異世界へようこそ
ピッ、ガシャン
「……出てこないぞ?故障か?」
取り出し口から商品が出てこないことに疑問を抱いた俺が目にしたのは、
まばゆく輝く商品欄と、
「イセカイヘヨウコソ」
と言う無機質な音声だった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
俺が通う大学は、最寄りの駅から10分ほどの所にある。
学校前の通りが大通りとなっているため、生徒は皆そこを通るのだが学生数が多いためなかなか進めない。
だから俺はいつも、一本裏の通りを通って登校していた。
その道の途中には1つの自動販売機がある。
とはいっても、一般的な飲料系を売っているのではない。
ブレスレットを売っている日や、最寄りの路線の格安切符など売っているものはちょくちょく変わるが、基本的に欲しい物は無かったためスルーしていた。
その日、何気なく自販機を見た俺は売っているものを見て興味がひかれた。
売っていたものはライトノベル。
大体は、名前だけは知っているものの読んだことのない物ばかりだったのだが、その中に俺が一番好きなライトノベルがあった。
「これ、単行本になってたのか……」
受験生時代、気分転換にWeb版を読んで頑張った結果志望校に合格できたため、内容だけではなくその意味からも特別な作品だった。
値段は1000円。
このサイズのライトノベルとしては安い。
迷わず買った。
それが、異世界への切符とも知らずに………