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ランチボックス同盟  作者: ORCAT
第3章 同盟
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同盟と微笑み

「ここが白河さんの家?」


「そうだよ」


「へぇ、隣の家とそっくりの見た目なんだな」


「そっちは俺の家だよ」


「そうなんだ。だから2人は普段仲がいいんだね」


笑顔で霧島が俺に向かって言った。

普段のどの部分を見たら仲がいいって思うんだよ。


結局連れてきてしまった。実はあのあと、、、




■ ■ ■




『いや、班分けの紙くらい俺が渡すよ』


なんでわざわざ紗羅の家を教えてやらなきゃいけないんだよ。


『そうはいかないよ。自分の仕事は最後までしなきゃいけないし、白河さんには別のものも渡したいからね』


『別のもの?』


『レシピだよ。とっておきのね』




■ ■ ■




「もうレシピなんて作ってんのか、お前」


「まぁね、君には負けたくないからね」


俺らの班?霧島の方が料理の腕前は数枚上手なのは俺でもわかる。手際、包丁さばき、火加減の調整などなど。料理を家事の延長としか考えてない俺とは雲泥の差だった。


「お前の料理には敵わないだろうよ」


「それはどうだろうね」


爽やかな笑顔を俺に見せた霧島。その辺の女子高生なら一発で持っていかれそうな笑顔。悔しいがこいつがイケメンなのは、この短時間でもなんとなく分かった。顔がいいのはもちろんのこと、性格も寛大で決してがめついものではない。


紗羅もこう言う奴を好きになるんだろうか・・・


「なんか騒がしいと思ったら、周だったのね」


「悪かったな、来たのが俺で」


「な、何も言ってないじゃないの」


家のドアが急に開き、まだ少しだけだるそうな紗羅が出て来た。


「と、あれ?霧島くん?」


「僕の名前をご存知でしたか」


「うん、料理研究部で隣の席でリーダーやってるでしょ?」


「それなら話は早い」


それから霧島は事の顛末を簡単に説明した。


「そう・・・私が霧島くんの班で」


顎に手を当てて悩むそぶりを見せる紗羅。慌てて霧島が説明を重ねた。


「もちろん嫌なら、今からでも先生に説明して変えてもらえるかもしれないけど」


「ううん、大丈夫だよ。霧島くん。そこまでやってもらわなくても。頑張るね」


「よかった。こちらこそよろしくね、白河さん」


霧島が差し出す手を紗羅が握った。

俺はただその場でその光景をじっと見ているだけだった。ただ後ろ手で拳を握り締めながら。


「風邪だったのかな?白河さんは」


「うん、だいぶ治って来たんだけどね」


「そうか、じゃあこんな夕暮れの風に当たらせるのも悪いし、今日はこの辺で。レシピには是非目を通しておいてね」


「うん、後でしっかり確認しておく」


霧島は班分けの紙と茶封筒を紗羅に渡した。


「それじゃ、2人ともまたね」


「またねー」


「・・・じゃあな」


こうして霧島は去っていき、俺と紗羅が玄関先に残された。


「じゃあ俺も飯作るから家戻るよ」


「う、うん」


なんとなくこの場から早く去りたかった。多分何もかも負けてる霧島と比べられたくないから。


ん?なんで比べられたくないんだ?


「あの、周」


そんな変なことを考えている時、後ろから呼び止められた。


「え、、なんだ?」


振り返ると紗羅がなぜか少しもじもじしていた。


「あの、ご飯今日は私の部屋で食べたいから持って来てくれない、かな?」


いつものように少しの上目遣いで頼んで来た。普段は俺と紗羅と妹の恵美と一緒に飯を食べている。それでもテスト前などの大事な時は部屋にご飯を持って行く時もあった。


「なんか急ぎでやることでもあるのか?」


「え、あ、、、うん。そんなところ」


「まぁお前の場合は勉強関連だろうけどな。だいぶ遅れとってるし」


いつもの茶化し。いつもの冗談。ここで普段なら紗羅の怒声が飛び込んでくるところだ。そのはずだった。


「・・・」


しかし、紗羅はただ真剣な眼差しで考え事をしていた。


「え?ごめん。なんか言ってた?」


「あ、いや。なんでもないよ。じゃあ飯できたら家行くよ」


「うん、、よろしくね」


俺に微笑み返して、紗羅は自分の家へと戻っていった。


「なんだよ」


俺にそんな微笑み返したこと最近あったっけか。いつも俺と話しては文句を言ってくるか、怒鳴って殴ってくるか。笑顔を俺に向けるなんて久しぶりな気がした。


「ふふっ」


なぜか嬉しくなって俺も笑っていた。

今日は料理が上手くなりそうだ。そう思えた。



ーーーだけど、俺は気付くべきだった。この時のいつもと違う紗羅の心に。

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