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Skills Cross  作者: 敷儀式四季
第四章
58/130

<2>~“都市”、大荒れに荒れる。~ (3)

 さて。

 一階に下りた俺達はとりあえずこの学校から出ようとして、廊下を走った。

 祈先生は廊下は走らないなんて野暮なことを言わないタイプで助かった。


 そして少しして玄関へ。

 そこは数人の黒服が居て、厳重に見張られていた。

 よく見ると、玄関の扉の向こう(扉にはガラスがついているのです。)にはたくさんの間之崎の生徒がしゃがみこんで居た。

 さらによく見ると手首の辺りがキラキラと光っている。

 どうやら黒服に手錠を掛けられて拘束されているようだった。

「これは……」

「この黒服達も十分凄い奴等ってことね」

「みんなー、大丈夫なのかなー」

「生け捕りになっていますので大丈夫ではないでしょうか」

「これって、本当の事態じゃんね……」

「……、怖い……。」

「天音、心配すんなって!」

「天音君の気持ちもよく分かるわ……」

 俺達八人はやはりこういうものを直で見ると結構衝撃で。


 そんな中、

「ねぇあそこ、よく見て」

 祈先生が何かに気づいたようだ。


 祈先生が指差した先には、一人の女性が。

 というか。

「叶先生!!」

 藤崎が声を上げる。

 そこにいたのは叶先生だった。

 ただ、他の生徒とは違っていて、服はかなりボロボロで破けている部分からは血が出ているところもあり、木にもたれかかるように座り込んでいた。


「実の妹があんな風にされて、おめおめとこの場から立ち去るなんて出来なくなったわね」

 祈先生は、静かに闘志を燃やしていた。

「ここは先生に任せて、あなた達はここから逃げなさい」

「え、でもどうやって?」

 気圧されながらも紅が聞く。

 この気圧はまるで白道と相対したような感覚だった。

 歴戦の猛者のような。

「そうね。私が玄関で敵のほとんどを惹きつけるから、あなた達は裏門の方から出なさい。時間のタイミングを失敗しないで。私が突っ込んだらすぐ行くのよ。私もそこまで時間を稼げるかどうか分からないし」

「で、でも……」

「いいから。これしか方法が無いと言っても過言では無いわ」

 祈先生は少し焦っているように見えた。

 いや、早く戦いたいかのような。


「……、先生の言うことを信じましょう。我々にはその手しか無さそうです」

 相馬が苦しく声をだした。

 二度も人を見捨てるかのようなことをしてきていると辛いものがある。

「そうじゃん。俺達は何とかこの状況を打開しなければならないじゃん。捕まったみんなを解放して、よく分からない奴等を倒すっていうハッピーエンドのために」

 染山がみんなを奮い立たせた。

「私は自ら死ぬようなセリフは吐かないわ。私は、死なない」

 振り向かずに祈先生は玄関へ走っていった。


「何者だ!?」「敵襲か!?」「構えっ!」

 黒服達が後ろの方で騒いでいる。


「さて、俺達もさっさと行くじゃん」

 染山がそう言った。

「そうだな。先生の心意気を無駄にはし」

 藤崎が答えようとして、その言葉が途中でぶつりと切れた。

「藤崎?」

 俺が気になって後ろを振り返ると、藤崎と天音が揃って消えていた。


「おい皆、藤崎と天音が居ないぞ!!」

「何!?」

 ここで全員が立ち止まって後ろを見る。

 藤崎と天音は一番後ろに居た。

 何が起きたのだろうか。


「このパターンは……」

「パニック映画みたいー」

「こういうときは思って無くてもそう言うなじゃん、十島!!」

 染山が十島の発言に怒る。

 確かに士気を下げる今は言って欲しくないな。


「まったく、大変な事態になってまいり」

 そこでまた言葉が切れた。

 今度は相馬。


「まさか!?」

 確かに今みんなが相馬を見てなかったけど!

 どっきりでしたとかそういうオチで頼むぜ!!

 そう思いながら声が止まったほうを向くと、


 相馬が忽然と消えていた。

「みんな、篠崎も!!」

 篠崎も、ここから居なくなっていた。


 残りは染山、十島、紅、俺だ。

 こうなってしまえば、みんながみんなを見張るしかない。

 とにかく、何が起きているのか判断するのが先だ。

「いやぁぁぁ!!」

 紅が耐え切れずにしゃがみこんで叫ぶ。

 今そんな大きな声は出して欲しくないが、こんな状況では仕方ないと言わざるを得ないだろう。



「落ち着」「とにか」

 染山と十島は紅を気遣う言葉を掛けようとしてくれていたのだろうか。

 だが、そんな言葉が最後まで紡がれることは無く、染山と十島も。


 消えてしまった。


 みんながみんなを見張るように、と思った矢先にこれだ。

 これは……、本気でやばい。


 赤井がそう思っていると、俺の手が暖かくなった。

 見ると、紅が手を握っていた。

「よく分からないけど、私のことは守りなさいよ……」

 紅が小さな声で呟く。

 手は小刻みに震えていた。

 もしかしたら、ずっとそうだったのかもしれない。

 学校が謎の襲撃を受け。

 生徒会長と風紀委員長は俺達のために盾となり。

 先生ですらも俺達のためにおとりをかってでてくれて。

 こんな状況、普通は震えてもおかしくない。

 むしろ、平常心に近い、というより何かのイベントのように思っていた染山達の方が異常っちゃあ異常だ。

 あいつらの場合はあえて気を紛らわそうとしていたのかも知れないけれど。


 しかし、こんな風になった紅可愛いなー。


 先ほどまで異常だ異常だといっていた赤井も、十分異常だと言われても仕方の無い状況だった。


「みんな、どこに行ったって言うのよ……」

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