Epilogue
文化祭前日。
僕たち生徒会役員は、無事文化祭の準備を終え、残すところ本番のみとなっていた。
といっても、僕と、小唄の二人は、ほとんど何もしてないんだけど。
全て、優秀すぎる会長と、優秀な会計がやってくれたから。
「よしっ! いよいよ明日は文化祭当日よ! 今夜はまっすぐ帰って、ゆっくり寝ること。いいわね!」
「はーい! まっかせてくださーい!」
「……わかった」
「了解しました」
などなど、各々が返事をしていく、生徒会役員たち。
そんなみんなに満足したのか、会長は、
「よし、解散!」
と、大声を張り上げた、
うるさいです。
◆
「ハル君、かいちょー、ゆっきー先輩! 一緒に帰りましょう!」
元気よく、小唄がそう誘ってきた。
僕たち以外の生徒会役員は、すでに帰宅している。
多分、気を使ったんだろうな。
「ええ。でも、ちょっと春秋に用事があるから、先に昇降口で待ってて」
「用事?」
なんだろう?
文化祭のことかな?
「わっかりましたぁ~! 行きましょう、ゆっきー先輩!」
「……痛い」
小唄は、そう返事をすると、藤倉先輩の腕を引っ張って生徒会室から出て行った。
お疲れ様です、藤倉先輩。
そんなわけで、会長と二人きりになったわけだけど。
「何ですか? 会長」
とりあえず、会長に要件を尋ねる。
「二人きりのときは詩杏って呼びなさいよ。それに、敬語禁止!」
「…………」
会長の命令に、僕は少し逡巡した後、
「……何の用だよ、詩杏」
そう、言いなおした。
言っておくけど、僕と会長……詩杏は、付き合ってるとか、そういうのじゃない。
ただの、幼馴染みだ。
「どう?」
「……何がさ?」
「春秋にとって、今って、楽しいものかしら?」
「…………」
言葉が詰まる。
「私、色々と春秋に命令してきたでしょ? 今回の、事件の調査のことだって」
「…………」
「私、春秋が『NO』って言わないことに、甘えているんだと思う。何度も、やめようと思ったわ。今回で、春秋に甘えるのは最後。毎回そう思っているの。でも、どうしても甘えてしまうのよ」
「……詩杏」
いつもの、天才、黒咲詩杏からは、想像もできないような、弱弱しい言葉。
でも、僕は、それが詩杏だって、知っている。
「だから、春秋が、楽しくないって言うんなら、私は――」
「詩杏!」
言葉を遮るように、詩杏の名前を呼ぶ。
「……何?」
「……勘違いしてるみたいだから、言っておくけどさ」
僕の脳裏に浮かぶ、詩杏と、も・う・一・人・と過ごした日々。
それらは、幸せなことばかりじゃなかった。
楽しくない時もあった。
でも、今は、
「……楽しいよ、とってもね」
それは、まぎれもない僕の本心。
今回の事件のことだって、なんだかんだ言って、どこかで楽しんでいる自分がいた。
轟さんには悪いけどね。
「ん♪ なら、よし! 帰りましょ」
詩杏は、最初から僕がそう答えるとわかっていたとでも言うように、スカートを翻して歩き始めた。
僕も、生徒会室の電気を消し、カギを閉めてから、詩杏……会長の後を追う。
「あ! やっと来ました」
「……遅い」
昇降口で待っていたのは、退屈そうにしていた小唄と、こんな場所でも読書をしていた藤倉先輩だった。
そんな二人に、会長は爆弾を投げつける。
「ごめんなさい。春秋ったら、激しくて」
「なっ!?」
「は、はは、ハル君っ!? かいちょーに何をしてたの!?」
「な、なにも――」
「ナニをしてたのっ!?」
「してないよ!」
「……うるさい」
「ほら、さっさと帰るわよー。春秋、小唄」
「ああ、はい。待ってくださいよ会長」
「ハル君! かいちょーと何をして――」
「だから何にもしてないよ!」
「本当なの?」
「本当だから、それ、誰にも言わないでよ!」
「や、やっぱりナニかしたんだ!」
「してないって!」
東雲小唄。
藤倉雪。
そして、黒咲詩杏。
そんな面々と過ごす日常は、
決して、悪いものでは、ない。
《終わり》
これにて第1部完結です
続きは……書くかわかりませんw




