プロローグ
プルチックの感情の輪というのを知っているだろうか?
これは人間の感情とは八つの基本的な感情とその基本的な感情を二つ組み合わせてできているというものだ。
八つの基本的感情とは喜び、悲しみ、信頼、嫌悪、恐れ、怒り、驚き、期待だ。
そして組み合わせとは例えば喜びと信頼から生まれるのが愛、驚きと悲しみで拒絶などがある。
寒い冬の日、何もない漆黒の世界で無数の感情が誕生した。しかし彼らは感情というものを知らない。知っているのは感情という言葉と意味だけだ。
故に彼らは感情の説明をすることは出来ても、それを感じることが出来ず、また理解しようとも思わなかった。
そんな世界にたくさんの神様が現れる。神様は彼らに感情というものを教えた。そして彼らは知性というものを手に入れた。
これがとある世界の創世神話だ。
創世神話……それは世界の始まりを告げる物語。世界各地で様々な創世神話がある。
それは異世界だろうとゲームの世界だろうと変わることはない。
私達は何も知らないことを理解した。だからこそ私達は知りたいと思うようになった。
それが私達が私達である由縁。
神様はあの日、言った。いつか大切なことを教えてくれる存在が現れる。その日が来たら、自分達で選び、その存在と共に大いなる世界に旅立ち大切なことを共に学びなさいと。
あの日以来、神様はいなくなってしまった。そして私達はその時が来るのをずっと待っている。
どれほどの時間が経過しただろうか? 待ち続けた私達は遂にその日を迎える。
あの日、私達しかいない世界で多くの感情を持った人間が現れ、私達は初めて感情を持った人間と関わった。
その後、何もない空間で私は彼を見ていた。
優しい雰囲気を纏う彼と交わりたいと私は願った。
それが全ての始まりだった。