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Skills Cross  作者: 敷儀式四季
第四章
79/130

<4>~“都市”、乱れに乱れり。~ (7)

 10:44、都市Eブロック。


「見えた♪」

 今まで高原の言うとおりにハンドルを切ってきた叶が目の前の車両を見て喜んだ。

 その目の前にはトラックが。


「あの中に鍵音も居るわけだ……。待ってろよ」

 桜はその中に居る妹の顔を思い出し、改めて決意する。


 どうそのトラックに突入したものか七人は考えていたのだが、トラックは不意に右に曲がるとあるビルの中に突っ込んだ(・ ・ ・ ・ ・)


『は!?』

 七人全員で間抜けな声を上げてしまった。


 だが、衝突音のようなものは全く聞こえなかった。

 何故なら、そのビルの手前のコンクリートの一部が下がり地下への入り口が開いていて、トラックはその中に入っていったからだった。


「トラックはこの中です!」

 高原は叫ぶ。

「じゃあ、行くっきゃないでしょ♪」

 叶は元気な声を上げると、下がって斜面になっているコンクリートが上がる前に中に入った。

 後ろの祈たちも中に入る。


 中に入ると少し小さめの地下駐車場のようになっていて、トラックが奥のほうに頭から入って止まった。

 ここまで来たら向こうも警戒してくるだろう。

 緊迫した雰囲気の中、この地下駐車場のトラックが止まった荷台の後ろの扉が開き、多くの黒服が出てきた。


「団体様のお着きだぁ!」

「元ネタ分かる人が少ないわね」

 太陽と祈が車から降りて対応する。

「俺も加勢させてもらおう」

 祈の車の後ろから着いてきていた廻家も前に出る。


「あの三人が何とかしてる間に、私達はトラックの荷台から二人を助け出すよ。私は赤井君を。桜さんは鍵音さんをお願いします。高原君は敵の動向を逐一報告して。姫岸さんは車に残って待機部隊となってもらうね。依存は?」

「「「……」」」

 沈黙で答える三人。

 別に何も考えていなかったわけではなく、的確すぎる指示に驚いていたのだ。

 この人は本当にただの一介の教師なのだろうか。あまりにも場慣れ(・ ・ ・)している。


「急がないと。私達が入ってきたあの道がいつ閉じるか分からないんだから」

 そう叶はいい、そっと車から出る。

 だが、黒服はそのトラックを囲むようにしていて、付け入るようなところは無かった。

「……。急ぎたいけど、ある程度待ったほうが良いわね」

 そうして三人は少し前に進んで柱に隠れた。


「実戦なんて日本に帰ってきてからしてなかったな。さて、どこまでいけるかな?」

「大剣の一振りで手錠を壊すような芸当をする男が言うセリフじゃないわな」

「……みんな、落ち着いてるわね。機関銃を向けられているのだけれど」

 三人は全く状況にそぐわない会話を繰り返していた。


「お前達、何者かは知らんが手を挙げて投降したほうが身のためだぞ!!」

 黒服の一人が大声で叫ぶ。


「って言ってるけど、どうする?」

「無視じゃねぇの?」

「……、俺、アンタと良い友達になれそうだ」

「全くだ」

 太陽と廻家は会話を止めていなかった。


「黙れ! 何を普通に喋っておるのだ!!」

 黒服が苛立った声を上げる。


「俺が威嚇で機関銃を落とさせる(・ ・ ・ ・ ・)から、後は何とかしてくれ」

落とさせる(・ ・ ・ ・ ・)? あんた才能持ってるのか?」

「いや? 俺はそんな超能力は持ってないさ」

 太陽の言っている意味が分からなかった。


「銃弾も今頃手に入りにくいし、あんま使いたくないんだが……、特例で良いよな。才能が無いからって弱いとは限らないところを見せてやろう」

 太陽は腰に手を掛けた。


 相手が油断している隙にさっさと決着けりをつける。


 太陽はそう思うと、六丁の拳銃を一気に自分の頭くらいの高さまで放り上げる。

 そして銃弾が同時に前方180度あらゆる方向から撃ち出された。

 その銃弾は見事に黒服の機関銃に直撃し、はじき落とす。

 太陽がしたことは至極明快だった。

 同時に何発も拳銃を撃つことは不可能だ。

 だから太陽は二丁ずつ拳銃が落ちないように撃って少しあげ、また落ち始めている拳銃を撃って少しあげ、を繰り返し続けた。

 恐ろしい速さで、また、同時に二つの拳銃を撃っているにもかかわらず有り得ないほどの命中率で。


 黒服の顔がいまだ何が起きたのか分からないでいる。

 そのほうけている間に廻家が才能、“廻る輪廻(スピンアウト)”で足のボールを回転させ一気に黒服に近づき機関銃を拾う。

 そのまま廻家はしゃがみこむと、回転して足払いを掛ける。

 5.6人ほどが一気にこける。

 そしてこけた黒服を超え部隊の中心に乗り込むと、片足を身体に垂直に出しもう片方の足で回転を掛ける。

 こまのように回転すると、黒服が円状に蹴られ一方向に飛んだ。

 ある程度状況を的確に判断していたものはかがみこんで避けた。

 そのうちの一人が軸足をスライディングで狙いに来るが、それをネリチャギのように振り下ろして対処する。

 足を振り下ろした後、黒服がナイフを取り出したのでこれもしゃがみこみで避けると地面に手をついた。


「“巡る輪廻”は一対多に強いからな。こういう状況、陽動みたいなのは得意なのよ!」

 地面のコンクリートに才能を使い、コンクリートに亀裂が入る。

 亀裂は二つ、廻家の周りに小さく一つ、もう一つは黒服を囲んで大きな円を。

 そして大きな円が凄い速さで回転した。

 黒服はバランスを崩して倒れこみ、外にはじき出される。

 廻家の居るところは回転していなかったようだ。

 はじき出されて転がっている黒服に廻家は止めを刺す。

 転がっている黒服に近づき腕を掴むと、そのままジャイアントスィングのように身体をぐるぐる回転させ投げ飛ばした。


「廻家さんって、凄いですね」

「助けておいて正解でしたね♪」

「さっさと行きましょう」

「じゃあ行くか。トラック空けるんだろ?」

 四人はこの間にトラックに忍び寄りつつも、廻家の戦闘をつい見てしまっていた。


 トラックに手を掛けると、鍵は開いていたようで簡単に開いた。


「鍵音っ!! って、あれ?」

 桜が先陣を切って乗り込むも、その中には誰も居ない。


「もう、運び込まれた……? あの時!?」

 叶先生はある可能性に一瞬で辿り着いた。


 黒服がトラックを囲みこんだ時。

 あのときの間にすでにもう運び込まれていた、ってこと……。


「なぁ、このトラックに本当に入ってたのか?」

 桜が不思議そうに聞く。


「赤井君も紅さんも、もう中に運び込まれちゃったのよ!! 早く追いかけるわ!!」

 その指は、黒服たちが出てきた扉を指していた。

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