捻じ曲げるどころか自分の世界を作っちゃってますね…」
「そんなことが出来るんですか?」
「上級の悪魔なら作れる者がいますね。ただこの世界に小規模とはいえ、自分の世界を作ることが出来る悪魔が存在することは知りませんでした」
つまり俺たちはベリアルの世界で戦うことになる。恐らく何かしらの影響は受けるだろう。対策を話し合いながら進んでいくと階段の前にサラ姫様がいた。
「サラ!」
「罠です! シルフィ姫様!」
俺がシルフィ姫様を止めると階段が途中で消える。幻術トラップだ。
「あ、危なかったです。ありがとうございます。タクトさ」
シルフィ姫様のお礼の最中にサラ姫様が斬りかかって来る。その攻撃を止めた俺は確信する。
「神瞳や識別を騙せても、そんなんじゃバレバレだな!」
俺はサラ姫様の剣を弾き、斬り裂くと敵の正体が判明する。
ベリアルゲンガー?
? ? ?
ベリアル配下のドッペルゲンガーと言ったところか。俺がベリアルゲンガーに止めを刺すと階段近くの扉が一斉に開いて、沢山の俺たちが向かって来た。不味い!乱戦狙いか!
「何これ!? タクトが何人もいるよ!?」
「タクトお兄ちゃんだけじゃないです! あたしたちまで!?」
「全部ベリアルゲンガーか? しかし甘いな!」
鉄心さんやアーレイたちが攻撃を加えると敵は普通の悪魔であっさり消し飛ぶ。解体するとキルケーの変身薬が落ちた。
「そういえばこいつらに奪われたんだったな」
「こんな使い方で助かったわね」
トリスタンさんの言葉に全員が頷く。アイリッシュ村での滞在中や部隊に紛れ込まれていたら、非常に厄介だった。
俺たちは階段を上がると途中で壁がなくなっている廊下を見つけて動きを止める。間違いない。ここにベリアルがいる。するとご丁寧にベリアルが声を掛けて来た。
「隠れてないで出て来いよ。バレバレだぜ?」
鉄心さんたちとシルフィ姫様、ネフィさんが武器を構えて出ていくとどうやら壁がないところはそのまま部屋というか決闘場になっているようだ。
「サラ!」
「サラ姫様になんてことを…」
サラ姫様は岩場にある十字架に貼り付けにされていた。しかしベリアルの感心はあくまで俺にあるようだ。
「また焦らしプレイか? さっさと出て来いよ。お姫様もお待ちかねだぜ」
俺たちはディアドラ姫とノイシュさんを連れて出ていくが部屋には目をくれずに先へと歩き出す。俺たちの相手はあくまでラスボスだ。こいつじゃない。
「…へ。相変わらず舐めた態度だな。折角俺様がコーディネートしてやったって言うのによ!」
「う…あぁあああああ!」
「サラ!?」
貼り付けにされたサラ姫様が紫色の炎に包まれると悲鳴を上げる。それを見た全員が飛び出すが体が重くなる。
「これって…」
「重力!?」
結果見ていることしか出来ず、炎が収まると胸に大きな目玉がある紫色の鎧を纏ったサラ姫様が現れる。手には大きな目玉がデザインされている大剣を持っていた。
アーレイたちが言っていた闇堕ち大正解か。しかし正解したのにアーレイを始め男性プレイヤーたちは固まっている。するとベリアルが彼らに言う。
「エッチな衣装でも想像していたか? ざ~んね~んでした~。アハハハハハ!」
「「「「殺す!」」」」
あぁ…そういえば闇堕ちしたお姫様はエッチな衣装を着るのが決まりだとか熱弁をしていたな。期待を裏切られたアーレイたちが戦闘を始めようとする中、俺たちは歩き続ける。すると堕天使の翼を生やしたサラ姫様が襲い掛かって来た。
「私を無視するな!」
「させません!」
シルフィ姫様が杖でサラ姫様の魔剣の攻撃を止めた。
「あなたの相手は私です!」
「く…! 邪魔をするな! この泥棒猫が!」
「えぇええ!? それって私の事きゃ!?」
シルフィ姫様がまた杖で攻撃を受けるとサラ姫様の蹴りでぶっ飛ばされる。そして俺に斬りかかって来ようした瞬間、ファリーダの拳でサラ姫様はぶっ飛ばされた。そしてドラゴニュート以外の全員が俺たちを守るように立ち塞がる。
