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Advent Calendar 2015  作者: 葉月 未兎
第四幕 しょっぱいクリスマス
19/25

第四話「プレゼント」

「お?」

「あれ?何でここに居んだ?」


15分程前に駅前で別れた広猟との早すぎる、意外な場所での再会に、お互い目を丸くする。

何故ならここは、30分程前に後にした未谷の家だからだ。



20XX年12月25日18:25



「何でここに?」

「んー?お袋からメールきてさ、伯父さん、今日帰って来れなくなったんだとさ。

 で、残飯処理に駆け付けたって訳。」


おちゃらけて言うが、その瞳にははっきりと怒りの色が浮かんでいる。

それはそうだろう、あんなに楽しそうに、あんなに嬉しそうに準備していた未谷の事を考えると、俺だってまだ見たことも無い親父さんに怒りを覚えるのだ。

血縁ともなれば更に怒り倍増だろう。


「そういう大上はどうしたんだ?」

「え?!いや、俺は…。」


言葉を濁し咄嗟に隠した袋の中には、買い出しで未谷が見つめていた熊が今か今かと出番を待っている。

久しぶりの親子水入らずを邪魔するつもりの無かった俺は、郵便受けにでも入れて帰ろうと思っていたのだが、これなら慰めも兼ねて手渡ししてしまおう。


広猟を上手く言いくるめる自信の無かった俺は、特に何も言わずチャイムに手を伸ばした。

暫くするとパタパタという足音と共にドアが開き、驚きに目を見開いた未谷が出てきた。


目元をチェックするが、赤くなっている様子はなく、泣いたりはしていなかったようだ。


「どうしたの?二人共。」

「ああ、お袋から聞いてさ。

 折角手伝ったんだからご相伴に預かろうと思ってさ。」

「え、それは有難いけど…大上も?」

「お、おう…。」

「…そっか、じゃあどうぞ。

 すぐに用意するよ。」


招き入れられるまま、再び未谷家の敷居を跨ぐ。

少しでも未谷が寂しさが紛れることを願いながら、俺達は豪華な夕飯にありついたのだった。



余談だが、あの熊は結局手渡すには気恥ずかしく置き忘れた(てい)で何とか未谷の手に渡ったのだった―――。

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