第二話「賑わう人々」
開かれていた扉が古めかしい音を立てながら動いていく。
そしてゆっくりと閉まった瞬間―――。
「お疲れ様でしたーーー!!!」
歓声が沸き起こった。
20XX年12月24日23:45
「これは…。」
「思ったより人でいっぱいだな~。」
「だね、もう深夜なのに。」
予想よりも人の多い駅前に、俺達三人は暫し固まってしまったのだった。
事の発端は今から30分程前に遡る。
「終わったなあ…。」
「終わったねえ~。」
一年の締めくくりとも言えるイベントが終了し、いつになく緩み切った顔の未谷と広猟と共に帰路を急ぐ。
それにしても、もうこの三人でこの日に並んで帰ることも最後かと思うと感慨深い。
本当、いくら学園の目玉イベントだからって反強制参加はやめて欲しい。
「そういえば、今年は駅前でクリスマスマーケットやってるらしいぜ。」
「クリスマスマーケット?」
「…あのドイツで主にやってるアレか?」
「そーそれ!この間山鉄の駅が立て直されたじゃん?
で、そのスポンサーの一つにビール会社があって、ビールとかワインとかの即売会も兼ねて今年開催されたらしい。
駅前だから飲酒する可能性は低いから、ってことで。
で、出来うる限り本場らしく!ってコンセプトで開催されてるから、見るだけでも面白いって母さんから聞いてさ。
帰り道には遠回りだけど、最終日だし行ってみないか?」
広猟の提案に、いつもの俺ならさっさと帰ろうと促すか、ここで分かれて帰っていただろう。
しかしその時は何故かそれがとても魅力的な提案に思え、未谷と共に一も二も無く頷いたのだった。