<1>~すべての人物が集結する。誰かが仕組んだことなのか。~ (4)
「重力か。なら、こうさせてもらうか」
桜は磔のままそう言うと、クッと力を入れると壁に対して垂直に立った。
「嘘っ!? 今あなたたちには身体中に1.5倍の重力がかかっているのよ!? 体重の半分の重りがついているのと同義なのに!?」
“月”の顔が驚きに染まる。
「この程度、へでもないっつうの」
桜はそのまま円柱状になっている壁を走り出した。
すると、あるところを境にしていきなり重力が元に戻った。
桜は重力の位置が九十度変わってバランスを崩しかけるが、片手を地面についてから見事に着地する。
「もうっ!! 面倒くさいな!!」
そういらいらした口調で“月”は叫ぶと太陽達にもかけていた重力を外した。
磔がとかれて自由になる。
「どうして解いたんだ……?」
「まだ、手はあるってことかしら」
なんにしろ警戒は解かない。
「本当はああやってして時間を稼ぐつもりだったんだよ? でもこうなったら、私の奥の手で戦ってあげる。さあ、来なよ」
自信満々に“月”は平らな胸を張った。
「とりあえず、行かせてもらうね♪」
戦闘で一番怖いものはそれを楽しんでいるもの。
叶の口調はそれに近かった。
叶はダッシュで“月”のところまで行き、その勢いそのままに掌底を打ち込もうとしていた。
「あ、あれ?」
だが、異変が起きた。
叶の掌底が、“月”に触れるぎりぎりのところで止まっている。
そして、バチンとはじき飛ばされた。
「よく考えたら、最初からこれでいけばよかったのかも知れないね?」
“月”は無邪気に顔を傾ける。
「斥力」
高原はふと呟いた。
「なんだそりゃ?」
桜が聞く。
「斥力っていうのは、簡単に言うならはじき返す力。磁石の同じ極同士をあわせようとすると反発するじゃないですか。あれと同じだと考えてもらえれば結構ですね」
高原は饒舌に語る。
「彼女は自分から言いましたからね」
“私の才能は重力、引力、斥力を操るの”
「あ、そんなこと言っちゃったかも?」
“月”は慌てて口を押さえている。
「さて、俺も才能を使わせてもらいますかね。“観測者”、“個人観察モード”」
高原はじっと“月”を見つめ始めた。
「他の方はどうぞご勝手に戦うなり話すなりしてください。その間に弱点でも見つけます」
高原は何事も無いように話した。
「どうしてそんな風に軽い気持ちでいられるのかなー?」
“月”がこちら、高原に手を向ける。
「おぉ!?」
その瞬間、グッと高原が“月”に吸い寄せられた。
「私は引力だって使えるんだよー?」
「引き寄せる力……、しくじった!!」
「何やってんだよ生徒会長さんよ!」
太陽は拳銃を向ける。
「駄目! 斥力がアイツには働いているのよ! もしも跳弾が来たらどうするのよ!」
祈がそれを慌てて止める。
「でもよ!?」
「大丈夫。私の見た未来じゃあ、彼は助かる」
「……お前の“未来視”か」
「私のはそこまで強い力は無いけど。劣化版に近いのよ? まあ見てなさい。彼は伊達や酔狂で名門間之崎の生徒会長をやっていないわ」
その祈の言葉は、迫力に満ちていた。
「私は随分と腕とかひ弱だけどー」
“月”が高原に向けていない方の腕を見せる。
その肌はとても白く輝いていた。
「重力を操るってことは、重さを操るってこと。攻撃って言うのはー」
高原がもう“月”の目と鼻の先まで近づく。
「重さと速さで威力が決まるんだよ!!」
“月”は白い腕のほうを思い切り振りかぶり、引き寄せられていた高原に思い切り殴りかかった。




