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不器用な男


レオは剣を振るった、

フェンリルの体を守るために、少しでも矢を弾くために

レオの体にはどんどんとかすり傷がついてく

当然、フェンリルも足を引きずりながら動き回るものの

段々と傷だらけになっていく


止まることのない弓の雨


レオは何のために剣を振るっているのか分からなかった

死ぬことは間違いない では、本当に何のためなんだろうか



段々と意識が薄れていく

ふらり、と体勢を崩れてしまう


そして、そこに矢が飛んできた

もはや躱す体力すらなく、レオは少しだけ笑った


一体、死を覚悟するのは何度目だろう

でも今度こそ、本当にもうどうしようもない

なんて皮肉な話だろう 奴のせいで少しだけ期待してしまう


せめて安らかに―

一瞬で視界が闇に覆われた 

もはや痛みすらなく、温もりすら感じる

あぁ、これが死なのだろうか


「…遅くなった」


その一声で、飛びかけていた意識が鮮明になった

真っ黒になった視界は、彼に抱きしめられているからだと気づくのにそう時間はかからなかった

その温もりが彼の体温だと気づくのにそう時間はかからなかった


「なんで…」

理由は分からない でも涙が止まらなかった


「ヴォルフ様、なんの真似ですか

ボスよりの指令をご存知ないので?」


「………」

ヴォルフはまるでドラウの声が聞こえていないかのように

じっとレオだけを見ている


「邪魔をするというなら、いくらヴォルフ様といえど撃ちますよ」


「…………」


「どうやら、問答は不要のようだ

撃て!」


再び、矢の雨が降り注ぐ―かに思われた


「…なるほど 流石、ヴォルフ様だ」


茂みより、ドラウの部下たちが次々と倒れて出てくる


「しかし、無駄ですよ 既に私以外の幹部たちも集まっています」


ドラウの声を皮切りに、隠れていたたくさんの男や女が出てくる


「如何されますか? ヴォルフ様」


「…こいつを誰だと思っている」


ヴォルフは構えを崩さず、呟いた


「おかしなことを言いますね 

その娘はただの、捕虜だ」


「違う」


「…へ?」

ドラウは言葉の意味を理解などしていなかった

彼が驚いたのは、ヴォルフが既に彼の後ろにいたことである


「……覚えておけ 未熟者

娘の笑顔は、父にとって命より大事なのだ

娘の涙は、父にとって何より悲しいのだ」


ドラウの体から血が溢れる


「これほどとは…」

ドラウは仰向けに倒れた


それを見ていた幹部たちは止まる


「お前らも、私の娘を傷つけるか?」


その時のヴォルフの顔はまるで、鬼

鬼が刀を構えると、すぐにそこにいた幹部たち全員が武器を捨てた


「…帰るぞ」

ヴォルフはレオをお姫様抱っこで抱え上げた


泣きじゃくっていたレオは、なにがなんだか分かっていなかったが

その涙をフェンリルは脚を引きずりながら、優しく舐めとっていた


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