ようこそ
どんな街にも裏通りといった、雰囲気が薄暗く、何かじっとりしてそうな、そんな場所があるものだ。
普通に生活していればそんなところにはまあ入らないだろう。普通に生活していればね。
そんなところになぜ私がいるのか、それは、ある店を探しているから。
「地図だとこの辺なんだけどなぁ・・・」
ネットのホームページに載っていた地図をコピーして、それを頼りにここまで来たんだけど、よくわかんない。
入り組んでいるというのもあるんだけど、とにかくこの場所が気持ち悪い。早く出たくてあんまり探せてない。
しかもほら・・・死体まであるし・・・って、死体!!??
うっそ、ここってそんなやばい場所なの!?で、出ようこんな場所!
冷静を装ってた私でもびびるって!
と、とにかく引き返そう!
「んにゃぁにしてんだい?ねえちゃん」
「ふにゃあ!!」
突然の声に驚き跳ね上がってしまった。
「し、死体がしゃべってる!!」
「だぁれが死体だ。わしはただのじぃさんだ。」
「ただのじぃさんって・・・そんな風に見えないよ!どっちかというと地縛霊だよ!」
「・・・それは悪い冗談だよねえちゃん。」
「あ、ごめんなさい」
さすがに初対面にこれは失礼だよね。
「わしは自爆なんかしとらん」
「そっち!?じばく違いかよ!」
「ん?自縛だったか?」
「縛ってんじゃねえ!!」
初対面の人にこんな突っ込んだの初めてだよ・・・
「で、ねえちゃん何してんだいこんなところで」
「あ、そうだ」
このおじいさんなら知ってるかもしれない。どうせ帰るつもりだったし聞いてみようかな。
「ここに行きたいんですけど・・・」
地図を見せた瞬間、おじいさんの顔が一瞬むっとなったような気がした。
「・・・そこだよ」
「え?」
おじいさんが指した方向には小さな黒い扉があるだけだった。
「あ、あそこですか?」
「あぁ・・・じゃあなわしはもう行くぞ」
「え、あ、ありがとうございました!」
そう言うとおじいさんは重そうな腰を上げゆっくりと奥に消えていった。
「ほんとにここなのかなぁ・・・」
扉の前に立つと、中からすごい邪悪な何かを感じる・・・
帰りたい気持ちは大きくなるが、もうここしかない!
深呼吸をして、思いっきりドアノブを引く。
中から生ぬるい風が流れてき、全身に鳥肌が立った。
ドアの中は意外と広かった。学校の教室くらいはあるだろうか。
そんな広い空間なのにあるのは真ん中にぽつんと置かれた椅子とソファだけだった。
「す、すみませ~ん・・・」
広い空間に響き渡った私の声は反響して私に返ってくる。
するとソファからむくっと起き上がる白い影があった。
「・・・ん?お客さん?」
そう言った白い影はふらふらしながら私に近づいてくる。
よく見ると白い影に見えたのは白衣らしい。
白衣を着た男は手を私に差し出しこう言った。
「ようこそ、幽霊お悩み相談所へ」