<3>~“都市”、いたるところで戦闘開始。~ (2)
「バッドエンド? 何言ってんだお前」
目の前にいきなり現れた黒服の男に対して、不信感を露わにする藤崎。
「そう。バッドエンドだ。まだ赤井に手を出すわけにはいかないが、その仲間達なら良いだろうからな」
「お前、赤井のことを知ってんのか?」
「そんなことか。奴は俺の復讐相手だ」
その黒服はそこだけ明らかな怒りを示していた。
何かあったのだろうか。
「じゃ、お前の才能が何かは知らないが、殺らせてもらうぜ?」
「恐ろしい奴だな……っておい!!」
藤崎が相手の黒服の物騒な発言に突っ込んでいる間に黒服はこっちに向かって走って来た。
右手を突き出してくる。
その右手はキラリと光った気がした。
「あぶねっ!」
藤崎はその鋭い突きを胸ポケットから取り出したある物で防いだ。
キンッと堅く金属同士が当たりあうような音がした。
「どうして俺の“鉄の鋭き刃”がそんなもので防がれちゃってるのかな?」
「あんたの才能にも驚きだよ。二重の才能なのか? ここまで来るのには“瞬間移動”っぽいのに、メタルコーティングってなんだよ」
疑問に疑問を返す。
「よし、落ち着け。俺は別に二重の才能って訳じゃあない。“鉄の鋭き刃”は俺の身体に鋭い刃をつける能力だ。じゃあ俺の質問だ。どうしてそんなもので防げる?」
その黒服が一旦下がり手を広げて落ち着くように言った。
そして鋭い突きを防いだそのある物を指差す。
そこにあったのは白い、
「こいつのことか? そりゃあ俺の才能の成せる技な訳だが」
白いそれをピラピラと振る。
それは紙だった。
「どういうことだ?」
いぶかしんだ顔をする。
「俺の才能は“値上昇”。物体に長所を付与する才能だ。今のはこの紙に堅さという長所を付与したわけだ」
藤崎はすごくいい顔でそう言った。
「紙の何が凄いってその薄さと軽さだ。しかし残念なことに硬度が無い。そこでこの才能で堅さを身に付けてやれば、日本刀も真っ青の鋭い刃の出来上がり。驚きの攻撃力と防御力を兼ね備えた武器となるわけだ。」
と、得意げに説明した。
「面白そうな才能だな。支配したくなる」
「何の話だ?」
「別に」
その黒服が何か呟いた気がした。
「……僕も、手伝うっ!!」
藤崎の後ろで天音が叫ぶ。
そこでバリバリという破裂音が聞こえてきた。
「藤崎、しゃがんで!!」
「おまっ、使う気かよ!!」
藤崎はその理由を知っているのか、ツッコミながらしゃがんだ。
「あぁ、なんだよ」
黒服は訳もわからず呆けていた。
「“指電”!!」
そう天音が叫ぶと、天音の指から電気が飛び出した。
それはまるで横に飛んでいる雷のようにピカッと光りドンッと音を出し、
「がっ!!」
黒服に直撃した。
「……どう、かな……」
「やりすぎのような気がしなくも無いけどな。まぁ、お前が手加減したんなら死んでるってことは無いだろ。とりあえず、こいつが気絶している間に」
「気絶している間に、なんだよ」
「「!?」」
二人が落ち着いて話していた間に、黒服が立ち上がり会話に入ってきた。
「ったく、“発電能力”かよ。面倒くさいな」
黒服はぽりぽりと頭を掻く。
「……驚いた。流石にここまで短時間で起きるなんて……」
「おいおい。有り得ないだろ……」
ドン引きだ。
「ほらほら、俺ってよく昔ジークフリートって呼ばれてたからさ。身体が丈夫でな」
「ぜってー嘘だろ。ってか丈夫とかで済む問題じゃないと思うんだが」
ちなみにジークフリートは北欧の伝説上の英雄で悪竜を倒した後返り血を浴びて不死身になった男。
「さて、なあなあになっちまったが仕切りなおしと行こう、か!!」
またも突進してきた。
藤崎は両手に紙を装備し、天音は体中に電気をバリバリと張り巡らせて構える。
「能力付与。“硬化”」「エレクトリシティ……」
ガキィィン!!
藤崎と黒服が激突する。
手刀対紙剃。
カンッ、カンッと金属音が続く。
天音は二人が肉薄しすぎていて電気を放てない状況だった。
そんなバランスが崩れたのはすぐのことだった。
「こいつは固くしただけで元はただの紙。つまりはこうすればいいんだろ!!」
黒服がそう叫ぶと、手のひらから急に炎が出てきて紙を焼いた。
「熱っつ!!」
思わず手をぶんぶんと振る藤崎。
そこに黒服の攻撃が!!
天音は思わず息を呑んだ。
先ほどの“鉄の鋭き刃”が発動している!!
そのままキラリと黒服の手が光ったかと思うと。
藤崎に振り下ろされた。