第八話 選択
「・・子孫?」
少年は、こくりと頷いた。
「ま、大体の『監視者』はコーズの子孫なんだけどさ。」
なんだか面白そうにくすくす笑われた。
「・・・」
「あ、もしかして、ついていけてない?」
図星だったから、何も言わなかった。
「やっぱそうなんだ・・・」
少年は、にやにや笑いながらも、目は笑っていなかった。
「それで?」
いきなり質問されたので、私は少し驚いた。
「え、何?」
「だから、君はどうするの? こんな『爆弾』抱えてさ。」
言われてみればそうかもしれない。
やがて自分は、このままだと『追う者』になるのだ。
それか、『取引』をして『監視者』・・・つまりはこの少年とあの女の人だろう・・・に殺されるか。
どっちにしろあまり快い死に方ではない。
「あなたは何か方法・・知ってるの?」
「まあ、ないわけじゃないけど、誰も実行したことなんかないし・・・それに、『×』書けば済む事じゃん。」
「そうじゃなくて! 私は・・・こんな手紙に振り回されるのは嫌なのっ・・だけど」
「何?」
私は少し思いとどまった。
本心をこの人に知られていいことがあるかどうか、少し考えてみたのだ。
考えた結果、その可能性はとても低いと見た。
「・・・やっぱり、なんでもない」
でも、少年は私の話し方やしぐさに何か感じたらしく、
「幸せなんだ?」
と言った。
そうだ。
この手紙が私の手元に届いた時から、不幸な事なんか1つもない。
誰も私を嫌ったりしない。
その状態に慣れかけている自分がいた。
「・・・そう。 でも、その手紙は君だけのものじゃない。未来の人・・・何億人って人のためにある。」
わかっている。
だから、判断に迷った。
「・・・わかりました。」
「何が?」
「私、『×』を書きます。」