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Skills Cross  作者: 敷儀式四季
第四章
69/130

<3>~“都市”、いたるところで戦闘開始。~ (6)

 9:30、廃ビル外、西に1kmの地点。


「逃げても無駄か」

 ジェット機のように足と手から炎を出して飛んでいた焔がゆっくりと地面に落ちる。


「やっと、止まって、くれたか、よぉ……」

 ぜえぜえはあはあと息を切らしながら白道が止まる。


「おっさんにこの運動は地獄だってのぉ……」

 どうやら白道はおっさんらしい。


「お前を倒したほうが速そうだ。白道」

「そのほうが俺としても楽だな」

 余程白道は走るのが嫌いのようだ。


「まずは、お前に才能を使わせないことが重要か」

 そう焔は言うと、手からバーナーの炎を大きくしたような炎が噴きだした。

「やばいってのぉ」

 そんな炎が自分に向けられていると言うのに、全く動じる気配の無い白道。


 白道はスーツから長方形の黒い布を取り出した。

「さて、白道月影のマジックショーをご堪能あれ!!」

 白道は叫ぶと、黒い布を身体の前面に広げた。

 そして白道の姿が見えなくなる。


 そのまま黒い布に炎が直撃した。


 白道が身体の前に出していた布ごと燃えるかと思われた。


 が、

 炎は白道の前で壁のような何かに当たると、その壁に邪魔されてそこから先に進まなくなってしまった。


「……なんじゃそりゃ」

「マジックショーってなぁ」

 焔は呆れ、白道は黒い布を手に掴む。

「圧倒的な攻撃力を持つ焔さんに、どこまで時間を稼げるかなっと」

 そこで白道はマントを左手に持ち、右手でスーツの右外ポケットから手のひらにすっぽり収まるくらいの深緑色の物を取り出した。

「俺特製の手榴弾、威力は折り紙つきだってぇのぉ!」

 その手榴弾の安全ピンを口で抜き、そして焔に投げつけた。

「これで炎は使えまい!」

 かん、こん、と地面を転がっていく。

「こんなもん」

 焔が手から炎を出し、思いっきり後ろに下がる。

 白道は走って前進すると、またも黒い布を身体の前に出す。


 ドォンと爆発。

 一瞬地面が振動したかのような錯覚を受ける。


 コンマほど遅れて爆風が吹きすさぶ。


「止まれや、“白眼視(ホワイトアイズ)”!!」

 白道は爆風が終わった瞬間黒い布を身体からのけ、焔のいた方向を視た。


「そういうことか」

 白道の後ろから声がした。


「嘘だろぉ……」

 白道が視た方向には誰もおらず、後ろに焔が立っていた。

 焔は爆弾が爆発した時に足と手から炎を出して上昇して、白道の後ろに回っていた。

 白道は前に黒い布を出していたので、その一連の動作が見えなかったのだ。


 そのまま白道は後頭部に手を当てられる。

 つまり、命を握られたも同然。


「お前の才能は分かった。お前は、対象物の(・ ・ ・ ・)時間を(・ ・ ・)止められる(・ ・ ・ ・ ・)んだな?」

「まぁ正解だ。あんなまどろっこしい言い方からよくここまで思いついたな」

「『世界の(ことわり)を外して止める』ってのは、物体の時間を止めること。時間の止まった物体はどんなものの影響も受けなくなる。炎だろうと、爆風だろうとな。お前はその布の時間を止めて防御していたんだろう。これほどいい防御も無いな」

「……ちなみに、昔にこの才能を極めた神話の化け女がいるんだが」

蛇女(ゴーゴン)か。まあ本当にあの時代なら時間を止めるなんて概念も無いからただ固まる=石になると勘違いしてもおかしくないな」

「それに何者も壊せないほど堅くなるからな。堅い=石ってのもあったんだろうよぉ」

「とにかく、お前はその才能を使っていたわけだが、そんな才能にも弱点があるわけだ。一度それを発動すると他のところの時間は止められないんだろ?」

「くそ、アンタ頭良いな。もういい、俺を焼くのかぁ?」

「そんなことはせん。ちゃんと法という絶対的正義の元に罰してもらうのみだ」

 焔はそこで左手を使って腰から手錠を取り出す。


俺達(・ ・)を随分と侮辱してくれたな。警察ってのは大体使えないものの象徴みたいに言われてるが、ちゃんと仕事はしている」

 その言葉は怒りに満ちていた。

「流石は、部下がやられて怒るのも無理ないか……」


 焔は、今日の深夜ごろから警察が何者かに襲われている報告を受けていた。

 そのためどう動くか考えていたのだ。


 現場に向かってみると、幸か不幸か死者は出ていなかったが、なくなっているものが共通してあった。


 手錠。

 才能を封じる手錠がなくなっていた。


「まったく、ここまで大規模に動くとは考えていなかったさ。ほら、手を回してさっさとお縄につきやがれ」

 そうして手錠を掛けようとした。


 白道も素直に後ろに手を回す。


「まだ死ねねぇっての!! “白眼視(ホワイトアイズ)”!」

 白道は焔が手錠と後ろに回した手に意識を逸らしたその一瞬を見逃さなかった。

 勢いよく振り返ると、才能を使った。

 白道はもうとっくに最初に使った才能を解除していたようだった。


 焔がそのまま固まる。


「油断、かっこ悪ぃってなぁ。実戦経験の差かな、才能に頼りすぎだ。甘い甘い」

 まるで達観したように白道は固まった焔に語る。


 そして、白道は手袋をつけ、手錠をとりだすと焔の腕に掛けた。


 ブンッと焔の手錠を持った手が空を切る。

 才能の効果が手錠に触れたことで封印されたのだ。


「これで終わり……、これは……!?」

 焔が手に掛けられた手錠に気づいた。


「もうお前は才能を使えない。俺の勝ちだなぁ」

 白道は得意げにそう言い放った。

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