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女の嫉妬

一週間後



グランファミリー 使われていない部屋




「ヴォルフ様は一体、どうされたというのだ」


ヴォルフガング直属幹部 八雲は頭を抱えていた

口だけをおおうタイプのガスマスクを常につけている変人である

彼は前線に立つこともあるが、どちらか言えば参謀のような役割が多い

頭脳明晰な彼でも、今回のヴォルフの行動は理解できていなかった


また、グランファミリーの幹部というのは

大三凶と呼ばれる三人の大幹部直属の部下のことある

よって幹部の中にも派閥が三つあるのだ


「まぁまぁ、そのうち元に戻るわよ」


日本刀を椅子にかけている長い黒髪の女 

ヴォルフガング直属幹部 シズカは紅茶を啜る


「なんでもドクの話だと本当は女だったらしい

やはり奥方を亡くされて寂しくなったのか…?」


「え、女なの?

…そうなると奥様の影を求めている可能性は高いわね」


シズカはどこか忌々しそうだ

八雲は、正真正銘それが嫉妬であることを知っていたが、

突っ込んで追求したことは一度もなかった


「あぁ、それにドクの話だと少し顔立ちが似てるらしい」


「…そう」


シズカの顔から段々と表情が消えていく


「シズカ、やはりヴォルフ様に会いに行かねえか?」


「…私はいいわ それより一つ用事を思い出したの

少し出てくるわ」


シズカはゆっくりと確かな足取りで部屋を出ていった


「…なんで女の嫉妬はこうも恐ろしいもんかね」

八雲の独り言はマスク越しの苦い紅茶に溶けていくだけだった








「久しぶりね ドク」


「珍しいわね シズカ

怪我でもしたの?」


「いいえ、噂のお姫様でも見ようと思ってね」


シズカが部屋の中を見回すと、極太の鎖で椅子にぐるぐるに縛り付けられた少女が

こちらを見ていた


「何、見てんだよ あぁ?

やんのか ゴラ あぁ? つーか、誰だ お前」


「悪いわね ここんところ、ずっとあんな感じなのよ」


「何をしたら、あそこまで怒ったの?」


「言葉遣いを矯正しようとしたのだけど、逆効果だったみたいでね

尚更汚くなってしまったわ」


「はぁ…

あぁ、そうそう ケーキを持ってきたの」


「あら、悪いわね 今、お茶を淹れるわ」


ドクが背を向けて、お湯を沸かし始める


「私、ヴォルフ様直属の幹部 シズカって言うの

あなたは?」


「…レオだよ」


「そう」

急に抑揚のない声になったシズカは、

そのまま腰の刀の柄に手をかける


瞬間、ガラリと扉が開いて、ヴォルフが入ってきた


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