第四話「プレゼント」
「お?」
「あれ?何でここに居んだ?」
15分程前に駅前で別れた広猟との早すぎる、意外な場所での再会に、お互い目を丸くする。
何故ならここは、30分程前に後にした未谷の家だからだ。
20XX年12月25日18:25
「何でここに?」
「んー?お袋からメールきてさ、伯父さん、今日帰って来れなくなったんだとさ。
で、残飯処理に駆け付けたって訳。」
おちゃらけて言うが、その瞳にははっきりと怒りの色が浮かんでいる。
それはそうだろう、あんなに楽しそうに、あんなに嬉しそうに準備していた未谷の事を考えると、俺だってまだ見たことも無い親父さんに怒りを覚えるのだ。
血縁ともなれば更に怒り倍増だろう。
「そういう大上はどうしたんだ?」
「え?!いや、俺は…。」
言葉を濁し咄嗟に隠した袋の中には、買い出しで未谷が見つめていた熊が今か今かと出番を待っている。
久しぶりの親子水入らずを邪魔するつもりの無かった俺は、郵便受けにでも入れて帰ろうと思っていたのだが、これなら慰めも兼ねて手渡ししてしまおう。
広猟を上手く言いくるめる自信の無かった俺は、特に何も言わずチャイムに手を伸ばした。
暫くするとパタパタという足音と共にドアが開き、驚きに目を見開いた未谷が出てきた。
目元をチェックするが、赤くなっている様子はなく、泣いたりはしていなかったようだ。
「どうしたの?二人共。」
「ああ、お袋から聞いてさ。
折角手伝ったんだからご相伴に預かろうと思ってさ。」
「え、それは有難いけど…大上も?」
「お、おう…。」
「…そっか、じゃあどうぞ。
すぐに用意するよ。」
招き入れられるまま、再び未谷家の敷居を跨ぐ。
少しでも未谷が寂しさが紛れることを願いながら、俺達は豪華な夕飯にありついたのだった。
余談だが、あの熊は結局手渡すには気恥ずかしく置き忘れた体で何とか未谷の手に渡ったのだった―――。