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ランチボックス同盟  作者: ORCAT
第1章 秘密
12/41

秘密とクラン

 まずは状況を整理して落ち着こう。

 目の前にいるのは、メガネをかけて見慣れた姿ではないが、かつてのマネージャーだったナセがいた。


「いや、なんでだよ!」


 整理したって無駄か。

 相変わらず『どうしたんだ?こいつは』みたいな顔でナセがこちらを見ている。他のFPS部のメンバーや柳たちはポカンとした顔をしたままでいた。宮部先輩はいつの間にかどこかに行っていたため、ここにいるのは俺を含め9人だ。


「おい、玄野。どうしたんだよ」


「玄野くんは七瀬先生とお知り合いなんですか?」


 沈黙に耐えかねてか井口と部長が口を開いた。

 知り合いなんてもんじゃない。

 お互い知りすぎてるんだ。


「はぁ〜」


 本当はもう少し後で説明したかったけど、どうやらここで説明せざるを得ない状況だな。

 俺の過去の秘密を・・・

 そして俺は顔に手を当てながら渋々説明を始めた。


「クランはみんな知ってますか?」


「「「クラン?」」」


 まぁ普通馴染みはないよな。


 クラン。もともとは氏族という意味らしいが、平たく言えばFPSでのチームのようなものだ。同じ目的をもっと人同士がクランを組み、その目標へと突き進む。まぁ大会での優勝や全国出場なんかを目標にしてる部活と似たようなところもあるかと今更ながら思う。


「クランってのはそういうもの。で、ナセと俺は同じクランに所属してたの。ナセはそのクランのマネージャーやってた」


「「「へぇー」」」


「なんていうクランに所属してたんだ?」


 話を聞いてた中で数少ないクランを知っているであろうメンバーの橋本が聞いてきた。

 う、、、痛いところを突いてくる。


「それ言わなきゃダメか?」


「えー、なに。もしかして検索しても出てこないとか?恥ずかしがるなよ。俺だって零細クラン作ってたんだから」


 続いて井口も話に入ってきた。

 そうじゃないんだよな〜。というかむしろ・・・


「その逆だよ、井口」


 まるで俺の考えてたことの先を読むように、ナセが続けた。


「逆ってどういうことですか?七瀬先生」


「調べたらすぐ出てくるから玄野は言いたくないんだよ」


「え?!」


「てことは?」


 はぁ〜。だからナセは苦手なんだよな。こっちの手をだいたい読まれてるし。

 しかし当のナセといえば『わざわざ教えてあげたんだ。感謝しろよ!』みたいな軽いドヤ顔でこっちを見てくるのがまたムカツく。


「玄野ってもしかしてスゴイのか?」


「いや、そこまでじゃないよ」


 これ以上深入りされると困るのでこの辺で引こう。じゃなきゃあの時の二の舞になる・・・


「そうだな、初出場の大会で全国優勝なんて大したことないよな」


「「「えぇーーー!?」」」


 ・・・もうナセとは関係を絶ったほうがいいな、これ。ろくなことがない。

 ナセのあっと驚く一言でみんなの俺を見る目が変わった。


 ーーーこれが嫌だった。今でも思い出す、中学の同級生のあの冷たい視線。

 俺はそっと目を閉じた。もうあの目は見たくなかった。


『ゲームなんかになにができる』

『ゲームなんてして何の意味があるの?』

『勉強を舐めてんのか?』


 ただただそれが怖かった。自分のしてきたことに意味なんてない、と知ってしまうのが怖くて。周りのみんなが離れていくのがただただ怖くて・・・


「すげぇじゃん!!玄野ぉーー!」


「お前全国優勝なんてしてたのかよ!!」


「なるほど。先ほどの戦いはまぐれではなく実力だったというわけですね」


「坊やのおかげでβチームも安泰だな」


「す、すごい・・・」


 え・・・

 拳を握って爪が食い込んでいたことに今気づいた。それは同時に手から力が抜けたのだと。

 みんながみんな俺をキラキラした目で見ていた。


「え、あの・・・」


「どうしたんですか?玄野くん」


 部長が不思議そうな目でこちらを見ていた。

 なんだか部長には俺が何を考えてたか分かられている気がした。


「いえ、なんでもないです」


 今はただ自分が恐れていたことが回避できたことにほっとしていた。

 それもこれもある意味ナセのおかげでもあるか。


「それより、大会の様子とか見れないのかな?」


「全国なら探せばあるんじゃないか?」


「えー、見たい見たい」


 どうやら、あの【Kurφ】(クラン)と同じ性格の人がここにもいたみたいだな。


「うちに映像ならありますよ」


「本当か?玄野!」


「ああ。なんなら今から家来るか?」


「いいのか?急にお邪魔しても」


「もちろん。親は仕事でいないし、井口と橋本なら大歓迎だよ。なんなら、FPS部の皆さんもどうですか?」


 もう自分を隠す必要がなくなったから、どうせならもっとゲームについてこのメンバーと語りたかったのが本音なんだけどな。


「でももう夕方になっちゃってますしね」


「そうね。ご飯とかどうしましょうか」


 部長と南城先輩が困った様子で話した。

 それならいっそのこと


「じゃあうちでご飯でも作りましょうか?材料代みんなで少しずつ出してくれればなんか作りますよ」


「それいいな!」


「じゃあ今日は玄野くんのお言葉に甘えましょうか」


「賛成!坊や飯まで作れるとはな」


「副部長、いい加減坊やって呼ぶのはやめてくださいって」


 全く、副部長本当に話聞いてないな。

 まぁこの人数で飯作るなら・・・飯?


「ん?」


「・・・どうしたの?周」


 後ろで俺の様子を黙って見ていた紗羅が心配そうに聞いてきた。

 なにか、俺は忘れているような・・・

 しかもそこそこ大事なことを


 あ?


「あーーーーーー!」


「びっくりした。なんだよ、玄野・・・」


「悪い!少し待っててくれ!」


 そう言って俺はコンピューター室を飛び出した。


「どうしたー?周ー?」


 後ろから柳の声が聞こえるがそれどころじゃなかった。



 ーーーすっかり料理研究部の見学行くの忘れてた!

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