第二話「二人だけのクリスマスってのも中々いいだろ?」
「…と、言う訳でみーちゃんは今日これからデートだから!」
「……は?」
そう母さんの前で高らかに宣言した俺は唖然としたままの弥月の手を強引に引いて広猟邸を後にしたのだった。
20XX年12月24日9:00
「ちょっ、ちょっ、雪月!」
後ろで何か弥月が色々言ってるけど、俺は気にせずグイグイ引っ張っていく。
何処に行こうかな?何をしようかな?
デートって豪語したからには、やっぱりツリーを見に行きたいな。
クリスマスデートっていったら、やっぱりツリーを見に行かないとな!
「なー、みーちゃんはどこ行きたい?」
「どこって…て言うか、デートって何?!」
「何だ、みーちゃん知らねーの?
“親しい男女が出掛けること”を“デート”って言うんだぜ?」
「いや、それは知ってるけど!」
納得してないのか、それともテンパってるのか、所謂逆ギレ状態の弥月はいつ見ても面白い。
そうやって喚くから、ついつい楽しんじゃうんだよな。
「それにこれで母さんの茶会に出席しなくてよくなっただろ?」
「まあ…そう……だけど…。」
もう逆ギレ状態は終わってしまったのか、今度はグズグズ言ってる…所謂拗ね拗ね状態だ。
つまんないな、昔はもうちょっと長続きしてて色んな表情も見れて楽しかったんだけどな。
…まあ、なんでかなんてわかりきってるんだけどさ。
それを認めてしまうのは男として、そして兄妹同然に育った従兄妹として、なんだか負けのような気がするから意地でも今は認めてやらないけど。
なあ、弥月?
「それに。」
弥月は俺との関係が“恋人”となることを有り得ないと断言しているけれど。
「二人だけのクリスマスってのも。」
そんなこと、弥月は物語の中だけのことだと思っているけれど。
「中々いいでしょ?」
俺はそんな“物語みたいな関係”になりたいんだ、なんて言ったら。
「…なんてな!」
弥月は俺のこと、嫌いになるのかな。