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ランチボックス同盟  作者: ORCAT
第2章 信頼
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信頼とリムジン

 5月中旬。ようやく北の大地にも緑が目立ち始め、山の上にはまだ雪が残るものの、街の中には陽気さを感じ始める。

 ようやく高校生活にも慣れ始め、クラスの仲間とも打ち解け始めた。進学クラスとの確執は未だに根強いものの、通常クラスの人たちはいい人が多い。


 そんな頃を見計らって、高校の最初の行事が始まろうとしていた。


「というわけで、来週はもう宿泊研修だ」


 七瀬先生ことナセが、教壇に立ってクラスに向かって話すと、教室の中がざわめき始めた。

 ちょうどクラスメートに対する警戒心が解け始めたこの時期にやる定番の行事。クラスメートとお泊まりをして、より親睦を深めようという魂胆だ。


「はいはい、静かに。行き先は言ってあるように、そこそこ有名な、しかもお高いホテルだからくれぐれも良識ある行動を取ってくれよ。私は責任取らないからなー」


「それでも先生かよー」


 ナセの言葉に対して、柳の的確なツッコミが入ってクラスが笑いに包まれた。


「まぁ冗談はさておき。それと、班は出席番号順だが、食事の時なんかは班なんて関係ないからクラスメートとの仲をより深めてほしい。んじゃ、今日のホームルームは終了。自由時間だが静かにしとけよ。はーい、解散」


 毎週金曜の昼休み前にはロングホームルームがあるが、ナセは必要なことしか言わないため、本当に早く終わる。

 変わってないな、昔から。

 そんなことを考えながら窓の外を眺めた。今日も天気は晴れ。ようやく目につく場所には雪がなくなり、過ごしやすい気温になってきた。

 ちなみに、窓を眺められるのは席替えが早くも行われたからだ。俺は窓側の一番後ろの席で、柳がその前。んで隣が、


「・・なによ、こっち見ないでくれる」


 紗羅だ。はぁ、殴られたくないから遠いほうがよかったんだけどな。

 ん?なんだって?今日の朝は『暴力振るうのはいいが』と言っただろって?

 ・・・確かにそう言ったな。あれは嘘だ。

 まぁ嘘というか、紗羅の場合は愛の裏返しと捉えれば、まぁ、、、許容できなくはない・・・かもしれない。・・・体がもてば。


「なんだよ、また夫婦喧嘩か」


「誰が夫婦だ!」

「誰が夫婦よ!」


「相変わらず息ぴったり」


 そんな俺らの状況を早速柳がからかってきた。


「まぁ、そんなことより。宿泊研修は周とはまた同じ部屋だな」


「ありえないよな、、、ほんと」


 小学校の修学旅行でも柳とは部屋が同じだった。

 どこまでこいつとの仲を深めれば気がすむのか。もう10年以上深めてきたんだよ、、、


「もうよくない?」


「それ本人に言うことじゃなくない?」


 あれ?また頭で考えたこと口に出てたか。

 とはいえ苗字の読み仮名的に近いからな、柳と出席番号が近くなるのは自明か。


「あ、あとそうだ」


 そして急に思い出したかのように柳が人差し指を立てた。


「なんか来週、転校生がくるらしいよ」


「転校生?」


「なんでまたこんなタイミングで?まだ5月だぞ?」


 新学期始まって早々転校とか・・・


「さぁな。それは何かしらの事情でもあるんじゃないのか?」


「てか、なんで転校生がいるとかわかるんだよ」


「ふふん。それは俺の自慢の情報網ですよ」


 お前にそんなのあったか?


「しかも、噂ではとびきりの美人らしい」


 ・・・なるほど。妙にテンション高いわけだ。

 でも、このタイミングでの転校とか、一体どんな事情があるんだろうか。普通なら新年度が始まる時か、途中から入るにしても夏休み明けとかだろうし。よほど前の学校が合わなかったとか?それとも親の仕事の都合か。

