<1>~“都市”、いたるところで異常発生。~ (3)
5月1日月曜日、9:04“都市”、とある豪邸。
「き、貴様! この二星の網代儀様に何してくれてんだ!!」
「開始4分でこれ。がっかりするほどの弱さね。権力と金と親の七光りってやつで『円卓』の立場についてる、いい例というわけなのかしら」
「アハハハ!! 弱っちいったりゃありゃしないわね!」
元々非常に大きく豪華絢爛な部屋だったのだろうが、今は暴風雨でも通った後のように色々なものが散乱していた。窓ガラスは叩き割られ、上についていたのであろうシャンデリアは下に落ちて粉々になっており、掛けていただろう絵画のような板は床に落ちてひびが入っていたり、ひどいものは割れていた。周りには人も多く倒れていた。
そんな中、一人の男は小さくなって倒れたテーブルに腰かけガタガタと震えていた。
その目の前には女と少女。
女性はよく黒服が着ているあのスーツだったが、ネクタイは赤く、スーツ自体もゆったりとした形となっていた。
少女は黒を基調としたフリフリのついた服。いわゆるゴスロリというやつだろう。
「もしかしたらあなたの才能は戦闘には向いていないのかもしれないんだけど、それでももっと戦えるわよ? 本当、一星と四星のところに行きたかったわ。でも、だからこそ私の配属はここなのかしら。この程度なら、別に“月”さんが来る必要もそんなに無かったですね」
「でも、あの“創造主”様だから、念には念をってやつじゃないのかな?」
「ただでさえ人員が少ないのに念には念なんて込めるから一人当たり三人くらいの要人を倒さなきゃいけなくなるんでしょうね……」
はぁ……、と面倒くさそうに溜息をつく。
これから先の敵もこんな感じだったら……、そう思うと退屈であくびが出る。
「お、お前ら、一体何なんだ!! この俺に手出したら、何が起こるかわかってんのか!?」
あーあ、まだこの男気ぃ失ってなかったわけね。
「何が起こるの?」
男の必死の抵抗は、ゴスロリ少女の見事な返しによって粉砕される。
「しょ、正気か貴様ら!! 後でどんな風に消されても知らないぞ!!」
「私が倒してきた人たち、しかもお偉いさん方に限って大抵やられる前にそんなこと言ってたわね」
すごくつまらなそうに呟く。
返すのも面倒だったから小説から引用させてもらったわ。
と、言いたげなように。
「な、何なんだお前ら……。何なんだよぉ!!」
恐怖で歯はガタガタとなり、目は見開いていた。
「私たちはー!」
「なんで合わせないといけないのか凄く疑問だけれど、“統一された幸福な世界”よ。後々名前はとても有名になるわ。私は“DAT”。彼女は――――――――」
「“花鳥風月”、“月”のムーンだよっ!!」
「さて、名乗りも終了したわね。何か言い残すことは?」
「ほ、欲しいのは金か!? 権力か!? 名誉か!?」
「典型的なフラグね。じゃ」
“DAT”は冷たく言い放つとノーモーションで男の頭を拳で打ち砕いた。
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5月1日月曜日、9:15 廃ビル内。
そこでは、廻家は快適な睡眠を楽しんでおり、焔は軽い筋トレをしていた。
「誰だ」
焔が何者かの影に気がついた。
「お気づきか。非常に残念だな」
「わ、私のせいでばれたんでしょうか……、ごめんなさい……」
「別に“DBY”のせいじゃないでしょうよぉ」
三人の男が影から現れた。
「……起きろ。廻家」
「……うぇゎ? 起こすの早すぎない……」
「さっさと起きんかぁ!!」
「ちょっ、起きる起きる!!」
焔が喝を入れると廻家が飛び上がった。
「ところで、初顔が勢ぞろいなんだが、どういうことだ?」
「そりゃあ初顔だろうよぉ。俺達とアンタ達は始めてあったんだからなぁ」
真ん中の男が前に出てくる。
「誰だ、お前達は」
「ん、俺達に名前を聞くかぁ。俺達は“統一された幸福な世界”だ。名前くらい知ってるだろうがよぉ。俺は“today”の白道だ」
白道。
赤井達によく絡んできた男の名前だ。
確か才能は……、“蛇女の目”だったか。
随分と語る男で三下みたいだな、そう思えるような奴だった。
「あの、私は、“DBY”なんです。ごめんなさい!!」
「どうしてお前は敵に謝っているんだ……。俺は“風”だ」
残りの二人は……。
とにかく特徴的な二人だな、と思えるほど正反対に近かった。
三人ともバラバラに近い。
こんな奴らを纏め上げている“創造”は、やっぱり天才だな。
しかしこうしてみると、“統一された幸福な世界”の服装も人によって違うもんなんだなと思う。
白道は全部がだらしない感じに見える。
“DBY”はなんだか大きめに見える。
“風”はきっちり着こなしているように見える。ただ“風”については右腕の袖の部分だけが無かった。
「さて、お前達は一星の焔と四星の廻家、で間違いないか?」
「あぁ、間違いないな」
「ふぁぁあ。眠みぃ。何なんだよ一体……」
二人とも答える。
「わかった。お前ら行くぞ」
「しょげた声出さずに行きましょうやぁ。あんな化物じみた男はもういないってぇ」
「ごめんなさい。命令ですので、殺られていただけますか…?」
三人はそう戦闘開始の合図を言い放った。




