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Skills Cross  作者: 敷儀式四季
第四章
67/130

<3>~“都市”、いたるところで戦闘開始。~ (4)

“藤崎が死んだ、死んだ……”

“ダカラ、俺ニ貸セ、ソノ身体”

“でも……”

“アイツヲ潰ス。ソレガ出来ルノハ俺ダケダトハ思フガナ。アノ男ハ強イゼ?”

“うぅ……、じゃあ……”

“OK。契約成立。復讐ノ為ニ俺ハ動コウ”



(さてさて、俺もそろそろこの場から離れさせてもらうとするか)

 黒服はそんなことを考え、叫んでいる天音を尻目に去ろうと後ろを向いた。


「ああぁぁっぁぁあああぁぁっぁぁああっぁぁあっああっぁっぁぁぁぁぁあああああああああぁっぁ!!!」

 悲鳴と共に同時に大量の電気が天音から放出された。

 暴走にも近かった。

 黒服がその電気と悲鳴のBGMを聞いていると、その音はゆっくりと落ちていった。

「ああぁぁぁっぁあっぁあぁ……、あぁああぁぁあっぁ……、ぁあぁああぁ……」

 叫び疲れたのだろうか。

 そう考えていた。

 そしてその叫びは止まった。

 同時に電気も止まる。



 変化は唐突だった。

「ハ……、」

 最初はまた悲鳴をあげようとしているのかと思っていた。


【ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!】

 爆笑。

 気が狂ったのかと思ったが、この笑い声は違った。

 歓喜。

 打ち震えるような喜びに満ち満ちていた。


 ゾクリと黒服は寒気がした。

 こんな状況で笑えるような学生がいるか?

 いくら憎んでいた者でも、死を見ればそんなことは言えなくなるだろう。

 それに仲の良いように見えた。

 というよりは恋愛に近いほどの結びつきのレベルだ。

 振り返って見ると、そこにはさきほどまで泣き叫んでいたはずの男が顔を喜びで歪めていた。


【ハハハ……、ットォ、流石ニ笑イ転ゲ過ギルノモ問題ダカラナァ。オ前ガ藤崎ヲ殺シタ男デ間違イ無インダヨナ。】

 違う。

 この男は、先ほどまで同胞が死んだことに泣き叫んでいた男とは別人だ。

 直感的に黒服はそう思った。

 雰囲気が。

 気迫が。

 何もかもが違う。


「お前……、さっきの男じゃないな?」

 おそるおそる黒服は尋ねる。


【俺ノ質問ニハ答エテクレナイノカヨ。ソノ反応トカカラシテ多分オ前ガ殺シタノニ間違イハ無インダロウケドナ。俺ガ誰カト聞カレレバ、天音アマネ雷綱イズナトシカ言ヘナインダガ】


 随分とこの男の口調のような、音程のようなものが変わっている気がする。

というか、まるで言葉は知っていて使えるのに、喋りなれていないような。


「それは、先ほどまでの男だろう。今のお前は、先ほどの天音と呼ばれていた少年じゃないだろうが。二重人格ってやつなのか?」

【オ前勘ガ鋭イナ。確カニ、二重人格ッテ説明ガ一番分カリ易イナ】

「やはりか。じゃあお前はさしずめ『裏』ってところか」

【『裏』? ソンナ安イ言イ方ヲスルナヨ。ドチラガ『裏』デドチラガ『表』カナンテ分カラナイダロ。他人ニモ、本人ニモ。普段見セテイル顔ガ『表』、ソレト違フ面ガ『裏』ナンテ一概ニハ言イ切レナイヨナ? 酷イ話ダゼ。今ジャマルデ『裏』ガ悪イヨウニ言ワレテイルガ、大キナ間違イダヨナ。『裏』モ『表』モ両方トモ性格ガアリ人格ガアルノニヨ】

「……随分と語るんだな。こだわりでもあるのかよ」

【大有リダ! トハイエ、名前ガ無イト確カニ不便ダ。ダカラ、俺ノコトハ“サンダー”カ、“才能スキル”デ呼ンデクレ】

「どういう意味だ?」

 雷、才能?

