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ランチボックス同盟  作者: ORCAT
第2章 信頼
26/41

信頼と雷

「エレンちゃん、片付けまだぁ〜?」


 ドアの開く音とともに、シリアスな空気を壊す温かい声が聞こえてきた。

 あれから、御田と二人で特に何も話すことなく、お互い考え事にふけていた。

 御田が紗羅の家に来るのが遅いので、紗羅が迎えにきたんだろう。


「やべ。片付けんの忘れてた。御田、先に風呂入っとけ」


「え?良いのか?」


「まだ、あいつらには話したくないだろ?不審がられるとあいつら厄介だぞ?」


「お主はなんでもお見通しじゃな。では、お言葉に甘えさせてもらうかの」


 御田はそう言うと、持っていた茶碗を俺に渡し、自分のカバンを抱えて玄関へと向かっていった。

 お見通しって言っても、紗羅の声が聞こえて、慌てて目をゴシゴシとこするのを見たら誰でも気づくだろ。

 紗羅達の前では完璧なまでのフリを見せた御田だが、なぜか俺の前では素の表情が簡単に現れる。


「さてと、さっさと片付け終わらせて俺も風呂入ろ」


「玄野」


 席を立ってシンクの方に向かおうとしたら、玄関の方から御田が戻ってきた。


「どうした?忘れ物か?」


「いや、その、、、、今日はありがとうなのじゃ」


 床と俺の方を視線が行ったり来たりしながら、御田は俺に感謝の言葉を口にした。


「いいってことよ」


「で、ではまた」


 そういうと、御田はまたトコトコと玄関の方へと小走りで向かった。

 皿洗いなんかはいつもやっているが、いつもより気分良く出来そうなのは気のせいではないだろう。

 リアルでも色々片付いたんだからな。




  ■ ■ ■




「それで?その子がどうしたんだよ」


「いや、この子がまたいい子でね、、、っておい!護!黙って5飛びかよ」


「これはあなたの話はスキップってことです」


「誰が上手いこと言えと」


「ほい、8切り。革命。上がり」


「えぇっ!周、また富豪かよ」


「では、こちらも革命で上がりです」


「はぁっ!?お前ら仕組んでねえか?」


「カードシャッフルしたのお前だろ」


「うぅ、、また貧民・・・」


 皿洗いの後、俺は風呂に入り、いつも通り柳と護と俺でトランプをして遊んでいた。

 風呂に入ってからは男女別々に行動することになっている。もちろん寝るのも男女で別だ。

 と言うわけで、今回は大富豪をしながら近況報告会となった。

 まぁ、主に柳の与太話に付き合うだけだがな。今回の話題はクラスの女子。


「というより、柳は相変わらず女の子の情報を仕入れるのは早いですね」


「そりゃあね、生きがいですから」


「もっと別に何か見つけろよ、、てかサッカーどうした!サッカー」


「あんなのただモテるためにやってんだよ」


 さも当たり前だろ、と言いたそうな顔で言ってきた。

 その魂胆見え見えだから、女子に相手にされねぇんだろ。いい加減気づけよな。

 、、、というか、早く西空の気持ちに気づけよ!

