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1-13 一日の終わり

時と場所は変わって『銃弾の帰る場所』の隊舎。そこでは隊長席に座る水瀬とその前に座る柊太がいた。


「木景は帰ってしまったな。」


水瀬さんは壁にかかっている時計を見ながら言った。


「そうですね」


木景さんはほんの少し前に隊舎を出て帰って行った。

『紅蓮の業火』での隊舎での一件の後僕たちは一度隊舎に戻った。

そこで僕は水瀬さんについていろいろ質問した。水瀬さんはいったい何者なのか?

どうやって最後の攻撃を避け、赤火さんの後ろをとったのか?

など質問したが、

結局わかったことは何もなかった。

あえて言うなら水瀬さんは強いということだけだった。

その後僕もまだ本人確認による入隊の手続きが終わってなかったのがわかり、今まさに書いているところだった。

書類自体は簡単なものだったので、

木景さんは


「あとはバカ隊長に任せるので先に帰ります」


と言って帰って行ったのだった。


「・・・・・」


無言で僕は渡された書類に記入事項を記入していった。そしてすべて書き終わった。


「水瀬さん、書類書き終わりました」


僕は書き終わった書類を水瀬さんに手渡す。

そして水瀬さんはそれを受け取り間違いがないかさらっと確認する。


「よし、問題なし!!帰るか!!」


水瀬さんはそういうとバッと立ち上がり帰り支度を始める。

僕も校門のところで奏佳が待っていると思うのでいそいで帰り支度をする。

そして僕の帰り支度ができるころには水瀬さんの帰り支度もできていて、窓の鍵が閉まっていることを確認すると隊舎を出た。


「おつかれさまです、水瀬さん。

 今日はありがとうございました」


隊舎の前で頭を下げて言う。


「おう!じゃあまた明日な。

 明日ちゃんといらぬ問題を起こさないで隊舎まで来いよ」


水瀬さんはニコっと笑うと手を振って先に走って帰ろうとした。

しかし数m手前で止まり僕に向けて言った。


「まだ何か?」


僕、何か忘れ物してたっけ?


「呼び方」


「え?」


僕は驚いた顔をする。


「水瀬さんじゃなくてこれからは隊長っていうこと。いいかな?」


僕はボケーっとしていた。

そして意識が戻ったときにはこういっていた。


「・・・はい!お疲れ様でした、水瀬隊長」


「おう、じゃあな、柊太」


隊長はニコッと笑うとさっさと行ってしまった。

僕もこれ以上奏佳をまたしてはいけないと思い、いそいで校門に向かった。



また少し時は戻り『紅蓮の業火』の隊舎を出た風夜と奏佳は『飛天の双翼』の隊舎で入隊手続を行っていた。


「じゃあそうちゃん。これが入隊するに関しての注意事項ね」


風夜は入隊申請の紙を渡す。


「あ、はい」


奏佳はそれを受け取ると、記入事項のところを埋めていく。

隊舎にはもう二人以外の姿はなく、隊長室にだけ明かりが灯っていた。


「今日はお疲れ様だね~」


隊長席に座る風夜は机に両肘をつきながら、奏佳を見て言った。


「はい、本日はありがとうございました。ちーちゃん先輩」


奏佳は入隊申請書に記入しながらも返事をする。


「気にすることないんだよ。ちーちゃんが勝手に決めただけだから」


「それでもです。

 ちーちゃん隊長が助けてくれなかったら、私はここにいることができなかったわけですし」


奏佳の手が止まる。


「えへへ。

 そう思ってくれるとうれしいな~。

 まあ明日からはよろしくだね~」


奏佳は立ち上がると風夜に記入事項をすべて埋めた入隊申請書を手渡す。


「明日からも、これからもよろしくお願いします。ちーちゃん先輩」


礼をしながら奏佳は言った。風夜もニコッと笑うと、入隊申請書にざっと目を通す。


「よし、OKだね~。

 柊太君と一緒に帰る約束してたんだよね?