【俺ハ此ノ天音アマネ雷綱イズナノ才能ダカラサ。才能ニ性格ガ付与サレタ、都市デハ俺一人、世界中デモ俺一人ダロウナ】

「……それが本当なら驚愕だな。そんな存在、今まで見たことが無い」

【有リ得ナイナンテ言ウナヨ、才能ナンテ有リ得ナイノ塊ダロウガ。サテ、最後ノ質問ダガ、オ前ノ名前ハ何テ言ウンダ?】

「語っておいて損はないか。“tomorrow”。さて、俺とやる気なのか?」

 そう挑発する黒服はまるで傷一つ無かった。

 服は切り刻まれているのに、その部分には染み一つ無い。


【ソレガアンタノ才能……? 色々トオカシイゼアンタ。持チ過ギダロ才能】

 “サンダー”も驚いている。

「どうだ? 俺に勝てると思うのか?“発電能力エレクトリックメイカー”ごときが。」

 その問いに“サンダー”は、

【ハハハハハハ!! 俺ノ才能ヲソンナアリフレタモノカト思ッテルノカヨ! オ前ニ今マデ使ッテイタノハ俺ガ貸シ出シテイタダケノ才能ッテノニヨ!!】

 爆笑して答えた。

「は? 何言ってんだ?」

 黒服が訳も分からず聞き返す。


 その瞬間、黒服の目の前が輝き、爆発音がなった。

 そして目の前に“雷”が現れた。


「……なっ!?」

【1000万、ボルテージ】

 黒服の額に天音の人差し指がこつんと当たったかと思うと、バリバリバリバリィ!! とその人差し指から電気が一気に放出された。

「か……、はっ……」

 行動を許さぬ速さだった。

 黒服が立ったままで硬直した。


【コンナモノデハマダ死ナナイダロ、オ前】

 硬直したままの黒服に“雷”が語りかける。


 黒服は硬直がだんだん治ってきた。

「あ、あぁぁ!!」

 黒服が手刀を振る。

 そして天音が切りかかられた。

【痛ッタク……、無イ!!】

 皮肉にも、天音の左の肩口から右の腰辺りという藤崎と同じように切られた。

 だが、血は出ていない。

 切り口からはバリバリと電気が出ている。

「か、はあぁぁ!!」

 そこでまたも黒服に電気が走った。


【俺ガ切リ傷ゴトキデダメージヲ喰ラフ訳ガ無イダロ! 俺ハ()ソノモノ(・ ・ ・ ・)ッテ言ウノニヨ!!】


「!?」

 意識を失いかけでも、黒服はその言葉には驚いた。


 雷そのもの、ということは。


 この世界に二人しかいないあの才能系と同じということか……?


 炎と氷。


 そこに雷が加わるということ……。


 変異系メタモルフォーゼだとでも言うのか……?




【見セテヤルヨ、自然ノ能力、天災ノ力ヲナ】

 そこまで言うと“雷”は一瞬で黒服の顔面を掴むと、そのままその後頭部を地面へと叩き付けた。

 そこから雷の如き加速を見せ、三階の床を突きぬき、二階の床を突きぬき、一階の地面へ落とした。

 その軌道は稲妻のように光を描いていた。

 そこまでの動作、わずか数秒。

 雷速の世界。

 首が取れてもおかしくないが、どうやらその辺りは調節しているらしい。

そういう部分では雷速の世界では無いのかも知れない。


どちらにしろ、人間が反応することは出来ないのだが。


【一億、ボルテージ!!】

 そして顔から手を離さずに、手から電気が溢れ出す様に放電される。

 バリバリ、と言うよりは一瞬で流された電流は空気を破裂させドォンと言う音を響かせた。


 黒服の身体からは煙が出ていた。


【流石ニ死ンダカ。サテ、折角出テ来レタ訳ダ。面白イ状況ニモナッテルッポイシ、楽シマセテモラフカ】

 そう言うと“(サンダー)”は身体を光らせると一瞬でその場から消え去ってしまった。

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