 未だに柳と西空の間には何も進展がないので、裏では俺も護も本気で心配をしている。主に西空を。


「そういう周はどうなんだよ。部活で可愛い子とかいないの?」


「はぁ?部員をそんな目で見ねぇよ」


「えぇ!なんで部活入ったんだよ」


「逆にそんな理由で入るやつの方が少ねぇよ!」


 部活をなんだと思ってやがる、こいつは。

 まぁ、部活で話す女子なんて言っても、FPS部の副部長と南条先輩、あとは料理研究会でうちの班の副リーダーやってる灰山くらいか。

 まぁ、全員美人ではあるけど、、、うーん。そんな目で見たことないからな。


「じゃあ、護はどうなのさ」


「僕ですか?僕は絢音がいますから。他の女の子のことはあまり」


「出たよ、恒例の惚気。かぁー、これがリア充の余裕ですか」


 お前には超絶美人の西空がいるだろ。

 そんなことを思いながらふと護の方を見ると、俺と同じことを考えているのか、諦めた表情で柳を見ていた。


「まぁ、そんな冗談はさておき。1番聞きたいのはエレンちゃんの事だよ」


「そうですね。そのことは僕も気になっていました」


「ん?あー、そうか」


 俺と御田をわざわざ2人きりにしてくれたから、こいつらには何か言っておくべきか。2人は何も聞いてないんだからな。

 とはいうものの、こんな話を本人以外が言うことじゃないしな。


「んーと、まぁ詳しくはそのうち本人からされるだろうし、俺も詳しいところまでは聞いてない」


「でも、周の予想通りだったんだろ?」


「まぁな」


 柳はその人付き合いのうまさから、護は俺からの[手伝って欲しい]と言うメールと御田を連れてきたことから、おそらく俺と同じく『御田がイジメを受けた過去があり、進んで一人になろうとしている』ということが分かっていたんだろう。


「やっぱりそうだったんだ。なら、そのうち本人から聞いてみるよ」


「僕はおそらく絢音から聞くことになるでしょうね」


「悪いな。お前らには色々迷惑かけて」


 俺のことを救ってくれたメンバーにまた頼ることになるのは本当に忍びない。しかし毎度思うが、これほどまでに信頼できるやつもそこまでいないのも事実だ。

 何も返すものがないのが俺としては常に悩みのタネになっている。


「いいってことよ。俺も女の子と仲良くできるし」


「僕は人助けができればそれでいいんですよ」


 しかし2人はいつもそんなことを気にせず手を貸してくれる。2人だけじゃない。紗羅も月岡も西空も、皆。


「ま、元気になったんなら大丈夫でしょ」


「そうだな。あとはクラスに馴染めりゃいいんだけどね」


「そこはこの柳様に任せなさい」


 胸を叩いて任せろアピールをする柳。こいつに女子のことを任せてしくじることなんて、万に一つも考えられないけど、やり過ぎの方が怖い。


「適度によろしくな。あと護、月岡にも少し言っておいてくれないか?」


「いいですよ。と言うよりむしろ、絢音の方から言いだしてきそうですけどね」


 あの誰とでもすぐに打ち解け、仲間にしてしまう魔法使いのような月岡なら、何も頼んでいないのに『私にまかせて!』なんて言ってきそうだな。

 今頃女子たちも楽しい会話を楽しんでいることだろう。


 ザザーーー


 その時、突然屋根や道路を叩きつける音が聞こえてきた。強い雨が降ってきたようだ。


「うわ、雨かよ」


 柳が天気を確認するためリビングの窓に向かい、少しカーテンを開けた。暗くて見辛いが、窓には水滴がたくさん付いており、空は真っ黒な雲で広く覆われていた。


「強いですね。天気予報では雨の予報ではなかったんですが」


「なんか警報かなり出てんな」


 テレビをつけると、どのチャンネルでも警報音とともに画面上部に気象情報が速報で流れていた。その中には雷警報も入っていた。


「うわ、やべ。雷もあんのか。悪い。俺パソコン落としてくる」


「あー、ここで雷落ちたらまずいもんね」


「いってらっしゃい」


 俺は急いで自分の部屋へと走り、パソコンの電源を落とした。前に一度雷がうちに落ちて、マイパソコンがお釈迦になってしまったことがある。

 パソコンの電源が消えたことを確認して、念のためコンセントも抜いておいた。


「よし、まぁ雷なんてそうそう落ちてこないけど・・・」


 ピカッ!


