<2>~二人は互いに話し合い、今の状況を理解する。~ (2)
「……………………、マジですか?」
「マジよ。何度も言わせないで」
「うーそーだー!!有り得ないって、いまどき世界征服とか!!何世代前の魔王だよ!!」
いやいや。
この時代に世界征服とか。
できるわけ無いじゃないですか。
「私だって最初は有り得ないと思ったわ。でも、これは本当よ。じゃなければあんなに私のことを追ってこないでしょう」
「……百歩譲って残念なことにそれが本当だとして、お前はどんな秘密を握っちまったんだ?」
「実は、私もまだ知らないの」
「は?」
秘密を知らないで追われてるってどういうこと?
すると紅はそんな俺の心の声を読んだように言った。
「赤井の言ったことは分かるわ。私の握っている秘密って言うのはこれなの」
紅はそう言いながら首元からひとつのペンダントのようなものを取り出した。
それは小さな長方形で赤色をしていた。
「何だそれ?」
「これはUSBメモリー。この中に秘密があるって言われて、今家に帰っているところだったの。まだこの中は見てないから、私は知らないの」
「なるほど。そういうことか。」
ん?
今の言葉の中におかしなところがあったな。
「なあ、『秘密がある』って、誰に言われたんだ?」
少し気になった。
たかだか高校生程度の人間がそんな秘密を握れるとは思えなかったからだ。
これは、聞いてはいけないことだったのだが。
「このことを言ったのは、私のお母さん。このUSBを渡して、死んじゃったんだけどね」
………。
「悪いな。嫌なこと思い出させちまって。すまなかった」
「べ、別に気にしてないから、大丈夫なんだから……」
明らかにへこんでんじゃねーか。
こりゃやっちまったな…。
金輪際この話題は出せそーにねーな。
「じゃ、じゃあよ紅、お前、どっから来たんだ?」
「“都市”よ。私も才能持ち。私と母さんは才能を持っててそこに住んでたんだけど、父さんと兄さんは持ってなかったからこっちに住んでるの。いまは父さんのほうの家に行ってるの」
「そうか、やっぱり“都市”に。なら、お前の才能は何なんだ?」
「“超跳躍”。それが私の才能。簡単に言うなら脚力の強化ね。って、やっぱりってなによやっぱりって」
「だってお前ものすごい勢いで飛んできたじゃねぇか。それにあんな才能を使う奴等に追われてたもんな」
「ん、確かに」
そうしてひとしきり話した。
この出会いは、赤井のこの後の人生を大きく変えることになるわけだが、そんなことをこの状況で知るものはいなかった。




