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Skills Cross  作者: 敷儀式四季
第四章
60/130

<2>~“都市”、大荒れに荒れる。~ (5)

 9:45、間之崎学園二階廊下。


「別に姫ちゃんまで残らなくても良かったんだよ? 危ないし」

「アンタが馬鹿で危なっかしいから私も残ったんでしょうが」

 そこでは二人の男女が道を塞ぐように立っていた。

 生徒会長高原衣に風紀委員長姫岸鉄。

 間之崎をよく知るものなら必ず知っているビッグネームの二人だった。


「俺は姫ちゃんには生きていて欲しいから、みんなと一緒に逃げて欲しかったんだけどね?」

「私は衣が助かって欲しいからここにいるのよ」

「随分と嬉しいこと言ってくれるね。さて、こんなノロケ全開の状況に水を差さないでほしいね」

 最後の言葉はまるで何かを見ているかのように呟いた。

 その言葉が出て数秒後。

 駆け込むかのように3人の黒服が階段から二人のいる廊下へと出てきた。

 そして、無骨な機関銃を二人に構える。

「手をあげて投降しろ。無駄な抵抗はしないほうが良いぞ」

 3人の真ん中にいた男が二人に向けて話しかけてきた。


「姫ちゃん、ここはさっさと捕まった方が得策かもよ?」

 高原は手を挙げ、一歩前に出て振り返って姫岸にそう言った。

 その高原の目は、ウィンクをしていた。

「抵抗とかしなければ穏便に捕まえてくれるだけで済むんですよね?」

「無駄な殺生は避けるように言われている。心配はするな、この手錠を掛けてもらうだけだ」

 高原の問いに静かに答える黒服は、言いながら手錠をこっちに見せた。

 見た目は銀色をした普通の手錠だった。

 高原は一歩、また一歩と歩を進める。

 いつの間にか間合いはほとんど無くなっていた。

 姫岸も手をあげて高原に近づく。

「これが才能を封じる手錠ってやつですね」

「……、何故知っている?」

 黒服がいぶかしむような顔をする。

「そりゃあ、外の様子を見てたから」

「外?」

 先ほど捕まっていた間之崎の生徒を見ていたのだろうか。

 しかし、それだけでわかるものか?

 黒服はそう考えていた。


 それが、黒服の油断だったのかもしれない。


 ただの生徒と侮った。


僥倖ぎょうこうだ」

 高原はそう言うと、目の前で喋っていた黒服の後頭部を両手でがっちりと掴むと、ジャンプするように飛んで膝蹴りを顔面に喰らわせた。

 ガスッと。

 その黒服は後ろに仰け反る。


「手前!」「何しやがってんだ!!」

 両端の黒服がこっちに機関銃を向ける。

 瞬間、姫岸が高原と同じ場所まで間合いを詰め両方の機関銃の銃身を両拳で打ち上げた。

 高原に気を取られていた黒服はこのことに気づけず、銃の向きが一瞬上を向く。

 その間に高原は右の、姫岸は左の黒服の鳩尾に拳を叩き込んだ。

 思わぬ衝撃に機関銃を取りこぼした。


「どんな強者にも心の隙がある」

 黒服が取りこぼした機関銃を拾い、一つを自分で持ち、一つを姫岸に渡した。


「それが何かはわからないが」

 それを倒れこんでいる黒服へと向ける。

 その間にさっき黒服がちらつかせていた手錠を姫岸が3人に付けていく。

「それを突くのがこの才能、“観察者(オブサーバー)”だ」

「衣、語りすぎよ」

「ん、そうだね。悪かった」

 姫岸に注意された後、とりあえず手錠をつけた黒服を生徒会室に入れ、生徒会室の扉の前に開いた教室の机とかを持ってきてバリケードにした。

 これで生徒会室からは出られないはずだ。



 そうして生徒会長と風紀委員長は行動を開始した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 9:52、間之崎学園玄関。


「さてと」

 そう自分に言い聞かせるように。

 富士祈は自分の役割を果たしに、そして妹の復讐もかねて決戦場へ向かった。


 まずは玄関の黒服共を一蹴しないと。


 そう思い立ち、祈はばらばらに配置されている黒服の内の一人に目をつけると行動を開始した。


「な、何だお前!」

「す、すいません! 抵抗はしませんから殺さないでくださいっ!!」

 心底おびえたような声を出す。


「ああ。それくらい怯えてくれると悪の組織もやりがいがあるってもの……、おい弥彦、手錠持ってるだろ?」

「はい、これですね」

 そう弥彦と呼ばれた黒服が手錠を祈の目の前の黒服へと投げる。

 それを確認すると祈は手錠に向けて一気に走り出し、手錠を取った。

「!?」と黒服が驚くよりも早く祈はその手錠を目の前の黒服にかけ、弥彦と呼ばれた黒服へと駆け寄った。

 黒服へ両手を腹部へと突き出す不思議な攻撃で退かせると、その手に手錠を掛けた。

 その手錠は両手を突き出したときにかすめていたものだ。

 そして後ろにいた三人目の黒服に胸ポケットから取り出したボールペンを投げた。

 それは直線の軌道を描くと顔面に当たりひるませた。

 次に今度はその黒服へと両手を腹部へ突き出す不思議な攻撃をして、退かせる。

 そこで退いた黒服の手を引っ張り手錠を掛けさせた。


 ここまでで計三人の黒服を撃破した。

 そして玄関を大きな音で蹴破る。


「誰だ!?」

 一気に黒服の注目が集まった。


「通りすがりのただの理事長ですけど何か?」




 数分後。

 見事に自分達の用意してきた手錠に掛けられてしまった黒服がその辺に固まっていた。

「叶、ここにいたら増援がすぐに来るわ。急いでここを離れるわよ。動ける?」

「うん……。大丈夫……」

 大丈夫というものの、叶の声は弱弱しかった。

 とりあえずさっき黒服から奪った鍵を使って錠を外す。

 まだ生徒達は解放するわけには行かない。

 黒服も多く残っているこの状況で下手に動かれるのも困るからだ。

 そうして鍵を開けると、声がした。


「あーあー、ここまでやられちゃって。みんな意外と弱いんだな。それとも、あなたの才能ですか?」

 その男は黒い服を着ており。

 頭の上の方にふわふわと紅を浮かせ、腰の方に赤井を抱え込んでいた。


「……あなたが裏切り者、と言うわけですか」

 祈は静かに返す。


「いやいや、あなたには言われたくないな。もちろん妹さんにも。かなりの身体能力を持ち、かなりの才能(・ ・)を持ってるのに」

「うるさいわね。くどい男は嫌いよ?」

「そんなこと言わないでくださいよ理事長さん。あなたみたいな美人には言われたくない」

 その男はおどけたような仕草をする。


「この裏切り者が、!!」

「別に裏切ったわけじゃないですよ? 最初から私は“統一された幸福な世界”、この事態を起こしている悪の組織の幹部だったんですから。いや、この口調もなれないわな。この来てるとなんかしゃんとしてな」

 そう言って首下を緩める桜島先生。


「お姉ちゃん、気をつけて……。桜島先生の才能は本当に、異常……」

「私が負けるわけ無い。私の才能を知ってるでしょう?」

 得意げな顔をする。

「それでも桜島先生、いや、桜島の才能は強すぎる……。チートよあんな才能……」

 叶は最後まで心配していた。

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