「タクトの邪魔はさせないわ」
「あたしたちが相手です! サラ姫様!」
「く! 待て!」
俺を追おうとするサラ姫様にイクスが容赦なく狙撃する。しかしサラ姫様は魔剣で防いでいた。
「く…はぁああ!」
「お返しです!」
再び飛び出そうとしたサラ姫様にシルフィ姫様が杖で殴って、吹っ飛ばした。すると今度はベリアルが俺に向かってくるとブリューナクを装備したブランがベリアルを止めた。
「おいおい。物騒な槍を持っているじゃねーか」
「あなたのような悪魔を我が主に近づけはさせません!」
「ならやってみ…おっと!」
ベリアルが飛び出そうとするとリビナの蛇がベリアルに襲い掛かった。
「てめぇも俺様の邪魔をするのか?」
「まぁね。タクトはボクのものなんだよ。悪魔ならこの意味が分かるよね?」
「手を出すなってことか…ははは! やなこった!」
ベリアルがリビナに襲い掛かろうとするとベリアルが殴り飛ばされる。エレメントバーストを使ったルークだ。
その間に俺たちは完全に部屋を通り過ぎ、歩き続けているとディアドラ姫たちがよく知る階段を発見する。
「この階段を登った先に玉座がある大広間の部屋があるはずじゃ」
「分かりました。準備はいいですか?」
全員に確認すると全員が頷く。そして俺たちは遂にウィザードオーブ王と対峙することになった。
俺たちが進んでいる間に一階では激闘が繰り広がれていた。槍使いたちの戦いだ。ホールの壁だけではなく、天井まで足場に使い、勢いよく槍をぶつけ合う。
それだけでなく槍の攻撃をフェイントにお互いに蹴り技やスキルを使う。そんな中、やはりクーフーリンが圧倒的な強さを誇っていた。というのもクルージーンを持っているクーフーリンが強すぎと言っていい。
「馬鹿な!? なんだ!? こいつ!?」
「こんなにもパワーは無かったはずだぞ!」
「そいつは違うな! 元々この筋力だったんだよ!」
ゲイボルグを使ったクーフーリンの筋力しか知らない彼らにとって、クルージーンの攻撃は全く別の域の攻撃に感じていた。因みにクーフーリンにも巨人の加護が与えられているから元々この筋力発言は誤りである。
「くぅうう! 馬鹿力の狂犬が! しまっ」
「ゲイボルグ!」
接近戦で圧倒された影の国の勇士が距離を取るとクーフーリンはゲイボルグが投げた。はっきり言って現在のクーフーリンには隙が全く無い。
影の国の勇士は危なくなったら、影潜伏で逃げて来るのだが、ゲイボルグにその戦術は通用しない。その結果、次々影の国の勇士が倒される。すると当然敵は焦って来る。
「よそ見なんて余裕やな! 英雄技! トロイア・プライド!」
レイジさんの投槍が轟音と共に投げられると射線上にいた敵が木っ端微塵になり、城の壁を大きく破壊し、町を破壊した。
「…いや、威力ありすぎやろ。こんなん聞いとらへんで。ヘクトール」
レイジさんが使ったのはトロイア戦争でトロイア勢最強の戦士と称される大英雄ヘクトールの投槍技だ。ヘクトールはデュランダルの持ち主として有名だが、もう一つ有名な話がある。
それがアイアースとの一騎打ちだ。この勝負でヘクトールは槍の投擲でアイアースの大盾に付けてあった七枚の皮を破壊し、惜しくも大盾の破壊には失敗している。その攻撃を再現した技だ。ここまでの破壊力があることはレイジさんも予想外だった。
そんな破壊の中でもスカアハ師匠とオイフェの戦闘は続いている。ただこちらの戦闘は他とは違っていた。激しくぶつかり合うのではなく、まるで演武をしているかのような戦闘を繰り返している。
刃だけでなく、槍全体を使った攻撃にホールの階段の手摺という足場の悪い場所でも二人は槍で攻撃し合う。
しかし不利なのはオイフェだ。何せ巨人の加護に加えてゼノ・ゲイボルグは今のオイフェにとって相性最悪の槍となっている。よって、投槍だけはさせまいと必死にスカアハ師匠との距離を潰してきた。
