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ランチボックス同盟  作者: ORCAT
第3章 同盟
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同盟と班わけ

「はぁ〜」


 放課後。今日はFPS部で大会の練習をしていて、活動時間も終わりに近づいていた時だった。特に先ほどの試合、ようやくこのチームでの役割なんかを掴み初めて、なかなかいい試合ができたと思う。


「どうしたんですか、玄野くん」


「あー、部長。いえ、別になにもないですけど」


「そうですか。いつもより深いため息だったので」


 ニッコリと笑いながら紙パックのジュースを飲んでいる部長。

 あー、またため息を吐いてたのか。

 いつも無自覚に吐いてるから気づかなかった。

 それに、FPS部はコンピューター室の一角の金魚鉢のような部屋を使ってるため、部員それぞれがより近くに感じる。俺のため息も余計に聞こえてしまうのだろう。


「すみません、ため息なんて吐いて」


「いいってことよ。どうせテスト前で憂鬱なんだろ?坊や」


 自動販売機で飲み物を買ってきた副部長が、俺の方をポンポンと叩いて戻ってきた。


「だから坊やはやめてくださいって、副部長。しかもテストはそこまで気にしてませんし」


「なっ!余裕こいてると痛い目あうぞ」


「経験談ですか?」


「そうそう、私も一年生の頃・・・ってコラ!」


「フフッ」


 副部長のノリツッコミがみんなの笑いを誘った。まぁ言い方悪いけど、そのいかにもギャルっぽい見た目だとあんまり勉強してなさそうだしなぁ。苦労したんだろうか。


「でもやっぱり今日は調子悪そうね、玄野」


「そうですか?南条先輩。先輩よりキルデスレート高かったですよ?」


「ぐぬっ。痛いところ付いてくるわね」


 キルデスレート。キルレなんて略されることもある。つまるところ、いかに自分は死なずに相手を倒しているかの指標である。具体的には、敵を倒した数を自分が死んだ数で割って出る数字のことを指す。この数字が高ければ高いほど一般的には強いプレイヤーだと言われている。例外もあるけどな。


「芋ってたんじゃないでしょうね?」


「いや、先輩の近くにいたの知ってますよね」


 芋る。部屋の角や丘の上、家の中などに入りじっとして動かないことをいう。芋ることで敵が入ってきてすぐを狙えたり、超遠距離からスナイプすることができる。

 この戦法のメリットは自分が死ぬ可能性が低くなること。敵に遭遇する可能性が下がるから当たり前である。つまりキルデスレートが上がりやすい。

 ただし、敵遭遇の可能性が減るということは、敵を倒しにくくなるというデメリットにもなる。


「私が言いたいのはゲームの調子じゃなくて、玄野自身の体調よ」


「俺?別に大丈夫ですよ」


「でも白河さんは風邪なんですよね」


「ええ、そうですけど」


 実は紗羅はFPS部のマネージャーになっている。運動部ほど過酷な仕事ではないので、紗羅も気軽にやれているのだろう。


「風邪が移ったりしていませんか?」


「大丈夫ですって、そんなに心配しないでくださいよ、部長」


「まぁテストも大会もあるからな。期待してるぞ、坊や」


「じゃあ今日はこの辺で終わっとこうか」


 南条先輩の言葉でその日の活動はお開きとなった。

 ほんとにこの数週間でこのチームでの連携はうまくいけている。大会の入賞も夢じゃない。


「あ、いたいた。玄野」


 それはもうカバンを背負い、コンピュータ室を後にしようとしていたときだった。

 少し低く澄んだ声の方を見ると、料理研究部の同級生の男子とドア越しに覗き込む数人の女子の姿があった。


「ん?霧島じゃん。どうしたんだよ、こんなところまで」


 霧島きりしま れい。同じ料理研究部に所属する一年生。男の俺がみても整った顔立ち。また優しい性格を兼ね備え、料理の腕前もかなりのもの。入学してからというもの一年生の間だけでなく上級生たちの女子の間でも話題となっている、いわゆる学年一のイケメン。

 料理研究部では隣の班でリーダーをして、班の女子に優しく教えている姿を何度も見ている。女子の方は霧島しか見えてないが。

 ちなみに料理研究部の一年生をまとめているのもこいつ。どれだけハイスペックなんだか。


「真美先生に頼まれてお知らせ配ってるんだよ」


「お知らせ?」


「うん。今度の学園祭で班対抗の料理対決するみたいでさ」


 またあの先生は面倒なことを。


「それの班わけの表を渡してるってわけ。はいこれ」


「わざわざありがとな。ドア越しに見てる女子も付き添いか?」


「え?」


 霧島が振り返ると覗き込んでた女子たちは「キャー」と黄色い声を上げた。


「知らないよ?」


「あ、そうなんだ」


「僕は女の子らしく謙虚で清楚な子の方が好きだからね」


 まるで後ろの女子たちは眼中にないと言っているようなセリフ。

 意外とこいつ辛辣だな。

 霧島とはクラスも班も違うためなかなか話す機会がなくて、どんなやつなのかイマイチ測りかねている。


「まぁとりあえず紙渡したから、確認しといてね」


「あ、あー」


 えっと、俺の班は。


「ん?」


「どうかした?」


「いや」


 ・・・紗羅が霧島の班に移ってる。


「これっていつもの班じゃないのか?」


「いつもの班だけど僕の班だけ人数が少なくて、玄野くんの班が人数多かったから料理の腕を考えて白河さんを僕の班に加えたよ」


「あー、そうなんだ」


「それで、白河さんは?ここの部活のマネージャーって聞いたんだけど」


「あいつ今風邪引いてんだよ」


 まぁもう治りかけだけど。


「そうなんだ。じゃあ玄野くん、白河さんの家まで案内できる?」


 あ?

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