<1>~“都市”、いたるところで異常発生。~ (4)
“風”という男は確か“滅亡の右手”とか言う才能で、触れたものを何でも腐らせるそうだが普段は白い手袋で封印してるそうだな……。
そう思って廻家が“風”の右手を見るが、そんな手袋はついていなかった。
見えるのは茶褐色の手だった。
すると廻家の目線が気になったのか、
「もうあのときのような失敗は繰り返さない。最初から全力で行く」
と言った。
その言葉には激しい決意が込められていた。
なんで俺が紅嬢の兄貴のとばっちりを受けなきゃいけないんだろうか。
そう考えていると、何か白道のほうから声が聞こえた。
その次の瞬間、“風”の右手が顔の目の前に迫っていた。
「のわっ!!」
それをノーモーションで下がって離れる。
その動き方は足に無理やり引っ張られるような不可思議な下がり方だった。
が、そんなことは些細な事と、すぐに“風”はテレポートしたように間を一瞬で詰めてくる。
今度はやべぇ……。
流石に身の危険を感じたが、ここには廻家一人ではない。
もう一人いる。
「業火!!」
焔である。
焔の手から火の球、いやむしろその速さと大きさは火弾といっても過言で無いようなものが“風”に向かって一直線で飛んでいた。
これは起死回生どころかこの一発で決まる……。
そう思ったが、杞憂だった。
「ちっ……、俺の才能の本領がばれちまいますが背に腹は代えられないなぁ! “白眼視”!!」
その時、明らかな異常が起こった。
火弾が空中で、“風”の顔の横で、何の比喩も必要なく、
止まっていた。
「それがアンタの才能……、えーと“蛇女の目”だったっけか。その力か?」
「あぁ。もうばれちまったなら言っても良いかぁ。俺の才能は目で見たものを世界の理から外して止める事ができる」
「理……、なんじゃそりゃ」
「それ以上の説明はまた次の機会ってことで!!“白眼視”!」
来た……。
そう思ったときにはすでに顔の前に手が。
だが、今度はこう来ると簡単に想像できた。
「甘い!」
足を地面につかないまま腰が不自然に回転し、ストレートを放った。
それは“風”の腹にヒットし、後ろに仰け反る。
「白道の才能は視界に入らなければ止まらないってことを暗示してる」
「だからなんだってんだ!!」
廻家の下に少し離れていた焔がこっちに集まった。
焔は謎掛けのようなことを言っていた。
「お前との共同技だ」
焔は手を目の前に出した。
そして、
「“炎華”」
すると火がボウッと噴き出した。
「何やってんだ?」
「ほら、お前の才能だよ! 回すんだよ!」
「……、成程!! お前頭良いな!! 行っくぜー!」
廻家は焔が出した手に自分の手を合わせた。
「じゃ、二人の共同作業で!!」
「誤解を招く発言やめろ。とりあえず技名は、」
焔が出した炎がぐるぐると回転しだした。
「「“炎転華”!!」」
それはまるで壁のように、むしろ。
盾のように。
「やられた。これじゃあアイツが見えないなぁ」
「炎自体を止めるのは?」
「多分あれはずっと生まれ変わるように新しい炎が出てるタイプだ。止めても意味が無い。すぐ上書きされる」
「私が頑張ってないのがいけないんです……、ごめんなさい。もう準備は整いました」
「おぅ、出来たか。頼むぜ、“DBY”。俺はお前のあれだけはやられたくないんだから。敵にお見舞いしてやれ」
「同感だ。俺もこの右腕が無ければかなりきつい」
「では、ごめんなさい!! “有私鉄尖”!」
急に今までまったく戦闘に参加してこなかった妙におどおどした男が言った。
瞬間、シュリリリと何かが地面から、壁から、天井から飛び出してきた。
それは、糸のようにキラキラと光っているが、決して糸のように柔らかいものではない。
鉄線。
思わず俺達は手を引いてしまった。
それは失敗だったのだろう。
気がつくと全く動くことの出来ないような状態にさせられてしまったのだから。
「さて、後は動けない相手に俺が腐敗を与えてやるだけか」
ゆっくりと“風”がこっちに歩いてくる。
「おい、さっきの応用編だ」
「ん、どうするんだ?」
「とにかく、せーのでやるぞ」
「名前は?」
「「“回天炎呪”!」」
こんどは炎が周りに噴出した後、回転し始め朱い竜巻と化してまたも守るような壁になった。
ただ、今回は守るだけの壁では無かった。
「おぉぉらぁぁ!!!」
どんどん竜巻の描く炎が大きくなっていく。もちろん“有私鉄尖”など役に立つわけも無い。
「これ、やばくね?」
「逃げるぞ!」
「ごめんなさい!!」
白道達三人は撤退する。
パパパと廃ビルの窓ガラスが広がる炎で割れる。
「なぁ、二階なら飛び降りても大丈夫だよな」
「上昇気流は炎で作る。心配するな」
そしてバンッと解除して、二人は何のためらいも無く。
窓から飛び出した。




