<2>~“都市”、大荒れに荒れる。~ (6)
9:25、廃ビル外。
赤井達が生徒会室に向かった11分前のこと。
窓から飛び降りた後、廻家と焔は一気に走り出した。
何故か。
「俺達も飛び降りるぜぇ!」
「ごご、ごめんなさい!」
「ふんっ!!」
白道、“DBY”、“風”も窓から飛び降りようとしていた。
白道は胸元のポケットから黒い布、マントのようなものを取り出して下に落とすと、それが途中でピキンと止まり、そこを足場として。
“DBY”は2階の窓から鉛色の金属(多分鉄)を斜面のように出して滑り降りて。
“風”は自らの膂力とテクニックで。
そうしてそれぞれ違う方法で降りてきた。
「やばいやばい。どうするよ!」
「まずは二手に分かれるぞ。やつらの戦力を分散させた方がいい」
「じゃあ合流場所はどこにする!?」
「ふむ。赤井君たちもいるだろうから、間之崎学園で」
「了解!!」
そこで廻家と焔は廃ビルの敷地から道へと出た。
廻家は右へ。焔は左へ。
「分かれたねぇ。どうするよぉ?」
「ふわっ。どうしましょう」
「なら、俺と“DBY”は廻家を。“today”は焔を追え」
三人が降り立った後、“風”がリーダーシップを発揮した。
「ちょっと待ってくれよぉ。俺が『円卓』の七星を相手に一人で戦えってかぁ?」
そこで異論を言ったのは白道。
「お前の才能は時間止めに向いているし、俺はお前をかなり信頼している。お前なら倒すことも出来るかも知れんしな」
「……、そこまで言われたらしゃあないなぁ」
そこまで言って、白道は焔の行った左へ。
“DBY”と“風”は廻家の行った右へ。
「おいおい焔さんよぉ。そりゃ無いんじゃないのぉ!」
白道が左に曲がった先では。
焔が足と手から炎を出してかなりの速度で飛んでいた。
まるでジェットがついたかのように。
「流石は発現系の才能、発炎能力を極めた男かよ……、“極めれり炎”。あまり才能は使いたくないんだが……、“白眼視”!!」
そう白道が言った瞬間、焔の動きが止まった。
一時停止を押したかのように。
「これで地道に追いついて見るかぁ」
「ちょ、あの人の動き方、変すぎませんか!!」
「これが情報に聞いていた廻家の才能か……」
“DBY”、“風”が右に向かった先では。
廻家が後ろ、つまり“DBY”、“風”と面で向かい合わせになりながら走っていた。
いや、走ってなどいない。
足が地面についたまま全く動かさずに、まるで横スクロールのように移動していた。
「あ、あの……」
「“巡る輪廻”、すべての物体に回転力を与える才能。大方靴の底にでもボールかなんか仕込んで回転させているんだろう」
「ハハハハハー!! 追い着けるかなー!」
廻家はかなり調子に乗っていた。
「ふむ。追い着こう」
その安い挑発に乗るかのように“風”の身体がグッと伸びた。
実際は伸びてはいない。が、その加速力と歩法によって伸びたように錯覚させられた。
「縮地かよ!」
「俺の場合はY-ダッシュだ」
「スーファミ版!?」
意外に“風”はボケてくれる人で。
B-ダッシュじゃないところが上手い。
とか考えてる場合じゃなく。
追い着かれ、先へと回りこまれてしまった。
前には“風”、後ろには“DBY”。逃げられない状況だ。
「戦闘開始って所かよ……」