<4>~“都市”、乱れに乱れり。~ (6)
10:11、間之崎から北に200mの地点。
“yesterday”を倒した桜はなんか食べておけば怪我も治るだろうと思い、さっき“yesterday”が出てきた穴から家に入り、簡単な料理を作った。
それをすばやく食べると、血がついてしまった衣服を片付けクローゼットから適当な服を取り出した。
「泥棒とか堅いこと言わないでくれると嬉しいな全く」
それを着て間之崎学園に向かうことにした。
そうして穴から出ようとする際、一台のトラックが道を走っているのが見えた。
こんな状況でトラックが通っている?
そう思い少し気に止まったが、関係ないだろうと無視した。
急いで向かうこととしよう。
そうして数分走って門の目の前まで着いた。
さあ入ろうとしたそのとき――――――――――――、
軽自動車が突っ込んできた。
「いきなり黒服の攻撃か!?」
そう思ったが、その軽自動車がぎりぎりで止まった。
そして、その車から一人の女性が降りてきた。
「ごめんなさい!!」
その人は随分と可愛い女性だった。
「いいっていいって」
ついつい普通に許してしまう。
どうやら車は二台あるようで、後ろの車から出てきた男が俺に話しかけてきた。
「ところでアンタ、まだ捕まっていないようだが。何者だ?」
「何者……、名乗るほどの者じゃないが……。俺は紅桜。俺の妹がここに居るはずなんだ」
彼らは悪い人ではないように思えたので、普通に自己紹介することにした。
「あなた、紅さんのお兄さんね!」
苗字が紅といえば、と叶は自分のクラスに居る女子を思い出す。
「アンタ知り合いか?」
「あなたの言っている人が私のクラスの鍵音さんならそうなるわね。担任をさせてもらっているわ」
「じゃあアンタ……、いや貴女が富士叶先生ですか! あんな速度で飛ばしてきたからそんなこと思いませんでしたよ」
決して皮肉ではなく言ったつもりだが、
「その、ごめんなさい!!」
どうやら勘違いされてしまった。
「私の妹が、悪かったわね」
「いえいえ。別に死んでないんだから、別にいいんじゃないんですか?」
後ろの車からまた美しい女性が出てきて俺に謝ってくれた。
口ぶりからして俺を轢きかけた人と姉妹らしい。
だが、随分と雰囲気の違う二人で、この人は大人の雰囲気をかもし出している。
「で、鍵音はどうなってますか? 捕まってるなら開放しに来たんですが」
「その……、私達もそれを追ってる最中なんです。乗りますか?」
叶の車に乗せることにした。四人乗りなので一人空いている。
「追ってるっていうのは?」
「トラックに乗っていったんです。それを追わないと……」
それを聞いて、一つ思い出す。
そういや、さっきそんなトラック見たな……。
「じゃあ、行きますよ♪」
桜を乗せた軽自動車が唸りを上げて走り出した。
「うおぉぉおぉ!! はぁぁぃぇええぇぃいいぃぃぇえぇえぇ!!」
そんじょそこらの絶叫アトラクションよりも怖かった。
何せ絶対に死なない(死ぬときはそのアトラクションの不良)アトラクションと違って、死の恐怖がある。
可愛い彼女にこんな走り屋の一面があるとは思わなかった。
「高原君。道はどうしたら良いの♪」
「ふた、二つ目を右です!」
何より一番かわいそうなのは助手席に座っている彼だろう。
どうやら彼の才能でトラックを追っているそうで、そのためにも前に座らないといけない。
「あ、速度を落としてください!! 右に曲がった先に一人捕まっている人が居ます!! 黒服も周りに居ません! 助けましょうか!?」
「助けるっ! 先生として!」
二言で高原の問いに答えると、右に曲がった先で人が一人手錠を掛けられていた。
「大丈夫ですか!?」
今回は先に人が居るのが分かっていたので、急ブレーキを掛けることなく止まった。
その道の真ん中に一人の男が手と足に手錠を掛けられ転がっていた。
その周りはコンクリートがめくれ上がっているところもあった。
叶がその男に駆け寄って聞く。
「あぁ。済まないな」
もはや恒例化したように太陽が切って手錠を壊した。
「名前は?」
太陽が聞く。
「廻家界視。お前達はどこに向かってるんだ?」
その男、廻家が俺達に聞いてきた。
「私達はあなたを捕まえた人達でもある黒い服を着た人たちの後を追っているのよ」
捕まっていたから彼も無害だろうと叶が説明する。
「へぇ。俺は間之崎学園でちょいと待ち合わせしていてな」
廻家は焔との約束がある。
「そういや、あの焔って男も間之崎で会いたい奴が居るとか言ってたが……、そりゃアンタのことか?」
太陽が思い出したように言う。
焔がそんなことを言っていた。
「あぁ! そいつだ! 今も間之崎に居るのか?」
「いや。桜島って男と今もバトってると思うわ」
「そうか、あの野郎またなんか悪いことしてる奴でも見つけて制裁にかけてるのか……。そうなってるならしばらくは止まらんな。相手がご愁傷様だ。それより絶対俺のことなんて忘れてるだろうしな。なら、俺もお前達に付いて行って良いか?」
しばらく一人で語っていたかと思うと、こちらに仲間にしてくれと頼んできた。
「またこのパターンかよ」
なんとなく予想できた展開に太陽は頭を抱えた。
「心配するな。俺は車に乗る必要は無い」
「は? どういう意味だよ」
太陽が頭を傾げるが、まあまあと廻家になだめられる。
そしてそのまま出発することに。
すると廻家は太陽達の車の後ろの突起を掴んですべるように進みだした。
「足の下にローラーでも仕込んでやがったのか……」
太陽は呟いた。
現在、七名。




