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上司と医者

「…生きてる」


目が覚めると見知らぬ天井が広がっていた

でも、それよりも何よりも、生きていることが驚きだった


「お目覚めみたいね」


声の方を見れば、そこにはメガネと白衣をつけた女医らしき人と

その隣には、明らかに見覚えのある

鷲のような鋭い目と若白髪をオールバックにまとめ上げた強面なおっさんが立っていた


「成る程、これから拷問か」


「しないわよ そんなこと 

あのねぇ、あんたらのことなんて私たち大体調べ終わってるから」


「じゃあ俺をどうするつもりだ」


「さぁね 知らないわ

そういうのは連れてきた張本人に訊きなさいよ」


「…………」

ヴォルフの顔をにらめつけるが、その表情にまるで変化はない

訝しげにこちらを睨んでいるだけである


「名前は何だ」


やっと喋ったと思ったら、短くそれだけだった


「調べ終わってんなら、知ってんだろ

レオだ レオ」


「違う 本名を訊いている」


「ねえよ そんなもん

俺は捨て子だ」


「……そうか」


「じゃあ、レオちゃん

少し来なさい」


「あ? なんだ そのレオちゃんってのは」


「誰が診てあげたと思ってんの 

分かってるわよ 良いから来なさい シャワー入れたげるわ」


「あ? なんで」


「臭いからに決まってるでしょ

じゃあ、ヴォルフ様

私たちは仲良くしとくんで、報告行ったらどうです?」


「…あぁ」


ヴォルフはそのまま部屋を出ていった

…気のせいだろうか 少しだけ名残惜しそうに見えたのは

まぁ、何はともあれチャンスだ


「そういえば名乗ってなかったわね

私の名前はスコルピ ここの医者兼研究者よ

みんなからはドクと呼ばれているわ」



明らかにこの女医は戦闘員じゃない

隙を見つけて逃げることは簡単だろう



「ダメよ」


「!?」

突然、耳元で女医が囁く


「何がだよ?」


「私はヴォルフ様ほど優しくないもの

あなたを殺してしまうわ」


「……っ…」


「さぁ、脱ぎなさい」


「まっ…!」







部屋では、ふっかふっかの立派な椅子に、小さな少女が座っていた


「…………」


「ボクは確かに殺して、と言ったはずだよ」


「違わんだろう 殺すのも、捕縛するのも」


「成る程 いや、ヴォルフがそう思ったならいいよ

その代わりさ、ヴォルフ 君が責任を持ってね

もし逃げられたりしたら、あの子の首を持ってくるまで許さないから」


「あぁ」






医務室に帰れば、すっかり綺麗になったレオが仏頂面で座っていた


「あ、ヴォルフ様

この子、意外と美人になりましたよ」


「…………」


「ひどい目にあった」


「それで、この子どうされるんですか」


「…私が預かろう」


「あら、本当にこの子 妾にでもするつもりなんですか

だとしたらやめた方がいいですよ

その子、割と貧相なんで」


ドクはレオが投げたペンを悠に受け止め、

宥めるように頭を撫でる


「……随分懐いたようだな

やはりお前が預かってくれ」


「いいですよ

私、この子のこと、割と好きなんで」


「おい、待てよ ヴォルフガング!

なんで俺を救けた なんで俺を救ける」


「………………」


「答えろよっ!」


「……ただの気まぐれだ」


ピシャリ、とそのままヴォルフは医務室を出ていった


「振られちゃったわね」


「うっせえ!」


「まずはその言葉遣いを直さないとね」


「あぁ、なんでだよ 俺はこの喋り方が…」


「可愛くないからよ」


「〜…っ! 知るかっ!」


「その短気も直さないといけなさそうね」




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