<4>~“都市”、乱れに乱れり。~ (3)
「おいおい、そんなこと言うなよ!! 助けてやったんだぜ!?」
助けた男に逮捕するぞと脅される。
コントかよ。
「何があっても、俺は法を曲げることは出来ん。そうやって持っているだけなら何も私は言わなかったのだ。大剣は許可証でもあれば問題ないし、銃はモデルガンと思えば良かったからな。なのにお前はその剣を抜き叩っ切った。それは十分法に触れる」
滔々と喋る焔。
「ま、待てって! 俺は焔さん、アンタが手錠を外してくれというから外してやったんじゃないか!!」
「叩っ切れとは言ってないぞ。ちゃんと鍵だってあったんだ」
そうして鍵を目の前で振る。
「何で捕まった奴が鍵を持ってるんだよ!! それともなんだ? 自分で持ってた手錠を間違って掛けちまったとでも言うのか!?」
「いや、そういうわけではない。これは警察の手錠ならどんなものでも外せるマスターキーのようなものだ」
「なんで持ってんだよ!!」
「俺が都市警察総長だからだ」
「……あの都市警察のトップ……。アンタが……?」
太陽はドン引きしていた。
「まあ、あんなふうに捕まっていては疑われても仕方がないがな」
「成程。随分と堅物な訳だ。アンタがあの“炎の執行人”ってやつな訳だ。焔さん。なあ、ならどうして焔さんはこんな風に拘束されてたんだよ。相当強いって聞くぜ?」
太陽は呼び名自体は知っていたようだ。
目の前の男とは思わなかったようだが。
「ある男だ。この都市を占領している黒服のグループの幹部とでも言うのか……。名を白道と言っていた」
焔は負けた相手について話す。
「白道!? 白道月影か!?」
太陽は焔のその話題に随分と食い付いてきた。
「そうだが、知り合いか?」
「ああ。そうか……、やっぱりアイツこういう悪の組織っぽいところについてたのか……」
太陽はぶつぶつと呟きだした。
「知り合いなのか……。まあ、お前もアイツも同じ場所で合わせてやる。拘置所でな!」
「だから待てって!!」
太陽は大仰に手を振る。
焔は忘れていなかったようだ。
「司法取引! 司法取引ってのはどうだ!!」
「司法取引?」
太陽が司法取引を持ちかけた。
この堅物の男にはこういう正攻法で攻めたほうが良いだろう。
「俺はアンタと一緒に戦おう。黒服も殺さずに捕まえるつもりだ。だから今捕まえるのはやめてくれ」
とにかく太陽としては間之崎学園に辿り着くことが大切だった。
息子に会うことが、大切だった。
「俺は司法取引というものがあまり好きではないんだがな……」
あれ、地雷ふんでた?
太陽はそう思ったが、それも杞憂となった。
「いいだろう。乗ってやる。俺もあまり助けてくれたお前のことを捕まえたくは無かったからな。それならば一応法の下に平等だ」
焔も納得し、二人で間之崎学園へ向かうことになった。
のだが。
「さ、おぶってやる」
「何言ってんだアンタ!?」
焔が急にしゃがみこんでおんぶする格好になった。
「何って、おんぶだが?」
「どうしてここでおんぶを迫って来るんだよ!!」
ここでおんぶを迫るとはね……。
理解に苦しむ太陽。
「じゃあお前、才能を全開にした俺に着いて来れるのか?」
「ん? 瞬間移動系の才能なのか?」
「いや、俺はもっと物理的だ」
「物理的?」
数分後。
「いやー、快適快適。しかしすんごい速度だなー。」
「まあな。俺の才能“極めれり炎”は発炎能力の究極系だ。この程度造作も無い」
今の状況を簡単に言うなら、空を飛んでいた。
焔は足から炎を出し、かなりの速度で飛んでいる。
太陽も焔におぶってもらい、その背で快適な空の旅を楽しんでいた。
それからさらに数分後。
「ほら、見えてきたぞ。間之崎学園だ」
焔が顔を向けるとそこには、間之崎学園があった。
そこに見事に着地する。
目の前では、ある戦いが終わりを迎えようとしていた。
ある女性が男に手錠を掛けられていたのだ。
「舞人……、桜島舞人か……」
焔は手錠を掛ける側の男を見て呟いた。
「お前……、祈じゃねぇか……」
太陽は手錠を掛けられている側の女を見て呟いた。




