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Skills Cross  作者: 敷儀式四季
第五章
85/130

<1>~すべての人物が集結する。誰かが仕組んだことなのか。~ (6)

「“もう一人の自分(ドッペルゲンガー)”」

 B3Fに降りる途中で祈が呟いた。

「高原君は間之崎で一人の“二重才能者”なのよ。さっきのは二つ目の才能ね」

「二重才能って言うと、二つあるってことなのか?」

「その通り。彼は“観測者(オブサーバー)”と“もう一人の自分(ドッペルゲンガー)”。“観測者”はまあその字の通り観察、観測に重きを置く目にまつわる才能。で、問題の二つ目、“もう一人の自分”は簡単に言うなら自分の分身を作ることが出来るの」

「それで、エレベーターの陰から“月”の後ろに回ってあんなことが出来たってことなのか……。やっぱ才能ってのはすごいな」

 太陽は素直に羨ましいと思った。

「“二重才能者”っていうのはこういう“自分を作る”ような才能系の人に多いの。統計で出たそうよ」

「統計ねぇ……。そんな自分の分身を作るなんて才能がなかなか少ないと思うがな」

「それは言わない約束よ」


 高原の説明も終わったところで、叶が声を上げた。

「そういえば、高原君の言ってた弱点って何なのかな?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 B2F、ホール。

「“月”ちゃん。君の才能の弱点は同時に二つの力を使えないところだよね。だから、紅桜さんが君の重力から抜け出したとき一度俺達みんなの分の重力を解いてから斥力を使った」

「……」

「二度目は俺を引き寄せてから、引力を外してから自らの腕の重さを変える重力を使った」

 二人になった高原は交互に“月”に喋る。


「どうして、あなたが二人になっているの?」

「そいつは簡単だ。俺の才能“もう一人の自分(ドッペルゲンガー)”。こいつは簡単に言えば自分をもう一人作れる才能だ」

「二重才能者って……、こと?」

「そういうことだ」

 “月”はそれを聞くと立ち上がった。


「なら、さっさと両方倒させてもらうまでよ!!」

 “月”が上から下に手を下ろすと、急に体が重くなり立っていられなくなった。

 そのまま高原×2と姫岸は地面にへばりつけられる。


「お、これは……」

 気づくと、高原が一人に戻っていた。


「どっちにしろ、私の重力で押しつぶしちゃえば問題ないんだから」

 グッと身体に掛かる力が大きくなった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 五人となった太陽達は下に降りると、そこもやはりホールとなっていた。

 そこに立っていたのは一人の男。

 その男は、ワイシャツ一枚で腕まくりして立っていた。

 そして、右腕だけが何かを腐らせたかのような茶褐色をしていた。


「“(ウィンド)”か……」

 桜がその顔を見て、つい最近戦った男だと分かる。


「紅桜!! お前に一騎打ちを申し込む!!」

 “風”は桜を指差して叫んできた。


「構わないぜ? その代わり、他の人たちは通してくれるんだろ?」

「もちろんだ。ほら、さっさといけ」

 “風”が横を見やると、下りの階段が出ていた。


「おい、いいのかよ?」 

 太陽が不安げに聞く。

 太陽は一目見て目の前の男の実力が分かったのだろう。

「こいつは俺を指名してきたんだ。なら、それに答えるのは当然だ」

 桜は一歩前に出る。


「男ってほんと馬鹿……、行くよ」

「えっ!? お姉ちゃん桜さん放って行くの!?」

「あの男はどうせ私達の言葉なんて聞かないタイプよ。それより、相手のほうが犠牲は一人でいいって言ってくれてるんだから。その間に私達はみんなを助けて脱出しましょう」

 祈は叶を説得していた。


「お前、アイツの才能知ってんだろ?」

「えぇ。まぁ」

「……。そうかよ。まぁお前に限って心配はしてないさ。さっさと勝って来い」

 廻家はかっこよく締めた。


「行くならさっさと行け。俺の才能はお前らを巻き込みかねん」

 “風”が待ちかねて桜以外の四人を急かす。


「分かったっての」

 四人はさっさと階段を降りることに。


「俺は今から怪物(・・)になる」

 “風”はそう呟くと、自分の茶褐色の右腕の二の腕の辺りについていたわっかのようなものに左手で手を掛ける。


「こいつは俺の才能を封じるためにあるものなんだ」

「封じる?」

 “風”の才能は“滅亡の右手(ジェノサイド・ライト)”。

 触れたものを腐らせる才能である。


 わっかにあるボタンを左手で押すと。それが開いて外れる。

 そのわっかはどうやらおかしな構造をしていたようだ。

 わっかの内側に一本長い針のようなものがあった。

 “風”の二の腕にはそれでつけられ続けていたのであろう穴が開いている。


「自分に刺さってたのか? その針」

「俺の才能の元は超活性。別にこの程度の傷は痛くも無かったさ」

 その言葉通り、二の腕に開いていた穴は見る見るうちに塞がっている。


「“滅亡の右手”の本当の能力は超活性か。ならさしずめその力が強すぎて耐えられない物体が腐敗するってところなんだろ?」

「流石桜。それだけで見抜くとわな」

 いや自分でほとんどのヒント与えてたような……。


「俺は元々化物だったのさ。自分の才能をコントロールできない、な」

 喋りながらも“風”は驚くべきことをした。

 自分の“滅亡の右手”と左手を合わせたのだ。


「おい……、そんなことしたら、左手が腐っちまうんじゃないか!?」

「だが、それを“創造主”が助けてくれた」

 桜の言葉を無視して両手を合わせる。

 すると、左手は腐ることなく茶褐色だけがゆっくりと左手にも移っていった。


「……どういうことだ?」

 桜が首をかしげる。

「この“滅亡の右手”は元々俺の体全体にあった才能だ。それを“創造主”が努力して右手だけに抑えて封印してくれていた」

 ゆっくりと、じんわりと。

 茶褐色は右腕のほうからも“風”の身体を侵食し、顔の右半分も茶褐色になりつつあった。


「俺はこれを開放することで、化物と化す」

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