 今日は先に帰っていいですよ~。

 後はちーちゃんがしときます」


風夜はそういうと窓の戸締りなどし始める。


「そ、そんな、ちーちゃん先輩だけにさせるわけには・・・」


奏佳も慌てて、風夜の助けをしようとする。


「あとは鍵閉めて終わりですから、一人でも大丈夫なんです。

 それよりも早く言ってあげた方がいいかもしれないよ?

 柊太君凍えているかも~」


確かに朝はほどよく暖かいのだが、まだ夜は寒い。

柊太をあまり待たせることになっては悪いと思う。


「じゃ、じゃあ先に失礼します。お疲れ様でした」


奏佳はおじぎだけすると走って隊舎を出て行った。風夜はそんな奏佳の姿を窓から確認すると


「はい、お疲れ様です」


とだけ言って、戸締りだけして隊舎を出た。



また時と場所は変わり、校門前・・・


校門にはまだ誰の人影もなかった。しかししばらくすると走ってくる人影があった。


「なによ、シュウのやつ。まだ来てないの?」


先に到着したのは奏佳の方だった。


「女の子を待たせるなんて、シュウのヤツ、来たらシメてやる」


奏佳がそう奮起していると、汗だくになって走ってくる柊太の姿が見えた。


「もう遅い!!レディーを待たせるなんて最低だよ!」


奏佳はそんな柊太の姿を見て文句を言う。柊太もぜぃぜい言いながらも言い返す。


「み、道に迷っちゃって。隊舎から校門ってきたことないから、一回校舎の方に戻ってから走ってきたんだ。」


柊太の遅れにはそういう理由があったらしい。


「・・・まあいいわ。シュウの方向音痴は今に始まったことでもないしね。はやく帰ろう」


奏佳はそういうと歩き出した。柊太もそれに続いて歩き出した。



「今日はありがとう」


僕は突然奏佳にそう言った。


「な、なによ、いきなり」


奏佳はかなり動揺していた。

いきなりそんなことを言われるとは思ってなかったようでオロオロしている奏佳は不覚にもかわいいとおもった。


「競技棟で僕が『闘牛の突撃』にからまれているときに助けてくれたでしょ?そのお礼」


もしあのとき奏佳が助けに来てくれなかったら、僕はボコボコにされ、『闘牛の突撃』に強制的に入隊させられていただろう。


「・・・お礼を言うのは私の方よ」


奏佳は僕の隣を歩きながら、そういった。


「もしシュウがあのとき怒ってくれなかったら、私謹慎処分を何の抵抗もなく受けていたと思う。それで、あとで絶対後悔していた。後悔してどうにかなってたかもしれない」


あのときとは、謹慎処分に何の抵抗もせず受け入れていた奏佳に対して怒ったときだ。

あのときは僕も必死だった。

奏佳が僕のせいで謹慎処分になるなんて絶対に僕は嫌だ。

だから、それだけは、絶対にさせないようにしようと思っていた。

でもどうすればいいかわからなくて、ただ水瀬隊長に言われたように自分の正しいと思う行動をひたすらしていた。

それだけだった。


「僕は自分の正しいと思うことをしただけだよ、水瀬隊長に言われたように」


「それでもだよ!!ありがとう、シュウ。」


奏佳は僕の前方に回るとそう笑顔で言った。

僕は顔が熱くなるのを感じた。

そしてとっさに話を変えた。


「でも明日から大変だね」


「そうなんだよね~なんせ学園2位と3位の隊に私たち入隊しっちゃったわけだし」


明日からのことを思うと気が重い。

妹の事もあるため、今日みたいに遅くなりたくはないし、でも学園3位の隊に入るということは、それだけ難しいミッションにも先輩と一緒にでることにもなるかもしれない。

そうなると帰るのは遅くなるか、帰れないか、どちらかだ。また他の生徒の視線も嫌だな~って思う。

絶対みんなにとやかく聞かれるか、興味本位に見られたりする。

目立ちたくない僕としてはそっちもなかなか辛い。


「でも、そんなことも言ってられないよね!!

