<3>~救出者達、その裏側。~ (全員の合流)
今回99話目です!!
つまり次で100話目!!
“鳥”はカプリと首元に噛み付くと、そのまま立ち上がった。
篠崎も一緒に立ち上げられる。
肘鉄を食らわせたりと必死に抵抗するものの、“鳥”は篠崎から離れず血を吸い続ける。
「手前ぇ!!」
染山が“鳥”に攻撃しようとするが、 “鳥”は壁を背にして篠崎を前に突き出した。
つまるところ、盾にされてしまった。
「しくじった、じゃん」
染山が歯をかみしめて悔しがる。
こうしている間にも篠崎の顔は恐怖と嫌悪感に歪む。
「十島!!」
「言われなくても分かってる。でも、解決法が見つからない」
珍しくのんびりした口調を脱却している十島も、同じく悔しがっている。
「離れなさいよ!!」
紅も足で蹴ったりしているが、まるで効果が無い。
才能を使えず、手錠をされていては紅の攻撃もたいしたことが無いようだ。
「あ、か……」
篠崎の顔もだんだん蒼白としてくる。
「どうすれば……」
その呟きに答えるように、一つの人影が走り抜けた。
その人影は一直線に篠崎と“鳥”の元まで向かった。
「少々失礼します」
篠崎の顔面、それも首元に向けてその人影は殴りかかった。
ちゃんと腰の入ったストレート。
「グハッ!!」
だが殴られたのは篠崎ではなく、“鳥”だった。しかも、篠崎の首元を通り抜けるようにして殴っていた。
そんな攻撃が来るとは思ってもいなかった“鳥”はそのまま仰け反って篠崎から離れる。
「そ、相馬」
篠崎が呟く。
“鳥”を殴り飛ばしたのは、手錠の外し方を探しに行った相馬だった。
「ど、どういうことだ……」
人の首をすり抜けた?
「俺の才能、“通行許可証”。これは、どんなものでもすり抜けられるという才能でして。篠崎さん、首元に殴りかかるような風に見せてしまって申し訳ありません」
ペコリと相馬は篠崎に謝る。
「さて、あなたは誰なのですか」
相馬はそのまま“鳥”に顔を向ける。
「糞野郎」
「あれ? 相馬君?」
紅がその変貌振りに驚く。
「口調が、崩れてる?」
篠崎それには驚く。
「十島、指示を出せ。俺の才能は聞いていたな」
本当に普段の口調からは想像もできないような口調だった。
「本当、女の事だとお前目の色変わるじゃん」
「そういう訳ではありませんよ。ただ、女に手を挙げている男、というのがはらわたが煮えくり返るほど嫌いなだけです」
「そうだねー、相馬君に関しては才能が才能だから近接戦トップクラスだしー」
「否定はしない。目の色のおかしな男だな、化物が」
吐き捨てるように相馬は言う。
「なんじゃぁ? 訳が分からん。大体食事を邪魔されて本気でムカツいとんじゃ。死ね」
“鳥”は相馬に向かって走りこんだ。
そのまま連射のような速度で殴る、殴る、殴る――――――――、
「??? どういうことじゃ?」
だが、相馬にまったくダメージを受けた気配が無い。
というか、当たった音すらしなかった。
「どんなものでもすり抜けられるって言ったろ。俺はどんな攻撃でもすり抜けられる。さて、紅さんと篠崎さんは手錠を掛けられてますよね。染山、十島、さっさと牢屋の外へ出ろ」
「ん? あ、あぁ」「わかんないけどー、そうしようかー」
染山と十島はそのまま牢屋から出る。
それとすれ違うように黒い服を着た男が中に入ってくる。
「まったくよぉ、少年。お前結構燃える男だったんだなぁ。見直した。十分な時間稼ぎだよ」
“鳥”は相馬が前にいてその顔が見えない。
相馬はそのまま後ろ、牢屋に入ってきた男のところまで下がり、その身体をすり抜けて後ろに下がった。
「よぉ。そして止まれ。“白眼視”」
その身体をすり抜けて出てきた顔は有無を言わせず才能を使うと、“鳥”の動きが時間を止められたように固まる。
篠崎と紅はそのまま部屋にいたが、固まることは無かった。
「黒服さんでも、いい人はいるんですね」
「いい人じゃないさ。ただの気まぐれで金にうるさいおっさんだ」
「ありがとう、白道さん」
相馬は一礼する。
「じゃ、手錠掛けるか。この手錠も不思議なもんだよなぁ。手錠を掛けた者は才能を封じられるだけじゃなく、外からの才能も封じる。だがそれも完璧じゃない。身体全体に才能を掛けられると封じることが出来るが、部分的に掛けられると才能を封じられないんだからな」
そう、だからこそ手錠を掛けられている篠崎の首元をすり抜けて“鳥”を殴ることができ、白道の才能は部屋に残っている二人には効かなかったのだ。
「どうして、白道が……?」
未だに紅は白道の真意が掴めずにいた。
どうして私達を助ける?
「紅!!」
白道が“鳥”を止めた後、牢屋に入ってくる人がまだいた。
「赤井!?」
それは、他の場所で捕まっているはずの赤井夢斗だった。




