2-1 平穏な朝
次の日の朝、僕は学園の通学路をふらふらしながら歩いていた。
その原因は瑞穂の説教である。
あれから帰った後、僕に待ち受けていたのは明かりのついた居間で、中に入ってみると机の上にはラップをされた今夜のご飯があった。
それだけならよかった。それと一緒にあったのは椅子に座って腕を枕にして神谷瑞穂、そう僕の妹が寝ていた。
置手紙と一緒に・・・。
書かれてあった内容は「起こして」だけだった。
僕は真剣に起こすかどうか悩んだ。起こせば説教は目に見えている。
瑞穂の説教はかなり精神にくる。
なぜなら瑞穂が説教するときは、僕を心配した時なので基本半泣き状態で怒るのだ。
そして身内目を抜いてもうちの妹は可愛い。
少し幼さが残った顔で、髪は腰ぐらいまで伸ばしており、そんな妹は実際学校でラブレターをもらってかえってくる。
そして想像してほしい。
そんな可愛い妹に泣きながら説教されるところを。
罪悪感でつぶれそうにならないだろうか?
僕は罪悪感で潰されそうになる。
だから、だからここまで自分言い訳して、起こさない選択したんだ。
・・・でも神様は僕のことが嫌いなようだ。
一歩部屋に踏み入れた途端、足元に落ちていた紙で足を滑らし、大きな音と共に転んでしまった。
もちろん妹は起きた。
そして眠そうな目をこすり、僕の姿を見ると、泣き始めてしまった。
そして僕に正座を強要し、朝3時まで続く説教の幕が開いてしまったのだ。
ハードな一日だった僕にとって3時まで起きておくことははっきり言って拷問だ。
「朝からこんなだと一日もちそうにないよ~」
僕はふらふらになりながらも学校になんとか足を進めるが、前に進んでいる気がまったくしない。
・・・今はまだ学園の半分ぐらいかな。
「あの~、大丈夫ですか?」
そんな僕に声をかけてくる人がいた。
僕はうつろな目で声をかけてきた人の方を見る。
「うわぁ?すごいくまができていますね」
声をかけてきた正体は女の子だった。
おとなしそうな顔立ちで、髪は肩まで伸ばしている。
そして一番特徴的なのは両手首に腕輪がされていた。
女の子は驚いた顔で僕の顔を見る。
「え~と君は誰?見たところ僕と同じ学園の制服みたいだけど・・・」
彼女が着ている服は僕と同じ桜木学園のもので首のところには僕と同じ一年生を表す黄色のバッジがつけられていた。
「あ、はい、すみません。いきなり名乗りもしないで。
名前は桜澤 楓です。
桜木学園1年6組です。」
桜澤さんは丁寧にお辞儀までしてくれる。
「僕は神谷 柊太。
君と同じ桜木学園の1年で4組です。
こっちもいきなり聞いてごめんね」
いきなり「君誰?」は失礼だったと思う。
「あ、はい。
全然大丈夫ですよ。
それよりくまできてますね。
・・・大丈夫ですか?」
桜澤さんは僕のことを心配そうに見る。
「ちょっと寝不足で、ふらふらしてるだけだよ。
だから悪い病気とかじゃないから大丈夫だよ」
僕は彼女のことを安心させるためにそういった。
「・・・ちょっと待っててください」
彼女はそういうと右手につけられている腕輪を握りながら魔法を唱えた。
「ヒーリング」
彼女がそう言うと、僕の周りを水色のミナトが纏い、僕の目のくまはなくなった。
「これで今日一日ぐらいは普通に過ごせると思います。
でも無茶をしたらまたふらふらになっちゃうのできをつけてくださいね」
彼女はニコッと笑う。
・・・うん、誰が見ても惚れてしまいそうな笑顔だった。
「あ、ありがとう。桜澤さんも水のミナトなんだね」
僕に「ヒーリング」を使った時、僕の周りに水のミナトを感じたから間違いはないだろう。
「はい。水のミナトで補助専行です。
も、っていうことは神谷君も水のミナトですか?」
「うん、僕も水のミナトで、全選択だよ」
僕は全選択という事を隠さず伝えた。
彼女は少し驚いたそぶりを見せたが、なにもなかったかのようにまた笑顔に戻った。
「そうなんですか。
ここからは同じ道ですし、一緒に行きませんか?」
こんなに子に一緒にいかないかと誘われて断る男はいない。
返事はもちろん・・・
「うん。一緒に行こうか」
登校中僕たちはいろいろ話した。
隊のこととか、クラスの事とか・・・
「ええ~!
じゃあ神谷君はあの『銃弾の帰る場所』に入隊したんですか?」
彼女は大変驚いたようで、大声で言ってしまった。
僕としては大声で言われると周りからの目とか嫌なので遠慮してほしかったが・・・
「い、一応ね。桜澤さんは?」
「私は・・・その・・・」
彼女の歯切れが悪くなった。聞かない方がよかったかな?
「答えにくかったらいいよ?」
「あ、はい。すみません。」
彼女はしょんぼりする。
彼女にもいろいろとその辺には事情があるのだろう。
僕は話を逸らすことにした。
「6組といえば、奏佳・・・宮野さんと同じクラスだよね?」
確か、奏佳は6組のはずだった・・・と思う。
「宮野さんですか?
はい、同じクラスですよ。
知ってるんですか?」
「うん。
僕と宮野さん・・・奏佳は幼馴染だからね」
「宮野さんと幼馴染ですか・・・」
彼女はくすくすと笑い始めた。
「え、え~とどうかした?」
「あ、すみません。
宮野さんといえば突然自己紹介が終わった瞬間
「シュウのやつとっちめてやる~」
って言いながら鬼の形相でクラスを出て言ったものですから、それを思い出してしまって」
ああ~あのときか・・・。
「神谷君?」
僕がボーっとしていたから心配になったのか、桜澤さんが僕の顔を覗き込んできた。
「あ、ごめん、ごめん。ちょっと遠い目をしていたよ」
「あはは、神谷君っておもしろい方ですね」
そうこう言っているうちに、校門前に着いた。
そして校門をくぐって校舎に向かう途中僕らの方を見てひそひそ話をしている人をちらほらみかけた。
「どうしたんでしょうか?
私たち見られてる気がします」
どうやら彼女も気づいたらしい。
「・・・なんか昨日一日で僕、いろいろと騒ぎを起こしちゃったから、それで見られてるんだと思う」
昨日一日で噂の的になるようなことはたくさんしでかした気がする。
なので僕が見られるのは仕方ないのだが、桜澤さんまで見られるのは悪い気がしたので、僕はちょっと用事を思い出したふりをして先に行こうと思った。
「あ、ごめん、桜澤さん。
僕ちょっと隊舎によっていかないといけない用事を思い出したから先に行くね。」
「そうなんですか?
神谷君とお話しするの楽しかったから、残念です」
彼女はしょんぼりする。
かなりの罪悪感に苛まれたが、それを振り切って、僕は走って隊舎の方に向かった。
投稿かなり遅れました。
ここからは第2章となります。
引き続きお楽しみください。
読んでくださっているみなさんありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。