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子犬を拾うように


「よぉ、おっさん」


微かに震える手でなんとか剣を構える


「……」



「知ってるぜ その顔

まさか直に拝めるとは思ってなかったけどな」

自然と顔に流れる汗が、既にこれからの勝負の結果を物語っている



「…………」


間違いなく、今の俺では目の前の男には勝てない

死ぬのは怖い  

でも、やるしかない 今、俺の後ろでは仲間たちが逃げてる

ほんのわずかでいい 時間を稼ぐんだ


「なぁ、グランファミリー 大幹部 大三凶が一角

ヴォルフガング・エンドロール」


「………………」


奴はゆっくりと剣を鞘から抜いた

東洋の刀とかいうその獲物の刃は、まるで雲のような灰色だった


瞬間、一瞬で距離を詰めてくる

そして、刀が振り下ろされる


咄嗟に剣で受け止めるが、とても信じらないことに奴は刀を右手一本で振っていたらしく、

空いた左手に持っていた鞘で顎を下から突かれる


「がっ…!」


意識が朦朧とする

立っていることができず、剣を放して倒れてしまう


あぁ、ここまでだな

本当にわずかな時間しか稼げなかった


「…よく喋る小僧 一つ教えてといてやろう

舌が回るやつほど早く死ぬ、戦場での鉄則だ」


「はっ…最後に……、言われても……なぁ」


「最後ではない」






―仕事は済んだ


私のペットにして大型の魔獣であるフェンリルに乗って本部までの道を急ぐ


本来ならば、殺すはずだった

しかしまぁ、いいだろう 結果は同じだ


チラリと横に寝かせている青年の顔を見る

先ほど乱暴に寝かせたというのによほどぐっすり寝ているようで

ピースカと寝息すら立てている


「ドク、頼む」

本部に入るとすぐに、医務室へと青年を運ぶ

「あら、ヴォルフ様

如何されました」


医務室には、白衣を着たメガネの女が一人


「顎を強打した 具合を確認してくれ」


「はいはい、畏まりました

あ、防具脱がすの手伝ってもらえます?

ひ弱な私じゃ辛いんですよ」


「……………」

多分、彼女一人でも充分だが、まぁ無理を言っているのはこっちだ

手伝うとしよう


留め金を外し、胴の防具を取る

するとそこには、少女らしい胸の膨らみがあった


「……………」


「そんなにまじまじと見て…

ヴォルフ様、こういう子が好みなんですか?」


「……少し、黙っていろ」


ヴォルフガング・エンドロール 四十一歳 は今までの人生の中で最も

動揺していた


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