 まぁ、女子だからそんなに関わりができるとも思わないから、考えても無駄か。

 そんなことを考えていると、隣の席からの視線を感じた。


「・・・なんだよ、紗羅」


「女子が来るからって喜んでるんじゃないでしょうね」


「俺を柳と一緒にするな」


 というか、転校生が来て喜ぶとか小学生かよ。


「ねぇ、周。それは酷くない?俺ってそんな風に見られてたの?」


「逆にどんな風に見られてると思ってんだよ」


「そりゃ、超絶優しいイケメンとか?」


「紗羅、午後の授業なんだっけ」


「確か国語よ」


「あからさまなスルーは本当に泣くよ?」


 そういう人の気持ちわかるなら、さっさと西空の気持ちに気付いてやれ。全く。




  ■ ■ ■




 放課後。金曜日は料理研究部の活動日なので、ゲーム部は休みにしている。


「はい。それでは今日はこの辺で終わりにしましょうか。今日習ったことはしっかりと家で復習しておいてくださいね」


「「「「「はーい」」」」」


 顧問の真美先生の最後の挨拶に部員一同大きな声で答えた。


「それと、来週は1年生は宿泊研修なのでお休みにします。その分、テキストに課題が書いてあるので各自家で実施してください」


 最初に会った時は、かなり優しくて穏やかな先生だなあ、という印象だったが、実際に活動を行ってみるとこの部活に対する情熱をはっきりと感じる今日この頃だ。本人も料理が本当に好きなんだろうな。

 と、急に袖を強く引っ張られた。少しバランスを崩しながらも振り返ると、エプロン姿の紗羅がいた。


「なんだよ、紗羅」


「・・・今日も他の女子に優しくしてた」


「はぁ、、、仕方ないだろ。俺はこの班のリーダーなんだし」


 料理研究部は幾つかの班に分かれていて、料理の上手さによって役職が割り当てられている。そして、俺はなぜか一番偉いリーダーになるはめになった。必然的に料理が上手くないメンバーに教える役になる。


「あと、優しくしてたんじゃなくて、教えてただけだからな」


 そう言ったのに、紗羅の機嫌は直らず、むすっとした表情をしたままだった。


「なんでそんなに不機嫌なんだよ」


「別に、、、」


 何故か俺から目をそらす紗羅。

 はぁ。女子はよく分からん。


「じ、じゃあ着替えてくるから」


「はいはい」


 着替えると言っても、隣の荷物置き場となっている教室でエプロンを脱ぐだけだ。

 なのだが、何故か紗羅には『私が着替える時は絶対入ってこないで』と念を押されている。

 なんでだ?


「周くんも大変ね」


 後ろから声をかけられ、振り返った。


「灰山か」


 灰山はいやま みお。同じクラスの女子。高校で初めて出会ったが、紗羅とはもうかなり仲がいいらしく、何回も家に呼んでいると聞いている。西空とよく似た黒髪のロングで、手入れもしっかりされているのだろうツヤがある。美人な顔だが、西空とは対照的に女優のような美しい顔立ちだ。

 その容姿からクラスだけでなく学年でも有名な女子らしい。俺は紗羅とのつながりで話すことが多い方で(決して多くはない)、本人からは何故か名前で呼ばれている。


「あんまり紗羅の機嫌を損なわないでよ」


「俺が何したってんだよ」


「さぁね」


 さも意味ありげにこちらを横目に見ながら言ってきた。

 なんでかわかってたら教えろよ。


 バシッ


「痛い!なに?!」


 横を見ると、紗羅がジト目でこちらを睨んでいた。


「・・・周がニヤニヤしてる」


「してねーよ。なににニヤニヤする必要があるんだよ」


「こら、紗羅。周くんが困ってるじゃん」


「むー、、、」


「別に取らないから安心しなって」


 いやいや。俺は紗羅のもんではないぞ、灰山。


「澪!」


「はいはい、分かったから、、、じゃあまた来週ね」


 そう言い残して、灰山は教室を出て行った。

 どういう意味だったんだ?


「ほら!周もさっさと荷物!持って!来て!」


 何故か顔を赤らめている紗羅が、俺の背中を押して荷物を置いてある教室へと追いやった。


「わかったから押すなっての」


 なんだよ、ったく。

 ・・・あれ?

 ふと見た窓の外。調理室は一階にあるため外の様子がよく見える。で、今俺に見えているのが長さ5、6メートルはあろうかという黒いリムジン、、、


「リムジン?」



 ーーーこれが後に新たに加わる面倒ごとだった、なんてこの時は気付くはずもない。

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