<2>~俺達と黒服との戦い。~ (回転VS化物)
ここからは戦いが連続して続きそうですー。
B4F、廻家side。
「簡単に自己紹介させてもらうなら、ワイは“鳥”。そして、これがワイの才能」
廻家の前に現れたのは随分となまりの強い男だった。
「う、うう……。うあぁぁああぁぁあぁぁあ!!!」
その“鳥”と名乗った男は急に叫び声、というよりは雄たけびのような声を上げだした。
すると、男の様子が少しずつ変化していく。
少しガタイが良くなり、口からは鋭い八重歯が現れた。
そして何より一番変わった場所は目。
その目は本来白目の部分が真っ赤に染まっており、黒目の部分は緑色、瞳孔はその緑より深い色へと変わって行った。
「化物が俺の相手か……?」
「化物……。確かにそうだなァ。俺の才能はそのまま、“吸血鬼”じゃからな」
「そんななまりの強い西洋の妖怪がいてたまるか」
「ハッ! そんな舐めた口を利けるのも今のうちちゅーこっちゃ!」
“鳥”はそう廻家に言った瞬間、消えた。
いや、正確には消えたように見えたのだが。
「がッ……!!」
気がつくと、“鳥”が廻家の目の前に迫っており、その拳は廻家に刺さっていた。
“鳥”はそこから一歩下がると、右足で回し蹴りを廻家の側頭部に叩き込んだ。
廻家は壁まで吹き飛ばされる。
「才能、“吸血鬼”ってのは簡単に言うなら伝説の通りなんだよな。怪力とかな。そしてワシは、油断なんせーへんからな」
“鳥”は廻家に迫り、圧倒的な拳を廻家に振りかぶる。
ドン、ドンと廻家が攻撃される。
「がッ! くッ! たぁ!!」
廻家は三発目の拳を両手で受け止めた。
「ワイの拳を受け止めたことには驚いたが、人にも、そして吸血鬼にも、手は二つあるんだぜ!!」
廻家が止めているほうと逆の手を“鳥”が振りかぶると、異変が起きた。
「ふざけんなや。俺の才能も使わせろ」
ゴキリと音がして、廻家が抑えていた方の拳が反対を向いた。
「いったあぁっぁぁああぁ!!!」
手首を押さえて“鳥”はその辺をのた打ち回る。
「まったく」
廻家はそのままノーモーションで足を凄い速度で振り上げ、“鳥”の顔面を蹴り上げた。
「俺の才能、知らないわけ無いじゃないだろ? “巡る輪廻”、それぐらい調べてるはずさ。っと、これ以上やると悪役っぽいな。俺」
向こうを見ると、“鳥”はゆっくりと立ち上がっていた。
「糞……ったれがぁあぁああ!!」
“鳥”は思い切りひねられた方の手をグキリと無茶に戻すと、頭を押させた。
「おいおい、そんな風に治さなくても良いんじゃないか?」
その状況を見ていた廻家も思わず引く。
「ワイは吸血鬼……、再生能力も馬鹿でかいんだっての!」
実際、“鳥”も拳を結んで開いてしていた。
そして、またも消える。
「夜闇……ってほどでもないが、気配を消すのは得意なんだぜ?」
今度は速度に身を任せた訳ではなく、本当に消えたようになったようだった。
地面は回転できそうに無い……、こりゃ、久々に本気で才能を使わなきゃならないか……。
「……死ね」
後ろから声。
廻家はそれに瞬時に反応して足のボールで回転して振り向くが、そこには両手をあわせて握り締めた拳が。
もちろん、吸血鬼の怪力で強化された拳である。
ドォンと大きく鈍い音を出し、その衝撃に耐えられず回転しながら吹っ飛んだ。
「吸血鬼の、目を舐めるな。今、上手くダメージを減らしたな?」
吹っ飛んだ廻家に“鳥”が言う。
「減らしてもよ……、痛いもんは痛いんだっての」
鼻から血を流しながら、よろよろと廻家は立ち上がる。
「そう言うなや。今のは頭部爆裂コース。普通なら後頭部からトマトみたいになっとるレベルなんじゃきーの」
「回転する力が無かったら、楽になれたのかもな……」
廻家は“巡る輪廻”を使って自分の身体を攻撃してきた方向に回転させることで、自分のダメージをある程度減らしたのだ。
「廻り廻るよ、世界は、廻る」
「ん?」
廻家はふと呟いた。
「世界は、偶然で出来ている」
「何言ってんだ?」
廻家は呟きを止めない。
そして廻家はゆっくりと腰に右手を回した。
「偶然から成功を手にするには、全力を尽くさねばならない」
そしてしゃがみながらも片膝立ちのような構えになる。
「自分が傷つくことを、恐れること無かれ。自分が慢心することを、恐れること無かれ」
「???」
“鳥”は訳が分からず廻家のペースに呑まれる。
廻家は、突然動いた。
思い切り踏み出すように“鳥”に近づく。
「どれだけ不意をついたとしても、吸血鬼の目はごまかせんさ!!」
“鳥”はその廻家のいきなりの挙動にも焦らず、対処した。
いや、対処したはずだった。
想像していた速さにあわせてカウンターを叩き込もうと思っていた“鳥”は、
気がつくと腹部を思い切り殴られていた。
……速い!!??
“鳥”は気がついた。
廻家が飛び出した速度よりも明らかに速度が上がっていることに。
廻家は自分に当てた右手で自分に回転の力を与えた。
それは、ぐるぐると回る、というようなものとは少し違っていた。
例えば、地球は丸いが、普通に生活している人間はそのことを自覚しているのだろうか?
答えはほとんどノー(イエスと答える人間は多分ひねくれた人)だ。
非常に大きな円を描けば、その中の弧は直線に近い軌道を描く。
廻家は大きな円の回転軸を回転させると考え、ほとんど直線に近い力を得、飛び出した速度よりも加速したのだ。
そして“鳥”の視界が少しずつ回転する。
「この拳には回転の力が掛かっている。一つは拳の威力を挙げるために、もう一つは――――――」
「お、おおぉぉぉぉおお!?」
“鳥”がぐるぐると回転しながら後ろに吹っ飛ぶ。
「お前に触れた瞬間に回転する力を与えてある。吹き飛べ。“回転の射手”!!」
その回転数は人間が耐えられるような数では無かった。
ドンッと“鳥”は壁にぶつかり、そこである程度ぐるぐると回転した後、ゆっくりと地面に落ちた。
「遠心力で内臓とかぐちゃぐちゃだろ。まあ、吸血鬼だからダメージなら再生できるのかも知れないが、ずれた内臓の位置はどうするんだろうな?」
“鳥”は沈黙していた。
明らかにしばらくは立ち上がらないだろう。
「語るってのは俺の性に合わないんだがな。時間稼ぎくらいにはなるな。それに……、語るのも面白い」
廻家は非常にかっこいい感じで戦いを終わらせた。
結構かっこいい感じになった気がします。
え? 私だけ?