 隊にふさわしい実力を早く身に着けないと。」


奏佳の目は生き生きしている。

もともと戦い好きの奏佳は自分を鍛えることを苦にしないタイプで、なかなかの戦闘に対してのスジがいいときている。

だから、明日からの毎日を楽しみにしているみたいだ。それに対し僕は・・・


「・・・うん、そうだね」


本当に『銃弾の帰る場所』にふさわしい実力を身につけられるのだろうか・・・。

戦いのセンスなんて皆無だし。

・・・小過程、中過程の頃は他の子に比べて多少はミナトの量が多かったのでなんとかなっていたが、今回はそうもいかない。

大抵、小過程、中過程で、人の進む道は大きく分かれてくる。

ミナトの量が多かったり、操ることがうまい人間は僕らのような、ミナトを育てる学園に入学し、その後は魔物ハンターやボディーガード、今学園でやっているような依頼をクリアし報酬をもらうなどの職に就く。

いわゆる僕はそんな専門職に就くような連中の中にいるのだ。

中過程時代少しくらいミナトが高かっても、ここではそれも微量なものとなってしまう。

・・・水瀬隊長や久野さん、神尾さんはすごく強かった。

あの人たちの横に自分もたって戦えるのか不安になる。


「勇人の方はどうだったのかな?『紅の丘』に入るって言ってたけど・・・」


僕はまた話をすり替える。


「さあ?北野のことなんて私が知るわけないじゃない。」


奏佳はあまり勇人の話には興味がないようだ。


「今日は疲れたから、帰ったらすぐにねちゃおう」


奏佳があくびをしながらそう言った。


「僕も疲れたから今日はすぐ寝ちゃうかな。

 しかし遅くなっちゃったな~。

 瑞穂のやつ心配してないかな」


瑞穂とは僕の妹の名前だ。。


「・・・あんたって重度のシスコンよね~。

 まああっちも重度のブラコンだから丁度いいんだろうけど」


奏佳が何かぼそっとつぶやいた気がしたが、聞こえなかったので放っておく。


「大丈夫よ!瑞穂ちゃんしっかりしてるから」


「でも、体弱いし、突然の発作が起きて家で倒れてたら!!」


僕はそう思うと、いてもたってもいられなくなった。


「ちょっと走って帰る」


僕は全力疾走の態勢を取ると走り出した。しかし・・・


「こらこら、待ちなさい」


襟元を奏佳につかまれ首が締まる。そのせいで僕は咳き込む


「ケホッ、ケホッ。何するんだよ!!」


僕は奏佳に向かって怒鳴った。

しかし奏佳はムッとした表情しただけだった。

いつもなら回し蹴りの一発ぐらい飛んできそうなんだが・・・。


「私だって女の子なのよ。こんな夜道に一人きりにする気?」


奏佳はそういうが・・・


「ははは、何言ってるんだよ、奏佳。奏佳なら、その辺の不良ぐらい簡単に沈めれちゃうじゃない。

 そんな心配は無用でしょ?

 それに僕より強いし」


今度は掌底と回し蹴りとアッパと踵落しを食らった。

目の前がチカッとする。


「ど、どうやれば、そんなコンボが成立するんだよ・・・・ガク」


僕は倒れこむ。


「シュウなんか知らない!!もう先に帰る」


奏佳はそういうと先に帰ってしまった。・・・・・はぁ~地面が冷たくて気持ちがいい。


「いろいろ問題は山積みだけど・・・帰るか」


僕は立ち上がると、瑞穂が待つ家に帰った。



更新できました。

やっぱり社会人になると執筆時間が大幅に削られて大変ですね^^;

今後もよろしくお願いします。

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