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Skills Cross  作者: 敷儀式四季
第五章
89/130

<2>~俺達と黒服との戦い。~ (劣化VS劣化)

だんだん話も佳境になってきました。

 B4F、祈side。


「私の相手はあなたなのね? 私は“DATディ・アフター・トゥモロー”よ。よろしくね」

 祈の前に現れたのは黒服の女だった。

 一つ特徴としてあげるなら、深紅のようにあかいネクタイだ。


「そう。私は富士祈。間之崎で理事長をさせてもらっているわ」

「まぁ、こんな自己紹介必要ないんじゃないかしら? さっさとぶっ潰されるんだから、私に」

「何言ってるの? 私がぶっ潰すんでしょ?」

 顔はかなり綺麗な二人だが、言っていることが汚かった。

 ある意味似た二人なのかも知れない。


 ゆっくりと“DAT”は祈に歩を進める。


 そして三歩ほど歩いたその時だった。


 “DAT”の体が急に伸びたように見えた。


「は……、あ……?」

 気がつくと、“DAT”の右拳が祈の中心に刺さっていた。

 いくら駆け出してもまだ届かないであろう距離から急に近づいてきたため、油断していた。

 息を吐き出すような抜けた声が出る。 


「こうして、ほい」

 予備動作も無く、左腕が伸びたようになって一瞬で左拳がまた祈の腹に刺さる。

 祈の腹に思いっきり刺さったその拳は祈をくの字に折り曲げ、すっ飛ばした。


「さて、もう負ける気がしないから言わせてもらうとさ、私の才能。“定点移動(クイックムーヴ)”って言うんだけどさ」

 ドスリとまた右拳が倒れこんだ祈に刺さる。


「これは劣化した瞬間移動と言っても遜色そんしょくないわね。動かしたいところまでを頭で想像すると、そこまで身体が一瞬でするの。とは言っても、距離は一メートル程。とはいえ、壁を抜けることも出来ない。これは凄く速く移動するって才能で、次元を超えてワープする訳じゃないから。それに腕とかを選択すると、この才能移動し終わるまで止まらないから、下手すると腕が千切れるとか起きるし注意が必要なんだけどね。だから、これは瞬間移動としても使えない」

 ドン!! ドン!!とたこ殴りに近い諸行をする。

「でも、こと戦闘に関しては使えるのよね。これには予備動作がいらないから、敵の油断もつけるし。」

 またもブンと拳が一瞬で祈に迫る。


 だが、その拳が当たることはなかった。


「痛ったいわね……。さすがに色々と死地を乗り越えてきたとはいえ……、ね……」

 どこを狙っているのか分からないその攻撃を、祈は顔を横にして避けていた。

 顔の横には拳。


「どうして、避けられたのかしら?」

 口調はまだ落ち着いたものだが、目は有り得ないものでも見るような目だった。


「あなたが滔々(とうとう)と才能を馬鹿みたいに喋ってくれたからね。私も才能を教えてあげるわ」

 皮肉たっぷりに祈は言う。

「へぇ、そりゃどうも!!」

 ブンとまたも予備動作無く“DAT”の拳が祈に迫るが、またも祈は身体を少しずらして避ける。


「私の才能は“一寸先の未来インフェリアー・フューチャー”。私もあなたと似ているわね。劣化したってところでね。」

 祈はゆっくりと立ち上がる。

「これは五秒先(・ ・ ・)の未来まで見れる。たった、五秒。だから、生活とかギャンブルでまったく使えない。劣化してるでしょ?」

 そして拳を構えた。

「でも、こと戦闘に関しては使えるのよね。戦闘では十分も一時間も先を読む必要は無い。五秒は最適な時間なのよ」

 先ほどの“DAT”と同じように言った。


「それは……。私の才能と相性悪すぎるわね。でも、それならどうして最初の方の攻撃を受けたのよ」

「私が読めるのは五秒。逆に言えばそれまでにほんの少しのブランクがあるの。攻撃は読めていたけど、間合いが迫って予備動作が見えてから動こうと思ったの。それに……」

「それに、何よ」

「あなたの才能が図りかねていたからね。まさか、自分で語る馬鹿がいるとは思えなかったけど」

 最後は思い切り馬鹿にした。


五月蝿うるさいわね。あーあ、勝てる気がしないわね。良いわよ。私は負ける戦いはしないタイプだから、血湧き肉踊るようなことはもうしないわ」

「自分の才能をばらすような馬鹿なのに、ちゃんと先は見えるのね」

「まだ引きずってるの? 小さい女ね」

「この程度で怒るの? 小さい女ね」

 まるで十年来の知り合いの会話のようだった。


「あなたとは気が合いそうね。コードネームじゃなく、本当の名前を教えて欲しいわ」

「私? 千崎(せんざき)継夜(けいや)。まるで男みたいだけどね」

「そう? いい名前だけれど」


 祈はまるで少年漫画で戦った相手と仲良くなったかのような感じで、戦いを終わらせた。




 と、ここで話は終わらなかった。


 何者かに祈はカチャリと銃が後頭部に突きつけられた。


「どうしたの? 私に欲情でもしたの?」

 祈はやはり挑発したようにその男に言った。


「ねぇ、何を血迷ったの?

 銃を突きつけていたのは、赤井太陽だった。

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