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ランチボックス同盟  作者: ORCAT
第2章 信頼
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信頼と土産物屋

「意外と部屋広いんだな」


「ーーーん?、、、あー、そうだな」


 俺が寝ていたせいで遅れたが、無事に柳と共に今回泊まる部屋へと到着した。

 しかし、俺はやはりどうしても心の中の闇が気になって仕方がなかった。


「どうかしたか?周」


 さすがに、十何年一緒にいるだけあって俺の異変に柳も気づいていた。


「分かるか?」


「俺じゃなくてもお前が悩んでるのは分かるよ。ーーで、どうしたんだよ」


「いや、俺にもよく分からなくて」


 嘘だ。

 本当は紗羅に対して、なにかしらの悪い感情を抱いていることに、さすがの俺もこの時は気づいていた。

 だが、そのことを口にして、言葉にすることは躊躇った。

 どうしてもその理由を知ってからじゃないといけない気がした。


「そうか。まぁ、お前が悩むのも今に始まったことじゃないしな」


「うるせ」


 そんな俺の葛藤を知ってかは分からないが、柳は深く俺の悩みを聞こうとはしなかった。

 こういうところは、本当に俺としても気が楽だ。無理に心の中を覗かれるのはあまり好まない。


「さすが、万年悩み男!」


「変なあだ名つけるなって」


 悩みは常にある。それは俺の昔からの癖というか、よく柳にいじられているところだった。

 俺からしてみれば、なぜみんなそんなに悩みもなく毎日生きているのか、そっちの方が不思議だった。

 ただ、今回の悩みは長丁場になりそうだった。


「部屋に荷物置いたら一回集合するんだっけか?」


「そういえばそうだったな」


「下のホールだったよな。行こうぜ、周」


 そう言って柳は部屋を飛び出した。


「早く解決しないと、、、」




  ■ ■ ■




「・・・というわけで、君たち生徒には仲間たちとのつながりの大切さを今一度考え・・・」


 ホールのような広間に集められた俺たちは、教頭先生からのありがたいお話を聞かされていた。

 いつもとは違う環境に、生徒たちの中にはそわそわと挙動が怪しいのもちらほら見える。ただそれをいちいち注意するほど、先生たちも厳しくはないみたいだ。黙って見逃しているように思えた。


「ねぇ、周くん」


 突然隣に座っていた灰山が小声で話しかけてきた。


「え?どうした?」


「いや、その、、、」


 灰山はここでは話しづらそうに口籠ってしまった。


「後でお土産屋さんのところで会わない?」


「あー、別にいいけど・・・」


「ありがと。ちょっと心配事があって」


 小さく手を合わせて、明らかな作り笑いで俺にお礼を言った。

 灰山の様子は朝からいつもと違う印象だったから、何か深刻な相談事でもあるのかな。

 あ、ちょうどいい。時間があれば、紗羅のことを少し聞いてみよう。確か同じ部屋だったから、何かいつもと違うこととか知ってるかもしれない。


「教頭先生、ありがとうございました。それでは生徒の皆さんは一度休憩時間をとり、夕食の時間になったら、またこのホールへと集まってください」


 司会を担当しているナセがそう締めくくり、集会は幕を閉じた。




  ■ ■ ■




「それで、紗羅となにかあった?」


 集会が終わって10分ほど経った頃、俺と灰山はホテルの一階にあるお土産屋さんで話をしていた。

 なんてことはない。灰山は紗羅の異変に気付き、その原因が俺だと踏んで相談しにきたらしい。


「いや、なにかあったってほどでは・・・」


「紗羅、朝からため息しかついてないし、暗い顔しかしてないから。心配なのよ」


「そんなにか?」


「周くんって案外鈍感なのね」


「いや、そんなことは・・・」


 ない、とは言えなかった。

 朝から俺に突っかかってくるのも、いつもの馴れ合いの一つだと思っていたし。

 ただ強いて言えば、その"いつもの"馴れ合いに俺が違和感を感じているのは間違いなかった。


「ケンカでもした?」


「ケンカはしょっちゅうだし」


「じゃあケンカして、紗羅が元気無くすことは今まであったの?」


 ない。少なくとも俺が関連することでは記憶にない。

 あいつとのケンカはいつもくだらない、日常のことだったから。やれ体力がないだの。女っ気がないだの。好き嫌いするなだの。

 でも今回は、


「そうだ。灰山のことをやたら気にしてた」


「私?」


「灰山と何話した?とか、なんで手を繋いだの?とか、、、」


 紗羅は俺と灰山との距離が縮まるのが嫌だったのか?

 そんなまさか。

 でもそれ以外に理由が見当たらない。


「・・・」


 当の灰山もしばし無言で考え事をしていた。


「とりあえず、一言なにか言ってあげて?このままじゃ、紗羅がかわいそうよ」


「うん、まぁ、、、そうなんだけどさ」


「あー、もう。周くん男の子でしょ?!さっさと部屋に行って一言謝ってきなさい!」


「何謝るんだよ」


「じゃあなにか一言言って、紗羅のこと元気にしてあげて!」


 そう言いながら、灰山は俺の背中を強く押した。


「部屋は305号室だから!ほら、はやく!」


「お、おう」


 灰山の強引さに押され、俺はエレベーターに乗り込んだ。

 さて、なんて言ってあげればいいのか。

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