 そんなことを言ったそばから雷が落ちた。

 数秒後


 ゴロゴロゴロ、、、


 まだ音は小さいが雷の音が聞こえてきた。

 雷は光ってから音が聞こえるまでの時間差で距離が大体わかる。

 そんな豆知識を思い出していたら、ポケットに入ったスマホが揺れていた。

 取り出して見ると紗羅からの電話だった。


「もしも・・・」


「ねぇ、周!」


「なんだよ、どうかした・・・」


「あ、あ、あんた今日は大人数で寝たいわよね?」


 紗羅が俺の言葉の上から被せるように話しかけてくる。えらく慌てているようだけど。

 まさか、な。


「は?どういう意味だよ、それ」


「た、たまには女の子とも寝たいわよねってこと!」


「おいおい、お泊まりの時は男女別だろ。男三人でも俺としては十分多い・・・」


「た、たまにはいいじゃない!」


 この辺になってくると、紗羅が何を言いたいかなんて分かってるが、日頃から正直じゃないことと暴力を振るう恨みだ。


 ーーー恐怖するがよい。


 ちょうどそんなタイミングで夜の帳に一瞬だけ真っ白な光が落ちた。


 ゴロゴロ


「きゃあ」


 電話越しに紗羅が小さな悲鳴をあげた。


「はぁ〜、正直に言うと?」


「か、か、雷が怖くて眠れません」


「そんなことだろうと思ったよ。でも他にも人いるだろ」


「その、、、みんなダメみたい」


 なんで4人も女子がいて全員雷がダメなんだよ。

 電話をしながらリビングに戻ると、柳も護も電話をしていた。

 あー、これは全員くるな。




  ■ ■ ■




「「「「きゃあ!」」」」


 カーテン越しにでも分かる真っ白な光と轟音とともに、女子4人が小さくない悲鳴をあげた。

 護の腕には月岡が、柳の腕には西空がしがみついていた。

 そして、


「あのさ、お前ら寝る気あんのか?」


「だだだ、だって、手が離れないんだもん」


「そそそ、そなたこそわらわと白河の間に、は、は、入れば良いではないか」


「年頃の男子を女子の間に挟めってか。少しは考えろよ」


 俺の立場とかさ。


 あの電話の後、蓮さんに連れられて女子4人が俺の家に来た。リビングに来るまでに2、3回休憩が入ったのは言うまでもない。

 ちなみに、妹の恵美は自分の部屋でぐっすりと寝ていた。

 まぁ、昔から雷とか全然怖がってなかったもんな。

 それに比べて、


「あの、紗羅。俺の部屋着がちぎれるから、そんなに強く引っ張らないで」


「あ、あ、あんたがもう少しこっちに来れば」


「何回同じこと言わせる」


 その後、リビングの机を動かしてなんとか七人の布団のスペースを確保した後、それぞれ男女別れて寝ることになったが、女子がそれで寝られるはずもなく。

 仕方なくしがみつく相手を決めて隣で寝ることになった、、、まではいいんだが。

 誰かが2人に腕を掴まれないといけないことは避けて通れず、また人の組み合わせ的に俺がその人になるのもまた避けられなかった。

 そうなると、間に入って両隣に女子がいる状況で寝るのが1番効率がいいが、そんなもの俺が耐えられるはずもなく。

 いや、別に何もするつもりはないが、そんな状況で寝られるわけもない。


 そんなこんなで、紗羅と御田が隣同士で寝て、俺は2人の枕の方にあぐらをかき、2人に腕を出している状況になっている。

 なんだこれ。

 ちなみに、俺はもう今日は寝ない覚悟だった。


 しばらくすると雷も落ち着いてきたおかげか、そこかしこで小さな寝息が聞こえるようになった。


「ね、ねぇ。周」


 ちょうどそんな時、他の人を気にして、小さな声で紗羅が俺を呼んだ。


「どうした?寝れないか?」


「そうじゃなくて、、、今日はごめんね」


 雷が怖いのか、はたまた自分の気持ちに正直になるのが恥ずかしいのか、布団に顔を半分埋めながら謝ってきた。


「なんで謝るんだよ」


 いつもとは違う紗羅の様子を少し可笑しく感じて、微笑みながら謝罪の理由を聞いた。


「雷が怖いからってこっちに来ちゃって」


「それはもういいよ。別に迷惑したわけじゃないし」


「でも・・・」


「紗羅だからいいんだよ」


 その一言を聞くと、紗羅は大きな目を俺の方にしばらく向け、すぐに頭から布団をかぶった。

 その布団からは小さく「バカ・・・」と聞こえた気がした。



 ーーー1人の夜は長いが、こんな珍しい紗羅が見れたから良しとするか。

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