それを見たスカアハ師匠は距離を取ろうとする。しかし投槍の態勢にならず地面や壁に手を付く。スカアハ師匠のほどの達人でこれはあり得ない行動だった。
「ルーンを仕込んでも無駄だ!」
オイフェはすぐにスカアハ師匠の狙いに気が付き、スカアハ師匠が仕込んだルーンを破壊する。
「勉強も欠かしていなかったようだな。オイフェ」
「当たり前だ! 私を馬鹿にするな!」
「褒めているんだがな…」
二人がホール中を走り回り、攻防を続けているとスカアハ師匠の準備が整い、オイフェに仕掛けた。
「封印魔術! ゼノ・ルイン・サークル!」
「ぐ!? 何!? この封印魔術!? いつの間に書いたのよ!」
「書いたのではなく、歩いたのだ。これは妖精の輪を参考に考えた封印魔術でな。お前たちが契約した悪魔の力を封じるためだけに考えた術だ」
スカアハ師匠は最初からずっとこの封印魔術の魔方陣を描くためにホール中を歩き続けた。ゼノ・ゲイボルグを投げられたくはないオイフェの心理とルーン魔術を囮にして、見事にオイフェを騙して見せた。
するとオイフェとまだ戦っていた影の国の勇士たちのステータスが減少。いや元に戻る。この瞬間、勝敗は決した。ただでさえ押されていた彼らに最早勝機は見出せないだろう。するとオイフェが言う。
「これで救ったつもり? 甘いわね。姉さん。私たちは体に」
「知っているとも。私を誰だと思っているんだ? お前の姉だぞ」
スカアハ師匠が飛び上がるとゼノ・ゲイボルグを構える。
「さぁ! タクトのゲイボルグよ! 今こそその力を解き放て! 伝説解放! 魔槍技! スカー・ゼノ・ゲイボルグ!」
スカアハ師匠のオリジナル技が放たれる。三十の鏃となって降り注ぐゼノ・ゲイボルグは正確にオイフェと影の国の勇士たちを貫いたかのように見えた。
「い、痛くねぇ…?」
「確かにゲイボルグで」
「一体何が起き…え?」
オイフェが背後の地面を見るとそこにはゼノ・ゲイボルグに貫かれた異星の存在のコアがあった。着地したスカアハ師匠が答える。
「このゼノ・ゲイボルグは異星の存在の心臓を正確に貫く槍だ。その為、お前たちの体の中にあるそのコアをお前たちの心臓より優先して貫く。ただ体を傷つけるとお前たちを即死させてしまうのが難点でな。そこでゼノ・ゲイボルグの鏃を影転移でお前たちのコアの所まで運び、貫いた後に影転移で鏃と共に外に出させて貰った」
体内は血液の赤色に代表されるように非常にカラフルとなっている。そして色が存在すると言うことはそこには必ず影が発生するのが道理。だからこそ可能にした技だった。
「そんなことが可能なの?」
オイフェは信じられない様子だ。そのオイフェにスカアハ師匠が話しかける。
「この技を考えるのに苦労したんだぞ。馬鹿者」
「姉さん…やっぱり私より」
「大馬鹿者!」
「いた!? なんで叩く…姉さん?」
スカアハ師匠はオイフェを抱きしめる。
「私が影の国を去ったのはお前がいずれ私を超える武芸者になると確信したからだ。お前は私と共に武芸を磨いた。しかし私より早い年で武芸も魔術を習い出したお前に私が勝てる道理がない」
「それで影の国から出て行ったの?」
「あぁ。それにあのまま私が影の国にいればお前の才能を潰してしまうと思ったからだ。お前はいつも私の真似ばかりしていたからな」
「う…」
これは姉妹あるあるなのかも知れない。すると真実を知ったオイフェは言う。
「そうだったんだ。馬鹿だなぁ…私。姉さん、私を殺して」
「それは出来ん」
「どうせ死ぬわ。私たちはそれだけの事をしたんだから」
「それを決めるのはお前たちではない。罪を償う方法が死ぬことだけとは思わぬことだ。それに」
スカアハ師匠がゼノ・ゲイボルグを元に戻して言う。
「お前たちを助けるために私の我儘を聞いてくれた弟子に顔向け出来ん」
「ふふ。姉さんらしい」
「それでいいな? クーフーリン」
「あぁ。そんじゃあ、タクトの奴を助けに向かうとするか」
新たにオイフェたちを加えて、レイジさんたちは上を目指した。




