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Epilogue

 文化祭前日。

 僕たち生徒会役員は、無事文化祭の準備を終え、残すところ本番のみとなっていた。

 といっても、僕と、小唄の二人は、ほとんど何もしてないんだけど。

 全て、優秀すぎる会長と、優秀な会計がやってくれたから。


「よしっ! いよいよ明日は文化祭当日よ! 今夜はまっすぐ帰って、ゆっくり寝ること。いいわね!」

「はーい! まっかせてくださーい!」

「……わかった」

「了解しました」


 などなど、各々が返事をしていく、生徒会役員たち。

 そんなみんなに満足したのか、会長は、


「よし、解散!」


 と、大声を張り上げた、

 うるさいです。



「ハル君、かいちょー、ゆっきー先輩! 一緒に帰りましょう!」


 元気よく、小唄がそう誘ってきた。

 僕たち以外の生徒会役員は、すでに帰宅している。

 多分、気を使ったんだろうな。


「ええ。でも、ちょっと春秋に用事があるから、先に昇降口で待ってて」

「用事?」


 なんだろう?

 文化祭のことかな?


「わっかりましたぁ~! 行きましょう、ゆっきー先輩!」

「……痛い」


 小唄は、そう返事をすると、藤倉先輩の腕を引っ張って生徒会室から出て行った。

 お疲れ様です、藤倉先輩。

 そんなわけで、会長と二人きりになったわけだけど。


「何ですか? 会長」


 とりあえず、会長に要件を尋ねる。


「二人きりのときは詩杏って呼びなさいよ。それに、敬語禁止!」

「…………」


 会長の命令に、僕は少し逡巡した後、


「……何の用だよ、詩杏」


 そう、言いなおした。

 言っておくけど、僕と会長……詩杏は、付き合ってるとか、そういうのじゃない。

 ただの、幼馴染みだ。


「どう?」

「……何がさ?」


「春秋にとって、今って、楽しいものかしら?」


「…………」


 言葉が詰まる。


「私、色々と春秋に命令してきたでしょ? 今回の、事件の調査のことだって」

「…………」

「私、春秋が『NO』って言わないことに、甘えているんだと思う。何度も、やめようと思ったわ。今回で、春秋に甘えるのは最後。毎回そう思っているの。でも、どうしても甘えてしまうのよ」

「……詩杏」

 いつもの、天才、黒咲詩杏からは、想像もできないような、弱弱しい言葉。

 でも、僕は、それが詩杏だって、知っている。

「だから、春秋が、楽しくないって言うんなら、私は――」

「詩杏!」


 言葉を遮るように、詩杏の名前を呼ぶ。


「……何?」

「……勘違いしてるみたいだから、言っておくけどさ」


 僕の脳裏に浮かぶ、詩杏と、も・う・一・人・と過ごした日々。

 それらは、幸せなことばかりじゃなかった。

 楽しくない時もあった。

 でも、今は、


「……楽しいよ、とってもね」


 それは、まぎれもない僕の本心。

 今回の事件のことだって、なんだかんだ言って、どこかで楽しんでいる自分がいた。

 轟さんには悪いけどね。


「ん♪ なら、よし! 帰りましょ」


 詩杏は、最初から僕がそう答えるとわかっていたとでも言うように、スカートを翻して歩き始めた。

 僕も、生徒会室の電気を消し、カギを閉めてから、詩杏……会長の後を追う。


「あ! やっと来ました」

「……遅い」


 昇降口で待っていたのは、退屈そうにしていた小唄と、こんな場所でも読書をしていた藤倉先輩だった。

 そんな二人に、会長は爆弾を投げつける。


「ごめんなさい。春秋ったら、激しくて」

「なっ!?」


「は、はは、ハル君っ!? かいちょーに何をしてたの!?」


「な、なにも――」

「ナニをしてたのっ!?」

「してないよ!」

「……うるさい」

「ほら、さっさと帰るわよー。春秋、小唄」

「ああ、はい。待ってくださいよ会長」

「ハル君! かいちょーと何をして――」

「だから何にもしてないよ!」

「本当なの?」

「本当だから、それ、誰にも言わないでよ!」

「や、やっぱりナニかしたんだ!」

「してないって!」




 東雲小唄。

 藤倉雪。

 そして、黒咲詩杏。



 そんな面々と過ごす日常は、



 決して、悪いものでは、ない。







《終わり》

これにて第1部完結です

続きは……書くかわかりませんw

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