第三話「イルミネーション」
キリスト本拠地をヴァチカンに置くイタリアでは、プレゼピオと呼ばれるキリスト生誕の時を模した模型を飾り、生誕日―――つまり24日の深夜。
飼い葉桶の中に赤子のキリストを模した模型を置くという風習がある。
「で、それにちなみ、このイルミネーション・プレゼピオの赤子も本日まで点灯していないのです。」
係りのおっさんの説明に、ただの商業イベントでは無いのだと思い知らされた瞬間だった。
20XX年12月24日23:56
「それにしても色々あるねー。」
「ツリーに、プレゼピオ、馬とか鹿の動物、ガ〇ダムとかのアニメ系もあるぞ。」
「版権問題大丈夫なのかな、あのエリア。」
クリスマスマーケットもどきには、日本らしいイルミネーションの他に、縁日のような屋台の数々。
俺達未成年でも飲めるノンアルコールホットワイン(つまり温かいグレープフルーツジュース)を販売する出店もあり、好奇心から三人揃って購入してみる。
「…なんか、葡萄っぽい味じゃないね。」
「元々ホットワインは香辛料をたっぷり入れた身体を温める飲み物だからな。
シナモンとかカルダモンの味だろ。」
狼はイヌ科だが俺は猫舌なのでチビチビホットワインもどきを啜る。
俺は意外とイケると思うけど、広猟はすっぱそうな顔をしているから、結構好みが分かれる味みたいだ。
「…意外と大上って物知りだね。」
「あ?ああ…昔からヨーロッパに興味があってな。
色々調べてると、とことん知りたくなって、余計な知識が増えていくんだ。」
「だからってちょっと飲んだだけで何が入ってるかなんてわかんないって。」
対して未谷は気に入ったのか、さっさと二回目を購入してしまっている。
「ん、おいしっ。」
「えー、弥月味覚おかしくないか?」
そう言い合う二人がやけにチカチカする、多分背後のイルミネーションの性だろう。
最近はイルミネーションもLED使用が主流なのか、眩しくて仕方が無い。
“環境に優しい電球”を作る前に“人に優しい電球”を作って欲しいものだ、全く。